ビートルズ二題噺

 今日はビートルズ関連の話題を2つ。
 今日の毎日新聞(夕刊の1面)に「ビートルズになろう」という記事がありました(オリジナルの記事はこちら)。内容はというと、「ビートルズのカラオケCDが売れている」というものでしたが、この「カラオケCD」というのがただ者ではありませんでした。6枚組なのに収録されているのはたった30曲、ところがこれがとんでもない内容で、完全コピーのテイク以外に、「ジョンのパートがないもの」「ポールがないもの」などの「マイナス1」テイクや、キーを下げたものなどが収録されているというのです。曲によってはギター抜きのものもあるそう。これが売れているんだそうです(記事では「団塊の世代に売れている」という総括になっていました)。記事にあるジャケット写真で確認できる収録曲は赤盤時代のものが中心。ジャケットデザインもなかなかのものです(ユニオンジャック風のバックにメンバー使用楽器が並び、そこに「ビートルズかつら」がかぶせられているもの。ロゴの活字や曲名のレイアウトなども当時のテイスト(アメリカ盤)風です)。
 記事自体は団塊の世代がどうこう、カラオケ人口がなんとかなど、風俗記事的内容でしたが、このCD自体はなかなかそそります。もちろん「歌いたい」という即物的な要求もありますが、それ以上に「メンバーが1人抜けたら、その曲はどんな風に聞こえるか」という興味にも応えてくれそうです。先日参加したビートルズ関連のオフ会で、ご自身もビートルズコピーバンドをなさっていらっしゃる方々から「ジョンとポールが偉大なのは当然だけれど、ジョージやリンゴの重要性は想像以上ですよ。3人のコーラスで、ジョージがいるのといないのでは印象はまったく変わるんですよ」というお話しを伺いましたが、そういう部分を自分の耳で確かめる機会になりそうです。そう考えると、これはけっこう研究のために聴く人もいるのではないかと思います。演奏も六本木キャバーン出演バンドのメンバーということですから、ファンのツボは押さえたいい演奏だと想像できますし。かくいう僕もけっこう欲しいです。問題は価格かな?でも6枚組全145テイクだから1万2千600円は高くないかな?
 NHK総合の「探検ロマン世界遺産」今回はリヴァプールでした(番組では一貫して「リバプール」という表記でした)。番組表にも「ビートルズを生んだ伝説の港町街」となっていましたし、実際ジョンが育った家(ミミおばさんの家ですね)やペニー・レーン、キャバーンクラブ、そしていくつかの(ファンには有名な)エピソードなども登場しました。しかし実際には、それほどビートルズばかりにスポットが当たったものではなく、リヴァプールという都市の歴史や現在を紹介する、上質な内容でした。
 この都市が貿易で発展したことはビートルズファンには有名ですが、その中でも奴隷貿易が重要な役割を果たしたこと、街の人口の多くを占めるアイルランド系市民が、19世紀のアイルランド大飢饉で逼迫してリヴァプールに移住して、過酷な環境の中で街の産業を支えていったことなども紹介していました。僕は不勉強だったので、あの有名なペニー・レーンの「PENNY」が奴隷貿易で財を成した人の名前だったとは知りませんでした(この街には他にも多くの、そうした人の名前を付けた地名があるということです)。何百年も栄えた都市ですから、建物も立派で街にも風格があり(たった1度・1泊ですが僕も訪れたことがあり、その時もそういう印象を持ちました。さびしいという印象も持ちましたが)、番組でも明るい風物や話題も取り上げていましたが、全体のトーンはむしろシリアスなものでした。ビートルズファンとしては、ミミおばさんの家のジョンが使っていた部屋が紹介されたこと、「この部屋でジョンとポールが一緒に曲を書いていた。「Please Please Me」はここで生まれた」という言葉と映像が印象に残りました。まだ若いあの2人が、その部屋でどんな事を語り合い、どんな風に音楽を奏でていたのか、想像は尽きません。
 この番組は、数年前に起きたという黒人青年の虐殺事件によって垣間見られる、まだ残る人種差別を取り上げ、そうしたものを乗り越えようと活動している人達を紹介して終わりました。この番組はいつも単なる観光ガイドではない深い内容ですが、リヴァプールでここまでシリアスな内容だとは、お恥ずかしい話しですが想像していませんでした。でもいい番組でした。アイルランド系の人の「ビートルズのメンバーにもご先祖がアイルランド系の人がいる。私たちの反骨精神が彼らにも宿っている」という言葉が、僕たちビートルズファンには面目躍如という感じでした。
 それにしても、楽しいものであれ、シリアスなものであれ、今でも必ず話題になるビートルズの偉大さを感じないではいられません。これを書きながらずっと「赤盤」を聴いていましたが、ちょうど今「In My Life」になりました。今夜はリヴァプールに思いを馳せつつ、おやすみなさい。

1962-1966 (Red)

1962-1966 (Red)