取り急ぎ、本年もよろしくお願いします。

 もう三連休も最終日ですが、2016年明けましておめでとうございます。
 本日は日本時間で1月11日午後6時30分。実はついさっきある報道がありました。それはとても悲しいニュースです。当然このブログでもなんらか書くべきものなんですが、新年最初の更新でそれを書くのはふさわしくないし、しかもニュースを聞いてからすぐに書くのはいかにも軽薄ではないかと思えて、それでマヌケなタイミングですが、ご挨拶文を書いております。悲しいニュースについては、近日中にきちんと書きたいと思います。
 これをお読みのみなさまに、本年が素晴らしい年でありますように。僕も(おみくじは「凶」でしたがw)がんばります。本年もよろしくお願いたします。
  

みなさまよいお年を!

 平成27年もいよいよ大晦日。もうこの歳になるとですね、年々1年が短くなって、つい先日した「あけましておめでとうございます」をもうするのかよ、という感じ、生きる相対性理論(笑)。
 今日はこれから、妻実家に帰省いたします。帰宅する1月2日まで僕は家事もせず、炊事もせず、文字どおり寝正月。惰眠と美食に明け暮れます。図々しい娘婿(笑)。
 今年はあまりブログを更新できませんでした。SNS関係にはわりとアップしていたので、完全な怠慢ですねすみません。今年は公生活は(人事異動があったのに)比較的穏やかでした。私生活もまあまあ順調、夏は(僕には珍しく)政治的な(?)時間も過ごしましたが、概ね平穏でした。音楽も聴き、楽器も弾きましたが、今年は本を手に取り、勉強し直すことが多い1年でもありました。こう見えても大卒で、学部も社会学系なんすよ。何十年も怠けていたので頭完全に錆び付いていましたが、アイドリングしながら士業の友人に教えてもらったりして、少しずつ考察し、読み進めています。娘のドレミも塾に行くようになったのですが、その問題集や教科書を見せてもらい、「へえ、こんな勉強するんだね」と言いつつ、妻と2人でこっそり「勉強」しています(笑)。毎日ワイワイ大騒ぎしながら、机に向かう「喜び」を感じることができたのは、とても幸せなことかもしれません。
 今年も素晴らしい音楽は世に生まれてきました。思うところ多い日々でもありましたが、「喜び」に溢れた日々でもありました。数年前僕は「今という時代は『真の楽観性』が試されている」と書きましたが、今も同じ気持ちです。世情も生活も、本当の救済は「悲観を経た、真の楽観」にこそあるんでしょう。少なくとも僕はそう思っています。今年も1年ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。来年はもうちょっと頻繁に更新します。みなさまどうぞ、よいお年を!

 追記:ちょっとだけ今年の買い物自慢(笑)。11月に都内の某店で購入したザ・フー関連のシングル2枚。右はフランス盤の「Tommy」サントラ。A面は「See Me Feel Me」ですがB面は「Overture From Tommy」。これは2000年に出たリマスターCDにボーナストラックとして収録されるまで完全未発表だと思っていたんですが、映画公開当時にもう出ていたんですね。
 僕の推理ですが、当時は「Overture」を映画に使用するつもりでいたのに、何らかの理由で曲が差し替えになったのではなかったのかなと思っています。証拠というほど強いものではないんですが、「Overture」の演奏時間は約5分、映画で「Prologue1945」が流れる冒頭部分も約5分です。「Overture」はザ・フーによって演奏されたものであるのに対して「Prologue1945」はピート(と、一部ジョン・エントウィッスル)のみによって演奏されているというところで、曲の差し替えをするとき、すでに映像の編集は終わっていたので、大急ぎで(映像の時間と場面優先で)ピートがスタジオでまとめたのではないかなあと、思っています。本当にギリギリまで「Overture」が使われる予定で、だからこうして一部のシングル盤には収録されていた、と。ちなみに「Overture」はオリジナル盤「Tommy」に冒頭の同曲とは違う内容の曲。でもカッコイイ曲ですよ。
 左側はジョン・エントウィッスル「Try Me」ピクチャーシングル。ベースの下にジョンのサインが入っています。僕はこのサインは印刷だと思って、値段が手頃だったこともあって特にこだわりもなく購入したんですが、よくよく見ると音溝にかかる部分の文字が少し滲んているのです。「?」と思って帰宅後画像検索したところ、ヒットした映像のサインがみんな微妙に違っていました。海外の通販サイトなどではっきりと「Autographed」と銘打っているものもありました。もし違っているとちょっと悲しいので、考察はここまでにして勝手に「ジョンのサイン入りシングル!」としています。新譜中心の購入であまり貴重盤や廃盤関連には手を出さなかったこの1年ですが、これは嬉しい「買い物」でした。

