手軽に聴けるようになってほしいなあ、ロジャーのソロアルバム

 ウィルコ・ジョンソンと我らがロジャー・ダルトリーのジョイントアルバム「Going Back Home」、ウィルコの来日のころに発売というアナウンスだったのに延期になってしまいました。かっこいいジャケットなのでアナログも欲しいなあと思いながらアマゾンをウロウロ検索してみてビックリ。ロジャーのソロアルバム(のCD)がものすごく高騰していたのです。今は入手困難なんですね。僕は全部持っていますが、ちょっと信じられないような高値(アマゾンのマーケットプレイスはこういう傾向が多く見られますが…)。手持ちのものが全部最高値で売れたら10万超えちゃいます。売らないけれど。というわけで、今日のお題はその高騰アルバムから1枚。「Ride A Rock Horse」。
 1975年発表のロジャー2枚目のソロアルバム。ザ・フーとはまったく違う純朴な姿だった「Daltrey」、豪華絢爛なゲストで「とてもいいけれどどこか散漫」な「One Of The Boys」のはざまにあるこのアルバムは、実はけっこう充実した作品です。曲の質が高く、演奏もしっかりしています。全体にファンキーなアレンジが多く、ホーンや女性コーラス(英国のファンクバンド、ココモの女性陣が歌っています)もぴったりな雰囲気(AWBやハミングバードのように流暢ではなく、どこかぎこちないところも魅力的)。曲の質が高いと書きましたが、メインのソングライターはラス・バラード。ラスはプロデューサーも務めています。「Daltrey」での(当時無名だった)レオ・セイヤー起用にも言えますが、このころのロジャーは人選のセンスがすごいです。
 ザ・フーのメンバーのソロとしてはキース・ムーンのあの「Two Sides Of The Moon」と同時期のアルバムですが、キースが思いっきり羽目をはずしたような「パーティアルバム」だったのに対して、ロジャーの「Ride A Rock Horse」はずっとしっかりしたプロダクションで、この時期までのザ・フーのメンバーのソロ作品のなかでは最もポップで質が高いです。そこそこヒットしたという記録もうなずけますね。
 肝心のロジャーの歌ですが、とてもいいです。映画「Tommy」あたりから急に表現力が増したロジャーですが、ここでも実にいい仕事。アップテンポの曲であっても丁寧に歌っています。個人的に重めのバラード「Oceans Away」が大好き。このアルバムはずっと以前に中古の日本盤アナログを入手していたんですが(30年近く前。当時はそんなに高くなかったのよ。今も持ってます)この曲は入れ込んで聴きましたよ。お馴染み「どもりボーカル」が聴けるルーファス・トーマスの「Walking The Dog」もかっこいいです。
 こうやって書くと、ものすごい名盤のようでしょ?でも「そうでもない」ところがミソ(笑)。いや、実際いいアルバムです。でも例えば世界的大ヒットとか「歴史的名盤!」などと比べると、派手さは控えめです。それだけに、それなりにロックを聴き込んだ人だったらわかってもらえるような滋味に満ちたアルバムです。タイトルそのまんまのジャケット・デザイン(笑)も含めて、愛すべきアルバムです。こういうアルバムは高値で取引されて「なあんだ、そんなにいいアルバムじゃないや」と思われてしまうのは残念です。こういうものこそ気軽に聴けて耳を肥やすことができる、そういう環境が音楽ファンを増やすために必要ではないかなあ、と、アルバムのラスト「Born To Sing Your Song」を聴きながらしみじみ思う、春の夜です。
 CDはボートラが入っていて、余韻ゼロなんですけれどね(笑)。

Ride a Rock Horse

Ride a Rock Horse

こんなジャケットです。それにしても高い!普通にショップで買えた時は2000円切っていたのに…。