なんて歌がうまいんだろう、ディランは・・・

 このブログに来てくれるcrayolaさんが、「アメリカン・ルーツミュージックをたどるダミ声アーチスト」という題目でドクタージョン、レオン・ラッセルキャプテン・ビーフハートなどを(crayolaさんのブログで)取り上げています。よーし、僕もと思い立ったのはいいけれど、目ぼしい人はもう取り上げられていて、どうもいい感じの人が思い浮かびません。誰かいないかなあ、と思っていたら、あっと思い当たりました。いたじゃん、超大物が。その人の名はボブ・ディラン
 自伝を読んでいる関係で、今日は行き帰りともディランを聴いていました。iPodには初期から最近のものまでいろいろ入っているのですが、今日は「The Bootleg Series, Vol. 5: Bob Dylan Live 1975 - The Rolling Thunder Revue」(長いタイトルだな)を中心に。
 これは、いわずと知れた「ローリング・サンダー・レヴュー」の実況録音盤。これぞまさに伝説のライブです、が、伝説のナントカカントカではなく、音楽として耳を傾けると、ここでディラン率いるバンドの面々の演奏の楽しげで引き締まっていることに気づきます。普通だと「緩んだ」印象を与えるような部分すら、曲がそれを要求しているかのように思えます。このCDが出るまで、RTRの音源で唯一手軽に入手できた「Hard Rain」で聴けた荒々しい演奏ではなく、素晴らしい曲を、丁寧に演奏している感じ。ギターにハープというおなじみの曲ですら、ワンマンバンドの素朴さではなく、確かに観客に届けるかのようにじっくりと演奏しています(普段より1オクターブ低いんじゃないの?と思えるほど落ち着いた「Mr. Tambrouine Man」の美しさ!)。ディランの声は「Before The Flood」の上をいく素晴らしさだし。もうひとつ、このCDを聴いていると、スティール・ギターがいかに美しい音色の楽器か思い知らされます。
 「アメリカには歴史がない」てな言葉をときどき聞きますが、こういう音楽を聴いていると、そんな言葉はちっとも真実を語っていないと思います。このCDで、いや、ローリング・サンダー・レヴューでディランご一行が体現したものは、あの広大な国にあまねく存在し、そうと気づかずとも決して「根絶やし」にすることのできない「アメリカの宝」だと思います。
 ところで、読み始めた「ボブ・ディラン自伝」。もちろん邦訳で、まだ序盤ですが、これはよさそうです。すごい事実が書いてあるというより(まだ本当に序盤なんでこれからそういうのがあるかもしれないけど)、風景や人物を描写するときのディランの言葉の美しさに惹かれます。ボブ・ディラン自伝