shirop的2015年ベスト10(洋楽編)

 今年もやります。私的「2015年ベストアルバム」。今年も昨年同様、むしろ昨年以上にいい作品が目白押しでした。惜しくもランク外になった作品、購入が間に合わずまだ聴けていない(でも世評は高い)作品もたくさんありました。そのなかで、あくまで僕個人の視点ということですが、ベスト10を選んでみたいと思います。カウントダウン形式で、ではまず…。
 第10位:リンゴ・スターPostcard From Paradise」。やりました、我らがリンゴ・スター。ここ数年の名作ラッシュのなかでも頭一つ抜けたキャッチーさ。ほのぼのとした持ち味はそのまま、ソリッドな印象さえ与える演奏と歌声は、彼が今も現役ロッカーであることを物語っています。前作までは「マンネリかな」と思っていた「リヴァプールもの」ももうすっかり定着して、これはきっと後世の研究家にとって恰好の「史料」になるでしょうね。今年はボブ・ディランほかベテランの活躍がありました。それを代表してランク入りです。
 第9位イベイー「Ibeyi」。キューバの2人姉妹のデビュー・アルバム。なんともいえない厳かさと、単にエスニックとは片付けられない不思議なビート感に乗って流れていく、型にはまらない和声と歌唱が独特の音楽。まだ完成してないというか、どこか危ういもろさのようなものも感じますが、それも含めて初々しい美しさに満ちています。来年早々来日もしてくれるというイベイー、これから見守っていきたい才能です。今年もたくさん出てきた新人を代表して第9位を。
 第8位マムフォード・アンド・サンズ「Wilder Mind」。長く音楽を聴いていると時に体験できる、アーチストが「化ける」瞬間。マムフォード・アンド・サンズにとってこのアルバムはまさにそれです。トレードマークだったマンドリンバンジョーなどをいったん封印し、より「一般的なバンド」然とした音楽を奏でています。楽曲もそれに合わせるようにキャッチーなものになりました。従来のファンには賛否あると思うし、「Babel」でファンになった僕も一抹の戸惑いはありますが、これは大衆音楽としては正しい進路でしょう。テイラー・スウィフトが「カントリー畑の可愛いイモ姉ちゃんアイドル」から「1989」の歌姫になったように、不変の根っこを堅持しつつの前進。ジャケットが物語るように、確固たる「自己」を持ちながら、アーバンな風景を見据える度胸と覚悟。断固支持します。
 第7位ヴィンテージ・トラブル「1 Hopeful Rd」。インパクト最大級のデビュー・アルバムに比べると若干落ち着いたのかな?と思うところもありますが、それはあの破格のアルバムと比べるとなのであって、単体で聴けば十分賞賛に値する名アルバム。ファーストよりソウルフル、そしてぐっとクラシックなR&B寄りです。2014年のサマソニ、炎天下のマリンでスーツの色が変わるほど汗びっしょりになってのパフォーマンスを体験した者にとっては、力いっぱい抱きしめて愛でていたいアルバムです。
 第6位フォール・アウト・ボーイ「American Beauty/American Psycho」。グッとシリアスさと現代的なテイストを増してきた前作から約2年。彼らもまたアメリカの現状を題材に音楽を紡いできました。スザンヌ・ヴェガのラインを使いながらの曲や映画「ベイマックス」で使用された曲などはありますし、ノリのいい曲も多いですが、全体のムードは重いもの。単に陰鬱なものになっていないのは彼らの真剣さの故でしょう。ジャケットのインパクトは(後述する)ケンドリック・ラマーと双璧のアルバムです。
 第5位イノセンス・ミッション「Hello, I Feel The Same」ずっと変わらず、穏やかで暖かな世界を作ってきた彼らのニュー・アルバム。ジャケットも含めて、今までの彼らと大きく違うところはありません。でもそれがユニークで貴重なのです。実はこのアルバム、僕は現在アナログはおろかCDも手元にありません。実は本国の公式サイトで限定盤のアナログを注文したんですが、本国での発売が大晦日なんだそうで、到着までしばらくかかりそうなのです。ではなぜ内容を知っていてこうして書けているのか。それは公式サイトでのアルバム購入者に特典として「配信音源ダウンロード」のサービスがあったからなのです。嬉しいことにフォーマットが複数用意されていて、ユーザーも複数のフォーマットをダウンロードできるようになっているので、iPod用にmp3、自宅のユニバーサルプレーヤー用にFLACファイルをDLしました。どんなフォーマットで聴いても、この心地よい音楽世界は不変です。寡作な彼らのアルバムを年間ベストに入れられる幸運に感謝しつつ、第5位を進呈します。
