ジャケの穏やかな笑顔のピー様がまたイイ!

 イギリスらしさ、と一口に言っても様々な切り口があって、簡単に断言できないのですが、今日僕が聴いていたのがピート・タウンゼンドとロニー・レインの「Rough Mix」。
 このレコードは、最初聴いたときにはあまりピンときませんでした。僕としてはファンだったピートの歌が聴きたいのに、何曲かはロニーが歌っていてそれが不満でした。アレンジもザ・フーのような緻密なものではなく、当時(今から20年くらい前。そんな話ばっかりだなこのブログ)の僕にはそれも馴染めませんでした。なんだか全体にゆるゆるに感じられて「なるほど、だからラフミックスてタイトルなんだな」なんて勝手に納得していました。まったく今では信じられませんね。こういう音楽の素晴らしさがわかるようになったのは、成人後しばらく経ってからです。こういう演奏が持つ「あえてやった緩さ」は、わかるようになるまで時間がかかりました。
 僕が違和感を持った最大の理由「緊張感がないように感じられる」は、今では最大のチャーム・ポイントに感じられます。ピートはフーの存命中からソロ・アルバムを出し続けていました。このアルバムもその1枚なんですが、ピートのソロというのは、たいてい「饒舌で重い」と感じるんです。音がヘビーというのではなく、ピートの、肩に力が入っている感じがこちらにもリアルに感じられて、それが重かったんです。もちろんそれが彼の魅力で、好きでもあるんですが、「神が与えた絶えざる苦悩」がいつも彼に重荷を強いているような感じなんです。
 ところがこの「Rough Mix」は、そういう重さがそれほど表だっておらず、心地よい風通しのよさが目立っているんです。これはもちろんロニーの存在が大きいのでしょう。それに、気心の知れたゲストたちの力もあったに違いありません。メンバー表を見ると、「スタジオ出たら毎晩飲んだくれてたんだろうなあ」と思わせるようなメンツですが、なのに音楽は不思議と「酩酊」はしていません。お酒の匂いはするんだけど(笑)。悩みやアルコールはドアの外に置いて、今このときは好きな音楽を演ろう、そういう感じの明るさですね。常に怒り、悩み、苦しんでいたピートが、ほんの一時「楽しんで作った」レコードは、英国のロックが好きな人なら必ず気に入る「隠れた名盤」です。Rough Mix