とにかく明るい青春映画「ちはやふる 上の句」

 関東の桜は盛りを迎えましたね。僕は先週の土曜日に所用で東京に出掛けた折り、千鳥ヶ淵靖國神社の桜を観に寄ったんですが、どちらも見事で、人出も最高でした。今週は天気の悪い日もありましたが、花散らしの雨ニモマケズ、この週末もあちこちで美しい姿を見せてくれています。
 先日映画を観てきました。「ちはやふる 上の句」。小5の娘がですね、観たがるものでね(笑)。コミックは15巻まで読んでいて内容は知っているので、僕の興味は「原作との違いはどの程度だろう」というものでした。娘が観たがるくらいですから、映画館は小学校高学年から中高生あたりの女子でほぼ満員。「サウルの息子」とは大違いの雰囲気(笑)のなか、鑑賞開始です。

 
 
 ※ここからは若干ネタバレを含みつつ感想を述べます。未見の方、乞ご容赦。

 映画は主人公達の高校入学からスタートします。そこから「かるた部」創部があり、いろいろあって東京都大会で優勝するところまでが描かれます。大まかなところは原作どおり。原作の最初に描かれる小学生時代は回想場面として挿入されるのみ。このあたりの割り切りはどうでしょうね?劇場に足を運ぶ人のほとんどは原作を読んでいるという前提なのか、そこまでストーリーには思い入れのない、出演者のファンがターゲットということなのか。僕はもちろん原作を読んでいるので戸惑いませんでしたが、原作を読み込んでいない娘は少し分かりにくかったようでした(観た後でいろいろ尋ねられました)。1本の映画としてとらえた場合はそのへんで評価が分かれるかも知れませんね。
 原作には主人公たち以外にたくさんの「脇役」がいて、そうした人達との関わりもこの作品の面白さのひとつですが、映画では一部を除いて登場しません。当然そうしたお話しは出てきません。小学生時代が割愛されていることといい、ほぼ完全に「高校のかるた部ストーリー」に絞られており、原作の奥深さや滋味はなくなってしまった感じでしたが、その代わりストーリー全体がすっきりして、「詰め込みすぎて全体が浅くなってしまう」ことは避けられていました。そういう部分を受け入れてしまえば、楽しく観られるものでした。個人的には(原作とはずいぶん見た目が違う)机くんの人物設定と描かれ方に好感を持ちました。都大会の決勝の試合中、タオルで顔を覆って泣く場面は、いくぶんベタでしたけれど感動しちゃいました(どうして泣いたかは伏せておきますね。このあたりは原作をうまく映画向けに脚色したと思います)。
 上記のように、物語という意味では「人によって評価が分かれるかな」というものでしたが、ひとつとても印象深かったことがあります。全体の雰囲気が明るかったということ。原作も決して暗い作品ではありませんが、映画はそれ以上。演出上陽が陰る場面もありますが、とにかくいつも明るい日差しが差しています。イメージという意味でもそうですが、実際に明るい。夜の場面でさえ明るいのです。ストーリーが中だるみなくサクサク進むことと相まって、この「明るい」ということはこの映画をとても鑑賞しやすく、後味のいいものにしています。屋外ではドローン、かるたのシーンではハイスピードカメラを駆使した映像は美しく、「明るさ」をよく引き立たせていました。映画そのものは本編終了後すぐに「下の句」の予告編が始まるなど、いかにも今風ですし、僕のような初老はメインターゲットである中高生と同じようには楽しめませんでしたが、この「明るさ」のおかげでずいぶん気持よく鑑賞できました。その明るさこそがこの映画の「見どころ」かも知れません。
 

 予告編を観る限り、「下の句」にはあの若宮詩暢ちゃんも(当然ですが)出てくるようです。原作をどこまで映画にするのかなあ?気になるなあ。「上の句」を観る前はあまり興味なかったんですが、「下の句」どうしようかなあ?娘が観たいというだろうから、それに付き合っちゃおうかなあ?なんかちょっとハマってる(笑)?
 ちなみに見終わったあと娘に感想を尋ねたら「肉まんくんが太っていなかった」「ヒョロくんがそっくりだった」だけ。そればかり何回も繰り返していました。大丈夫かコイツ(笑)?