 第4位 ブラー「A Magic Whip」。もう手にすることはないだろうと思っていた「ブラーのニュー・アルバム」を2015年に手にできる幸福。本当に嬉しいです。昨年1月の武道館公演はファンとバンドの熱い「思いの交換」という趣きでした。このアルバムは一転、かつてのような聴いた瞬間がっちり気持ちをつかむようなポップチューンはありませんが、それが聴きこむにつれて良さがわかってきます。年齢を重ねたプリットポップ。こういう成熟もまた、ポピュラーミュージックのひとつの真実です。スタイルではなく、精神においてのモッズ、僕は心から愛します。
 第3位 ミューズ「Drones」。今年はシリアスなコンセプトを持ったアルバムが多くリリースされました。9.11以後の世界というよりも、さらにその先の混迷混乱に材を採ったもの。ミューズのこのアルバムもそのひとつですが、ロック系の作品としては珍しく直球的な描き方です。ジャケットも歌詞も、ほのめかしなし、深読みや解釈の余地なしです。特筆すべきは、そんな率直な「社会的な視点」を持ちながら、エンタテインメント性も持ち合わせているところ。今年出たロック系のアルバムでは最高といっていい、「聴いていて楽しめる」アルバムでもあります。いや本当に、聴いていると盛り上がります。これこそロック、鉄拳のパラパラBGMだけじゃないよ、堂々ベスト3入りです。
 第2位 ケンドリック・ラマー「To Pimp A Butterfly」。ファーガソン事件以来の、いや、21世紀になっても終わらない差別と格差に蝕まれた世界、そこから生まれた傑作。僕のようなヒップホップ系の音楽にも疎い人間にさえ伝わる真剣さ。そして(ミューズと同様)徹底した大衆性。高い社会性と切り込むような眼差しを持ちながら、聴いていて最高に楽しい!様々な言葉でアメリカ社会に物申しながら、素晴らしいポップさも持っています。これはディアンジェロの「Black Messiah」にも共通する美点かな?ジャケット・デザインのインパクトも最高得点。グラミー11部門ノミネートという大作。本当に最後までトップにしようか迷う、第2位でした。
 第1位 ベル・アンド・セバスチャン「Girls In Peacetime Want To Dance」。素晴らしいケンドリック・ラマーをかわして第1位になったのは、個人的な思い入れの差でベルセバでした。ダンスミュージック方面にシフトしたという事前情報があり、ジャケットの見た目も含めて聴くまでちょっと不安だったんですが、聴いてみたらまさしくベルセバでした。新らしい要素があり、新しい視点があり、でも根幹は不変。このバンドは駄作凡作がない、若干小ぶりだけれど素敵なバンドだと思っていました。それがここまでキャリアを積んで、このレベルの作品。今年2月に新木場で観たライヴも、新旧の作品を取り混ぜ、変に気張ることのない、いいステージでした。このバンドは秋にライヴ・アルバムも出ましたが、地元グラスゴーで、1万人ものオーディエンスを前にしてのパフォーマンスをやっており、そこでもこのバンド特有の「手作り感」が健在だったのが嬉しかったです。こういうバンドにも、自分たちの活動を続けていってほしいな。この1年このアルバムに幸せにしてもらいました。感謝をこめて第1位です。
 惜しくも選から漏れたものにはトッド・ラングレン、ウルフ・アリス、ディアンジェロ、パブリック・イメージ・リミテッド、SOAK、テーム・インパラなどがありました。作品の質ということではなく、10枚選ぶという行為のなかで漏れただけなので、どれもいい作品であることは間違いありません。興味があったのに未聴になったものはビョーク、アデル、ノエル・ギャラガーキース・リチャーズ、ナッシング・バット・シーヴスなど。オジサンがお小遣いでチマチマ買っているので、追いつかないのよ、今年の後半はポールとビートルズで散財しちゃったし(涙)。それから、入手して聴いたけれどランク入りしていないものにコールドプレイの「A Head Full Of Dreams」があります。もちろん大好きになりましたが、いかんせん聴きこむ時間がない。どの順位に入れていいのか判断できない、というわけで、ランクから外しました。残念!
 昨年も同じことを書きましたが、業界全体の経済状況に関してはあまり明るい話題はありませんし、コンテンツ産業がこの先どうなるのかも不明な部分が多いようです。ただ、それはそれとして、様々なフィールドから力のこもった作品が出てきました。有望な新人、変化を遂げた中堅、キャリアに相応しい作品をものするベテランが今年も世界を彩りました。こういう音楽が生まれて来る限り、業界はどうあれ、音楽家とそのファンにとって未来は明るいでしょう。来年はどうなるかな?本当に楽しみです。

