可能性としての名作「Get Behind Me Satan」

shiropp2005-06-10

 というわけで、ホワイト・ストライプスの「Get Behind Me Satan」。
 リリース前から「すごいぞ!」という声は聞こえていたのですが、まずは先入観を捨てて一聴。
・・うーん、1曲目はいつものノリで聴ける曲だったけれど、そこから後は、今までの彼らとは一味違うアレンジ、曲調のナンバーが続きます。変な表現ですが、とてもバラエティーに富んだ内容かな。
 使用されている音楽的イディオムは、むしろ耳になじんだ「古典ロック」その他のオーソドックスなものです。僕も最初のうちは、そういう部分を頼りに聴いていました。
 しかし、何回か聴いているうちに印象は変わってきました。最も強く感じたのは、使われているスタイルこそオーソドックスですが、決してその再演自体が目的ではないのだなという点です。例えばブルースロックのスタイルで演奏していても、目指しているのはそのスタイルの完成ではなく、その先にある、まだ到達していない何かであるという感じ。繰り返しますが個々の音楽的要素は目新しいものではありません。しかし音楽全体は明らかに新しいものです。それも完成された「作品」ではなく、このユニットが到達したいと願っている遙か先を感じさせるという意味での新しさです。
 このレコード、僕はいい作品だと思います。でも、これが最高傑作ではないでしょう。それは「前の作品の方がよかった」ではなくて、これが出たからには、最高傑作はこれから作られるに違いない、という意味です。これからホワイト・ストライプスがつくる作品がどれほどすごくなるか、その可能性を強く感じさせてくれるものでした。これこそ「現役の才能」ですね。