あの子の命はひこうき雲

 早いもので御巣鷹日航機事故から20年だそうです。
 20年前の今日、僕は大学生で、友達とプールに遊びに行っていました。確かその日の昼間に映画「東京裁判」が放送されていて、留守録でそれを録画していたのです。帰ってきて再生してみたら、「飛行機が行方不明」という内容の臨時ニュースが入っていて、それがこの事件を知った最初でした。
 あの事故のすぐ後に、当時購読していた朝日新聞の家庭欄にあった投稿コーナーに、ある文章が掲載されました。投稿したのは20代の女性で、自分の学生時代の友人のことを書いたものでした。その友人はスチュワーデス(今のキャビンアテンダントですね)にあこがれ、努力してついにその夢を実現し、充実した毎日を送り、そしてあの日、123便に搭乗していた・・そういう内容でした。情緒的に流されるのではない、上品なその文章は、荒井由実の「ひこうき雲」の最後の歌詞で締めくくられていました。
 大きな事故や災害があるたびに、忘れてはいけない日が増えていきます。直接の関係が(幸運にも)なかった僕たちにとって、それは物悲しい記憶でしかありません。それでも、せめて、ほんの少しの時間でも、犠牲になった方々とその親しい人たちのために、思い出していきたいと思います。
 「空にあこがれて/空を駆けていく/あの子の命はひこうき雲ひこうき雲