レコードの日に相応しい名著

 ポールのデラックス・エディションを書かなきゃ書かなきゃって思っている間に早や三週間。ここまで遅くなってしまったら、もうすぐ出るビートルズのアレと同時にやろう、ということで今日は雑文を。
 今日11月3日は「レコードの日」だそうです。
 制定の趣旨からすると、音楽の再生媒体は全部含まれそうですので、デジタルも配信も記念することになりそうなんですけれど、音楽ファンが「レコード」といえばやっぱりアナログディスクですね。現役アーチストがニュー・アルバムをアナログでもリリースすることも日常的になってきてずいぶん経ちます。いつもいつも書いているとおり、僕はアナログについて必ずしも「最高音質」とは思わないんですが、年齢的にもアナログは身近なものでしたし、現在もちょこちょこ買っています。真面目な話、気になる新譜があると「アナログないかしら」って探してしまいます。そしてけっこうな確率で、あるんですよ。今年もそろそろ「個人的年間ベスト」を選ぼうかという時期ですが、候補作のほとんどをアナログでも入手しています。趣味の品ってそういうものですよね。科学的な態度ではないのかも知れませんが、楽しいです。
 写真のブツ、書籍のほうは「12インチのギャラリー LP時代を装ったレコード・ジャケットたち」というムック。美術出版社発行のものです。タイトルどおり、アナログ盤のジャケットを採り上げたものです。類書はたくさんあるジャンルですが、この本はかなり趣が違います。一言でいうなら「知性のレベルが違う」ということ。著者は美術評論家沼辺信一氏。ポピュラー音楽ライターのような畑ではないので、よくある「見栄えのいいジャケットを並べてウンチクを述べる」というようなものではありません。
 LPの草創期から始まり、カッサンドル、コクトー、リチャード・アヴェドン等の写真家、様々な意匠とその変遷…。アナログジャケットを芸術として捉える視座は一般的なものですが、本書の採り上げ方はとても綿密かつ体系的なものです。前述したとおり非常に知的な切り口でジャケットを見つめていますので、並べ方は独特。ドビュッシーを題材にした章ではジャポニズムへの言及で(誰でも思いつく北斎の浮世絵は別項にまとめて)矢野顕子の「長月 神無月」や渡辺香津美の「Mermaid Boulverd」などが掲載されています。ロック系の類書では採り上げられることは少ないだろうシカゴの数枚のアルバムは「タイポグラフィ」というカテゴリーで、米コロンビアの「ヒンデミット作品集」プレスティッジのセロニアス・モンクなどと並んで紹介されています。
