G君の思い出(涙)

 KENNYさんが先日「嫌われ者、現る」というタイトルで、あの「嫌われ者」通称G君(詳細はこちらをお読みになってください)のことを書いていました。それを読んでいて、僕はふと、G君がらみでは僕もすごい体験をしていたことを思い出してしまいました。それを書きます。
 あれは僕が高校2年生の夏、もう夏休みに入っていたと思います。あのころの僕は勉強もせず、かといって部活もなく(運動部に入っていなかったので)、毎日だらだらと過ごしていました。その日もいつものとおり(笑)、暑いさなかに昼寝をして(当時僕の家には空調がありませんでした。あんな中でよく昼寝が出来たものです)、夕方喉が渇いて台所に行きました。台所では母が夕食の支度をしています。僕は母が忙しく立ち歩いている流し台に出しっぱなしの(家族ではなく僕が出しっぱなしにしていたんです念のため)、カルピスのビンを手に取り、1杯作って飲み干すと、そのまま外出しました。外出先は憶えていませんが、多分近所の書店だったと思います。そこでしばらく時間を使い、小1時間ほどして帰宅しました。台所を覗くと、さっきと変わらず流しに向かって(ここが重要)母が夕食の支度をしています。
 歩いて往復したので汗をかいた僕は、また冷たいものが欲しくなって、さっきと同じように流しに出ていたカルピスのビンを持ち、さっきと同じようにコップに注ぎました、と………。
 コップに流れていくカルピスの原液に乗って、黒い何かが「ポトッ」とビンの口からコップに落ちたんです。
 「!」(総毛立つ感じ)
 そうです。G君です。それもかなりの大きさの。あわれそのG君はすでに息を引き取っていました。僕は本当にびっくりしてそのコップを母に見せました。母もさすがに驚いていたようでしたが、まあ、もう死んでいるのだからということで、G君だけ紙にくるんで捨ててしまい、おしまいになってしまいました。
 母にとってはそれで終了ですが、僕にとってはそうじゃありません。上にも書きましたが、G君はすでに死んでいました。ビンの口から入り込み、中で溺れ死ぬといってもそれなりの時間はかかるでしょう。で、これまた上に書いたとおり、このときカルピスのビンのすぐ横で母がずっと歩き回っていたんです。しかもこのとき(僕が1回目にカルピスを飲んだとき)には、飲み終わった後ビンのフタはしていました。
 ということから考えて、僕が1回目に飲んだ後、母の目を盗み、自力でフタを開け、入り込んだとは考えにくく、もっと前から(察するに、その一晩前あたりから)G君はビンの中にいらっしゃったんではないか、と?とすると、僕が1回目に飲んだ、そのときはすでにG君はいて、それなのに僕は何も知らずにカルピスを………、!
 カルピスのビンを出しっぱなしにしていたのは明らかに僕ですので、このことを話しても家族の誰も同情や心配はしてくれませんでした。かえって「自業自得」「悪いのはお前だ」などと言われただけでした。幸い健康上の問題は発生せず、その後もだらだら健康に過ごせたんですが、時々この体験がフラッシュバックするたびに、あのときの「ポトッ」という視覚的感触と、一瞬全身を貫いた戦慄を思い出します。
 あれから幾星霜、僕も大人になり、あのとき住んでいた家は新築されてもうありません。あのときの台所のちょうど真上に当たる場所で、今僕はキーを叩いています。新築後僕の家にはあまりG君はいなかったんですが、最近、とても小さいものですが発見しました。今度はあのときの二の舞はごめんだ、とりあえずカルピスやジュースは、冷蔵庫にしまうようにしましょう(笑)。