追悼 ビリー・プレストン

 ビリー・プレストンの亡くなったらしいです。KENNYさんのブログで知ったのですが、夕刊の訃報欄にも載っていました。
 僕のような人間にとってビリーの名前を知ったのは、当然「Let It Be」でのビートルズとの共演になります。でもかえってそのことで、ミュージシャンとしてのビリーをきちんと認識するのが遅れたように思えます(僕にとっては)。ビートルズ絡み以外での彼の活動をまじめに追う事はありませんでした。
 今僕が持っているのは、アップルから出た2枚以外では、例のライヴ・アルバムとベストアルバムだけです。ただ、彼名義ではそれだけですが、もちろん「Let It Be」「Abbey Road」を始め、ジョージのアルバム、「バングラデシュのコンサート」、ストーンズの作品、それにアレサ、キング・カーティスの「フィルモアもの」など、他人名義のアルバムで彼の名演は聴いてきました。リンゴとともに来日した時には生で観てもいます。その時はどのミュージシャンも、正直に言って全盛期の緊張感とは無縁の「なごみ系」パフォーマンスだったのですが、ビリーだけは全力でステージを盛り上げようと大奮闘、ダンスまで披露してくれました。その時は「さすが、エンターテイナー魂だなあ」と思っていました。
 今、彼名義のアルバムを聴いているのですが、リンゴと一緒のときのエンターテイナーぶりよりも、音楽家としての彼の本当の実力がわかります。基本的な部分はR&B、ゴスペル的なものですが、キーボードの使い方が斬新で、オーソドックスなソウルとは違う印象です。スタジオ録音でのクラビネットとオルガン、シンセの多重録音によるアレンジなど、どこかスティービー・ワンダーを連想させます。スティービーにとってシンセは「鍵盤楽器のスキルであらゆる音がクリエイトできる」ものですが、ビリーにとってはあくまでも「新種のキーボード」という感じです。だから音色が良く練られていて、いかにも指で弾いている感じがわかります(スティービーは音色もフレーズも、鍵盤楽器的な部分にこだわらない感じがします)。彼もまた、新時代のソウル・ミュージシャンだったんですね。ちゃんと追いかけられなかったこと、追いつけなかったこと、今後悔しています。
 今部屋には「You Are So Beautiful」が流れ始めました。同じ部屋にいる妻が「これ知ってるよ」と話しています。これは有名な曲ですね。どれくらいの人が、作った人の名前を記憶しているでしょうか?まだ59歳、早すぎる訃報だったと思います。
 1990年のポールの来日公演で、アンコールの1曲に「Get Back」がありましたが、このときのキーボード・ソロは、基本的にはビリーが弾いたものと同じでした。また一人、あちらに行ってしまったけれど、確かに残してくれたものがあります。僕たちはこれからも、いろいろなところでこの人に出会い、感動する事でしょう。ご冥福をお祈りいたします。

ライヴ・ヨーロピアン・ツアー

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