 また本書143ページには3枚のポピュラーLPが並んでいますが、それはローリング・ストーンズ「Sticky Fingers」、モンティ・パイソン「Another Monty Python Record」、XTCの「Go 2」です。なにによってこの3枚がまとまられているのか、おわかりになりますか。デザイナー?発売時期?音楽の内容?これは「脱構築」という視座によってです。ファスナーをつけただけで「異様なまでの存在感が具わってしま」ったもの、「いかにも月並みなクラシックのジャケット(中略)を『贋作』してから、そこに乱暴な☓印をつけて抹消したうえでアルバムタイトルを手書きで書き込んでいる」もの、「ジャケット・デザインという『ビジネス』における『本音』(つまり、売るためにデザインしているのだということ)を延々と文章に綴っている」もの(カギカッコ内は本書の引用です)。オールカラーでおびただしい数のアナログジャケットを紹介した本書は、全編このように、知的でありセンスにあふれながら、とても楽しく読み、観ることができるものになっています。著者の沼辺氏について、僕は不勉強でほとんどなにも知らなかったんですが、相当な人なんでしょうね。
 本書の刊行は1992年。もう世の中はすっかりCD時代に入ってからの発表で、あとがきにも「このCD全盛の現代にLPレコードを話題にするのは、ちょっと気がひけないでもない。それはどこか後ろめたい、時代錯誤的な振舞だろう。」と書かれています。本書がユニークであるのは、実は著者である沼辺氏のこの明晰な意識ゆえだと考えます。長々引用は避けますが、著者は上の引用のあと、LP時代は事実上終焉したのだと明言され、「デザイン媒体としてのLPとCDの優劣を問うことには、何の意味もない」と書かれています。その一方で、「LPジャケットは、もはや過去の世界に属する『文化遺産』である。しかしながら、この『12インチのギャラリー』は紛れもなく90年代に位置し、そこからCDとその未来に向けて開かれている」とも書かれています。
 そのクールな視点、そして音楽とそれを運ぶ媒体に対する分け隔てない愛情と愛着が、たくさんある「アナログジャケット最高!」という凡庸な類書と一線を画する名著にしているのだと思います。この本には対立構図も嘆き節もありません。アナログが特集されたものではありますが、音楽を愛する人なら誰に向かっても開かれている本でしょう。今は古書でしか入手できないのが幾重にも残念、アナログが市場で見直されている今、こういう本こそいろいろな人に、手にとってもらいたい、本当の名著だと思います。

 追記:一緒に写っているアナログはケンドリック・ラマーの「To Pimp A Butterfly」。CD入手以来ずっとアナログを探していたんですが、実は最近やっと出たようです。ご覧のとおり印象深いジャケット。今年の「ジャケット・インパクト大賞」最有力候補ですね。ちなみに音楽も素晴らしい。ジャケットから想像するよりもずっと耳に心地よい、ポップな音楽です(歌詞はウルトラシリアスですが)。

おお、ジーザス!

