黒の喪章を纏う

 今夜はこれを聴いています。「Black Album」。プリンスが1987年に発売する予定だったものの直前でキャンセル、7年後に正式リリースされたもの。発売中止のときは大きな話題になり、その後ブートが大量に出回ったのでそれで聴いたというファンも多いはず。かくいう僕も(以下自粛)。1994年のリリースはあまり大きな宣伝等はなかったような記憶、少なくとも僕はショップで実物を見つけて驚いた記憶があります。20年以上前の記憶なので怪しいですが。
 全編これファンクというアルバムで、とにかくカッコイイ作品ですが、不思議と僕は、いわゆる「本物ファンク」(JBとかファンカデリックとか)とは違う感触を感じて聴いていました。「本物ファンク」が持つしなやかさや逞しさよりももっとぎこちなく、脆いなにものか。このアルバムに限らず、僕がプリンスの音楽に惹かれたのはそういう部分がきっかけだったように思われます。
 純粋なソウルファンではない僕にとって、その「ぎこちなさ」はプリンスの「当たり前のものに堕すことを良しとしない決意」の故と感じられたわけです。エミネムの音楽にもそういうものを感じますが、ロックファンである僕にとって、それはとても馴染みのある感覚で、それがあったからこそ僕は彼の音楽を聴きこむことができたのかも知れません。
 今年は悲しい報せが続きます。僕が音楽を聴くようになったときにはすでに大スターだったボウイやグレン・フライなどとは違って、プリンスはビッグになっていく過程をリアルタイムで体験できたアーチストでした。突然の訃報で、まだちゃんと悲しむことさえできません。ただただ驚いているところです。今夜はこうして過ごしましょう。今夜僕と同じように夜を過ごしているすべての人に、おやすみなさい。