後編 ビートルズを血肉した若者たち
ジェットのニューアルバム「Shine On」。もうけっこう前のものなんですけど、最近購入したもので、今回取り上げます。
このバンド、僕はiPodのCMで使われた「Are you Gonna Be My Girl」(お笑いグループのダイノジの人がエアギターで使っていた曲としても有名ですね)で知って、1枚目の「Get Born」から聴いています。この1枚目、僕はそれなりに楽しめたアルバムでした。上記の曲が一番有名でしたが、意外な事にアルバムのその他の曲はあんまり同じ傾向のものは少なく、むしろどっしりとしたミドルテンポの曲にいいものがありました。
音の感じはいかにも最近の「ワイルドなロックンロール」でしたが、これまた意外なことに、どことなくビートルズ的なテイストも感じられました。ただ、今やビートルズ的意匠というのはロックバンドにとっては基本イディオムのようなもので、例えばプロデューサーのアイデアかも知れないので、バンドの持ち味なのかどうかはわからないなあと思っていました。で、アップテンポの曲になると、生きの良さはともかく、ちょっと曲想が決まっていて、長く活動するとなるとその辺が課題だなあと、そんなふうな感想でした。まだ「ファン」というほどの思い入れがないんで、感想もそのあたり、コンサートも観た事ありません。
で、今回の新譜。各種レビューを読む限りかなりの高評価。1枚目から考えても2年以上のインターバルがありますが、最近のバンドは、下手をすると2枚目が出なかったりしますから、とりあえず出ただけでも1段階クリア、という感じで、遅ればせながら聴いてみました。
結論からいうと、良かったです。ちゃんと成長していました。曲のレベルもはっきりと上がり、1枚目にあった「ちょっと単調な感じ」はなくなっていました。ニックとクリスのお父さんが亡くなったことについて唄ったというタイトルナンバーも感動的です。今までこのバンドに足りなかったものが付け加えられたというより、バンドがもう持っていた(1枚目で感じられた)ものが大きく開花したという感じ。本当に、成長したなあ、という気持ちになります。アップテンポの曲は相対的には少なめ、バラードやミドルテンポの曲にいいものが多い良作です。もちろん、本来の持ち味である活きのよさはそのままです。
で、僕が聴いていてい一番感じたのは「ビートルズ的な部分が大っぴらになってきた」ということです。1曲目(実は14曲目のサビのショートバージョン)から、ホワイトアルバムのころのビートルズのにおい、2曲目のリフは「Come Together」に似ているし、他の曲も、決してもろ元ネタがわかるようなものはありませんが、随所に「おお!」というところがあります。これが単なるパクリに感じられないのは、彼らの演奏や曲がオリジナルなものであり、土台がそれだという証拠だと思います。
最近のバンドはちょっとなあ、と思っている年長のロックファンのみなさん、ビートルズとストーンズ(ついでにいうとエアロあたりも)が好きな方は、このジェットも気に入ると思いますよ。前回のスミザリーンズが、ファン気質丸出しの微笑ましさだとしたら、今日のジェットは、「ビートルズを愛し、血肉にした若い音楽家」という感じです。
- アーティスト: ジェット
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2007/01/24
- メディア: CD
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