 つい昨日、発見し、速攻で入手したもの。
 映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」ブルーレイ(日本版)。
 アンドリュー・ロイド=ウェバー(とティム・ライス)の出世作であると同時に、いわゆる「ロックオペラ」(音楽意匠をロック・ミュージックで構築するミュージカル)の嚆矢でもある名作の映画化版。ノーマン・ジェイソン監督の1973年作品。 クライマックスでイスカリオテのユダが歌う(事実上の)主題歌「Superstar」のサビは、いろいろなテレビ番組のBGMに使われているので、知らずに聴いている人も多いでしょう、そういう作品。そのブルーレイ。
 大変有名で人気も高いこの作品ですが、なぜか今までほとんど映像ソフト化されていませんでした。本格普及前のVHS、LD以外は発売例がなく(しかも短期間で廃盤)、これまでずっとブルーレイはおろかDVDにさえなっていませんでした。リメイク版はあるのに、オリジナル映画版は永らく入手も視聴も困難という状態でした。権利関係がクリア出来ていないのかどうなのか、とにかくずっと発売されていませんでした。
 それが、なんとなく昨日、暇な時間帯にネットを検索していたら、見つかったのです! なんと昨年すでにソフト化されていたらしいのです。
 価格も安かったので(1,500円くらい)すぐ買っちゃいましたよ。で、観てみたら映像はクリアだし音もいいし、大満足。 ずっと諦めていたものが、こんなにあっけなく手に入り、しかもこんなに高画質高音質で、嬉しくてたまらないです。実は昨日入手して、まだ断片的にしか観られていないので、近いうちに時間を作ってじっくり観てみます。
 ところで、なぜ僕がこの映画にそんなに入れ込んでいるかというと、思い出もコミだから。
 今から36年前の夏、高1の夏休み(記憶が確かなら夏休み初日)。 僕はその日、名画座でこの映画を観て、その夜日生劇場劇団四季の「ジーザス・クライスト・スーパースター」を観たのです。 地元で遊ぶしかなかった中学時代が終わり、いきなり大きな扉が開けられたように様々なものに触れられるようになった高校時代、その最初のインパクトがこれでした。 なんにも知らない15歳の高1男子にとって、それはそれは刺激的でした。そして、それまでほとんど誰とも共有できなかった趣味や興味を、一緒に楽しんでくれる友人や恩師たちとの出会いも大きな出来事でした。
 実際、ミュージカル「ジーザス」は複数の友人たちと観に行ったんだけれど、そのなかには高校のサークルの顧問の先生や先輩方もいました。 そんな意味で、僕にとっては忘れられない思い出の映画、また観ることができて、本当に嬉しいです。
 写真に写っている2つのアナログ盤は左の緑色が「映画化前のオリジナルレコード」(劇場ミュージカルと映画はこのレコードにヒットをきっかけに作られたもの。ちなみにこのレコードでイエス・キリスト役をやっているのはあのイアン・ギラン)、右の黄土色が「劇団四季が1976年に録音した日本語版」(訳詞は岩谷時子さん、イエスの役は鹿賀丈史がやっています。ヘロデ王の役をあの市村正親が演じている。僕が観た舞台でも同じ役をやっていて、たった1曲のアリアなのにものすごい印象的な歌とダンス、今でも忘れられない。さすが後の大スターです)。 サントラのLPと(映画館で買った)プログラムも持っているけれど、今日は見つかりませんでした(笑)。ちなみに全部CDでも持っています。

 最後に余談。 この日名画座では「ジーザス」以外にもう1本併映作品があった。 それがかの「TOMMY」。作品名以外まったくなにも知らず、しかも「ジーザス」目当てに行ったのでまるで興味なしだった…のに、これにもまたとんでもないショックを受けてしまいました。 「TOMMY」の音楽を作ったのはザ・フー。 今日まで続く僕の「ザ・フーのファン」としての日々は、この日から始まったのです。 考えてみたら、この日はまさに僕にとってセカンドインパクトだったんですね(笑)。

ザ・コレクターズのライヴに行って参りました!

