ブルグミュラーを「聴く」

 今テレビでフィギュアスケートやっています。今演技している選手は「ベサメ・ムーチョ」を使用しています。この曲聴くと反射的にビートルズのバージョンを思い出しちゃいます、しょうがないですよね、そういう身体になっちゃってるんだもん(笑)。フィギュアが始まるなんて、なんだかんだいって秋ですね。そういえば今朝イヌの散歩に出たらほのかに金木犀の香りがしました。頭の片隅には漠たる不安を意識しながらも、思わず深呼吸してしまいました。秋の訪れを心から喜べるときはいつになるのかな?
 数日前にあるCDを購入しました。クラシックもので、弾いているのは黒田亜樹という人。イタリア在住の日本人ピアニストで、活動の中心もヨーロッパらしいです。プロフィールを見る限り、かなりユニークなレパートリーのようです。この人は数年前にあのELPのあの「Tarkus」をピアノ編曲したものをCDリリースしていて、僕はそれで黒田亜樹という人を知りました。
 で、今回買ったものはナニかといいますと、「ブルグミュラーエチュード集」。そう、ピアノのお稽古をした方なら絶対「体験済み」のあの人、あの曲です。
 僕ピアノは、中学のときにバイエル終わったあたりで挫折してしまったのでブルグミュラーまでは行かなかったんですが、妹が練習していた関係で楽譜は家にあって、妹の弾いているものを聴いたこともありましたし、隠れてこっそり自分で(断片的に)弾いたこともありました。そんなわけで、聴いていると「あ、これ聴いたことある!」「これ弾いたかも?!」というものがありました。でも一番驚いたのは、このCDから流れてくる音楽が、「お稽古の模範演奏」ではなく、ちゃんと「音楽作品」として成立していることでした。これは当然ですね。そうした驚きもちゃんと「込み」で企画されているものでしょう。でも本当に「へえっ」と思うほど豊かで美しい音楽です。もしかして、ちゃんと練習したことがないから思うだけかな?でも練習した経験した僕の妻も「こんなにきれいな曲だったっけ?」などと言っていますから、あながち大ハズレの感想でもないと思います。
 ちなみに演奏は若干タッチが固いというかピアノの響きが固いのが気になりますが、とても丁寧。僕は上記の「Tarkus」では(カップリングの「展覧会の絵」でも)少し技巧的なところが気になったんですが、このアルバムでは原曲が「練習曲」なので、あまり気にならないで楽しめました。ちなみにこのCDにはDVDもついていて、実際に弾いているところを観ることもできます。手元がよく見えるアングルも多く、リアルタイムで練習している人には勉強になるのではないかな?このDVDだけでも商品価値があるような気がします。
 クラシックは再現芸術で、同じ曲でも演奏家によってその表情は大きく変わります。そんなこと当たり前ですが、このブルグミュラーを聴いていると、身近で聴いたりほんのちょっとだけでも自分で弾いた経験があるだけに(しかもずっと若い頃)、そのへんの「基本的なこと」を深く実感できます。こんなにいい曲だったんだねえ。変な驚きですが。
 ようやく秋らしくなった空気の夜、この曲を流しながら部屋に座って、音楽の価値は思いがけないところに隠れていて僕たちを驚かしてくれるなあと感じています。楽譜買ってきて、また弾いてみようかな、ブルグミュラー

 追記:黒田亜樹のオフィシャルサイト(こちらです)を確認してみたら、レパートリーにはフランク・ザッパの「Inca Roads」まであるようです。すごいなあ、一度生で演奏を聴いてみたいものです。