横浜元町「クレーン・ギターズ」訪問記

 いきなりですが修正です。先日のエントリで「ジョージ・ハリスンが1969年当時使用していたオールローズのテレキャスはソリッドボディだ。実際に弾いたギタリストが『重い』と発言している」と書きましたが(こちらのエントリです)、どうもこの証言だけでは確定できないということがわかりました。というわけで、本日の本題へ。
 今日の仕事帰り、あるお店に寄りました。横浜元町にある「クレーン・ギターズ」という楽器店です。楽器店とはいっても普通のお店ではありません。ここはビートルズ関連を中心とした非常にユニークなお店なのです。お店の存在自体はなにかで読んだかネットで検索したかで知っていまして興味はあったんですが、今まで一度も行ったことはありませんでした。実はここは先日購入したシンコーの「ザ・ビートルズ・イクイップメント・ストーリーズ」の共著者である岩本憲明氏が経営するお店で、この本にも紹介されています。本に登場する珍しい楽器のいくつかは岩本氏が写真や資料をもとに復刻したものだというほどのこだわり。これはちょっと実際に見てみたい。たまたまリッケンバッカー325の弦が錆びてしまって替えの弦が欲しかったので、思い切って行ってみました。
 実際にお邪魔したお店はとても明るく、マニア向けショップとは思えない雰囲気(失礼)。弦を買ったあと、少し長居してお店の中を見させていただきました。
 これはもう、僕のような人間にはなんというか、天国のようなお店でした。リッケンバッカーやヘフナー、グレッチはもちろんですが、フェンダーギブソン、国産のコピーモデルやエピフォン(エピフォンジャパンも)などがあり、ビートルズもの以外でもビンテージものやお店のオリジナル・モデファイものなどがたくさんありました。ジョージがクォリーメン時代に使っていたヘフナー・プレジデントなど、初めて見るものもありました。
 なかでも目を惹いたのはヴォックスの「ケンジントン」という不思議なフォルムのギター。「Hello Goodbye」の撮影リハなどで存在が確認され、数年前にオークションに出ただけという正真正銘幻のギターを、岩本氏が独自に復刻したというもの。なにしろ現存数が事実上1本で(プロトタイプのみらしいです)、しかもそれはオークションで個人が落札したらしいので、資料と写真をもとに寸法を計算し、材質を決め、使用を推理しという具合に、大変な手間をかけて作成したものです。僕は実際に持たせてもらいましたが、ホロウボディだったのでとても軽く、そして(他意のない表現ですが)一種の「ビザールギター」のような印象を持ちました。なによりも、写真でしか見たことがない(もっといえば、写真自体めったに見たことがない)楽器が目の前にあるというだけで、嬉しくなってしまいました。
 岩本氏はとても人当たりの柔らかい方で、僕のような人間にもにこやかに応対してくれました。たまたま僕がいたときは他に人がいなかったので、興奮してベラベラしゃべる僕におつきあいくださって、おかげで思いもかけずビートルズ談義ができました。
 で、その会話の中で、冒頭に書いた話題が出たのです。正確にいうと僕が「オールローズのテレキャスを実際に弾いた人間のインタビューに『重い』という発言がありましたから、ジョージのものはソリッドボディに違いないです」と話したところ、岩本氏から次のような言葉が返ってきたのです。
 「あのテレキャスの重さは大変深い謎なんです。フェンダー・ジャパンが作っているローズウッドのテレキャスはくり抜きがあるのに5kg以上するし、プロトタイプ(だったか?ちょっとここは失念してしまいました。記憶が確かなら制作者のロジャー・ロスマイズルが作ったプロトタイプ)はソリッドボディだったのに非常に軽かったという話しもあり、なかなか確証が得られないんです」
 そうか、そうなんですか。僕はたまたま読んだインタビューで簡単に結論を出してしまいましたが、あのインタビューの言葉だけでははっきりしたことはわからないらしいです。深いなあ。思わず岩本氏と2人で「オリヴィアさんが持っているはずだから、どこかで公開してくれないですかねえ」と話してしまいました。
 結局僕は30分以上お店にいて、買い物以外にたくさんの情報と目の保養をさせてもらいました。しかし、こういうお店を持ち、そこで大変な努力をして楽器を製作までする人がいるなんて、つくづくビートルズってすごい存在です。ちなみに会計のとき、持参した「ザ・ビートルズ・イクイップメント・ストーリーズ」にサインしていただきました。「サインなんてしたことがない」とおっしゃりながらも快くご署名くださって、今僕の手元には「著者サイン入り」のご本があります。これもとても嬉しいです。
 横浜は仕事上簡単に行ける場所ですので、またぜひお邪魔したいお店です。でも通っているとまた「ギター欲しい病」が再発しちゃうかも知れません(笑)。ちなみに今日一番気になったのは、ビートルズ関連ではないですが、クラプトンがクリーム時代に弾いていた「サイケペイントのSG」。ペイントはもちろんお店のオリジナル・ハンドペイントだそうです。これが本当にきれい。本当に欲しくなっちゃいそう。他にもあの「ROCKY」もあったし。ああ、悩ましい(笑)。でもまた行ってみようと思います。岩本さん、今日はありがとうございました。
 「クレーン・ギターズ」のサイトはこちらです。