 昨日(9月21日)、ザ・コレクターズのライヴを観てまいりました。会場はF.A.D.横浜。この日がツアー初日、ニューアルバムも出たばかり、僕自身彼らのライヴを観るのは初めてでしたので、個人的にも期待しつつの参戦でした。
 ライヴは2時間。オープニングは「レッツゴー!」のかけ声も眩しい「TOUGH」でスタート。セットリストは新作「言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと」の曲を中心に(ファン歴の浅い僕でも知っている)代表曲がバランスよく配置されたという感じ。代表曲はかけ声、手拍子や振付(?)もみんな一緒に盛り上がっていました。
 演奏は完全4ピースで、当然ですがとても上手。ファッションも含めてモッズテイストは満載でしたし、洋楽イディオムが横溢するその音楽性も含めて、僕には馴染みやすいものでしたが、一方で独特の歌詞の世界がCD等で聴くよりも生々しく、毎度のことですが「ライヴのマジック」を肌で感じることができました。
 上に「ファン歴が浅い」と書きましたが、バンドの名前は20年以上前から知っていましたし、ザ・フー関連の書籍などで加藤ひさし氏の文章なども読んでいましたので、決して遠い存在ではありませんでした。それがつい数年前まで真面目に聴いていなかったのは、なんとなく(ジャケットや、彼らを取り巻く雰囲気が)「スカしたモッズ・バンド」のように感じられて勝手に「僕には縁がないな」と思い込んでいたからです。ふとしたきっかけで真剣に聴く機会を得て、今ではライヴに行こうと思い立つほど好きになったんですが、昨日のライヴは、その音量、演奏、ステージでの佇まいも含めて、心から「好きだ!」と言えるものでした。
 なによりも、加藤ひさし氏の声!CDで聴いているときもいいなあすごいなあと思っていたその声は、ライヴではその何倍も、というか別次元の魅力で、あの「捻くれた前向きさ」とも言えるような歌詞の世界を、これ以上ないようなレベルで「リアルタイムで生み出して」いました。ものすごく説得力がある声、そして言葉。なんでもっと早くちゃんと聴かなかったんだろうと後悔するほどでした。
 ライヴ終盤は「たよれる男」「NICK! NICK! NICK!」(感涙!)そして新譜の事実上タイトルナンバー「Tシャツレボリューション」。世情騒然たる昨今ですが、その大きな一区切りのこの時期に、この曲を聴けたことを神に感謝したいです。アンコールは「恋はヒートウエーヴ」そして「僕はコレクター」。画竜点睛とはまさにこのこと。こういうカッコよさ、こういうメッセージが今こそ必要とされているのではないかと、思わず大上段な書き方になってしまいましたが、そんな書き方も、きっと昨日会場にいたファンのみなさんなら肯いてくれるのではないかな。僕は本当に感動しました。
 昨日はツアー初日、僕は初体験なので気づきませんでしたが、新曲の演奏はこれからこなれていくのでしょう(MCで加藤ひさし氏もそんなことを話されていました)。実は僕は、11月の東京公演のチケットも予約済みです。これから2ヶ月、全国を回ってのツアーで、新曲がどれだけ練られていくのか、それを目撃することが今から楽しみでしょうがありません。

 追記:昨日の会場を埋め尽くしたファンのみなさん、全員すごくオシャレでした。バンドのTシャツを着ている人も多かったですが、そうでない人もみんなセンスがよかった。服装のどこかにユニオンジャックをあしらっている人がとても多かったです。なんとなくそうなるなんじゃないかなと予想して、僕もユニオンジャック柄のスニーカーを履いていったんですが、元がただの「さえないオヤジ」だったので、違和感のみが際立ってしまいました(笑)。
 追記2:新曲(そして名曲)「Tシャツレボリューション」に触発されて、Tシャツ買いました。カッコイイ、可愛らしいデザインのものがたくさんありましたが、僕は大好きな「NICK! NICK! NICK!」のものを。まさにこの曲、そして「Tシャツレボリューション」こそ、今聴かれるべき、歌われるべき曲だと思います。