食器棚から出てきた「太陽と戦慄」

 今日の南関東は快晴、そしてとても寒かったです。この天候は全国的だったんでしょうか?気持ちいい青空でしたが、昨夜来風が強かったですね。さっき雨戸を閉めたときに外気に当たったら、吐く息が白かったです。
今日は休日だったんですが、この寒さもあり、家族全員のんびりと過ごしました。やったことといえば部屋の片付けや掃除くらいでしたね。実は今、リビングの間取りを変える計画を立てていて、実現のためにはけっこう物を減らす必要があるので、折に触れて片付けをしているのです。
 で、午前中遅くですが、食器棚を整理していた妻が「ねえ、こんな食器があるんだけど、あなたが入れたの?」と訊いてきました。見せられたのが写真のお皿とカップです。

 おわかりになるでしょうか?描かれている柄はキング・クリムゾンの「太陽と戦慄(lark’s Tongues In Aspic)」のジャケットイラストです。そりゃ妻にはちょっと刺激が強いですね。この2つは、以前クリムゾンのCDを買った際にディスク・ユニオンで特典としてもらったものです。僕が棚にしまいこんで、そのまま忘れてしまったものでした。
 アルバム「太陽と戦慄」は、中学3年の夏に買いました。当時の僕はプログレにハマッていて、フロイド、イエスELPあたりのいわゆる「代表作」を聴き始めているような時期でしたが、クリムゾンに関しては、「クリムゾン・キングの宮殿」以外はまだ聴いていない状態でした。レコード屋でさんざん迷ってこのアルバムにした記憶がありますが、決め手になったのはジャケットデザインでした。シンプルなイラストで、インパクトが強い「宮殿」とはまったく対照的ですが、僕はなんとなく、この一見なんでもないイラストの「表情」に惹かれたのです。それは言葉にならない感情でした。そしてその感情は、そのままアルバムを聴き終わったあとも残りました。
 ファンの方はよくご存知のように、このアルバムはロバート・フリップ以外の全メンバーが交代していて、まったく新しいグループとして再出発したときの最初の作品です。なので、ここでのクリムゾンはそれまでとは全く違う音楽を奏でています。特にこのアルバムは、「Starless And Bibleblack」「Red」「U.S.A」などの後の作品(だんだん一般的な意味でロック色が強くなっていきます)に比べて、もっと混沌とした内容・音色で、当時の僕には「まったく未経験」の音楽でした。なのに僕は最初に聴いたときから「これは傑作だ」と感じ、それはそのまま今日まで来ています。これを初めて聴いてからすでに31年が経過し、今日までジャンル・年代問わずたくさんのレコードを聴いてきましたが、まったく気持ちは変わりません。クリムゾンの歴史でどのような扱いを受けるかとか、ロックの世界でどう評価されるかなど関係ないです。
 よく2つ以上のジャンルの音楽要素が混じった作品に対して「ジャンルを超えた」という形容がつくことがありますが、その殆どは宣伝文句以上の意味を持っていません。まさしく「ジャンル要素が複数ある」というだけで、聴けばだいたいどのジャンルかわかってしまうものが多いです。あくまで主観ですが「太陽と戦慄」は本当の意味で「ジャンル分けが意味をなさない」数少ない作品のひとつだと思っています。形式を問えばまさしく「ロック」でしょう。でもここには、音楽がジャンルに奉仕する図式はなく、天賦の才に恵まれたミュージシャンたちが「音楽」に対してのみ心からの献身を遂げた、その姿が捉えられていると思っています。クリムゾンの音楽を「暗い」「難しい」と捉える向きは多いですが(そして、フリップのあの膨大な解説や独特の価値観はそういう意見が多いのも無理がないようなものですが)、クリムゾンは一貫して「音楽」に対しては真摯であり、特に「太陽と戦慄」は、ある意味で「輝かしい」といってもいいほどの「祝祭感」に溢れたアルバムだと思います。
 今年はクリムゾンデビューから40年(またも40周年だ!本当に1969年てすごい1年だったんですね)、「宮殿」や「Red」はスペシャル・エディションが出て、なんと「Lizard」まで特別盤が出るというのに、なぜか「太陽と戦慄」は出ないようです。何故なんでしょう?オマケつけるような別テイクなどがなかったんでしょうか?あ、もしかしてこれだけは「作品発表40周年」に出すつもりなのかな?そうするとリリースは4年後ですね。そうかそうか。それならしょうがない。あと4年、死なないで待っていましょう。ジェイミー・ミューア在籍時の別テイクとか、テレビ出演時の映像とか(以前ソフト化された実績あり、つまりその存在は確認されています)オマケにつけてほしいなあ。
 ところで最初に書いたマグカップとお皿ですが、妻からは「気持ち悪い柄」という、ごもっともな感想をもらいました(苦笑)。「職場に持って行って使ったら?」と言われたんですが、職場でもなんだか評判の予想がつきます。結局妻に頼んで、そのままにしてもらいました。いつか使う日はくるのかなあ?なんだかもったいなくて使えないんですよねこういうの。いつか、お正月にでも使いましょうか?家族には不評かも知れないけれど(笑)。

Larks' Tongues In Aspic, 30th Anniversary Edition

Larks' Tongues In Aspic, 30th Anniversary Edition