追悼ロバート・モーグ

 新聞にロバート・モーグの訃報が載っていました。71歳だったそうです。
 僕がこの人の名前を知ったのは中学1年生の時。ご多聞に漏れず富田勲のレコード「惑星」を買ったときでした。そのときはライナーに書いてある「モーグ」というのが人の名前とは知りませんでした。ロバート・モーグという人が開発したと知ったのはその少し後に読んだ音楽雑誌でです。そのころは「ムーグ」という表記が一般的でした(そういえば10年ほど前に富田勲さんのサイン会に行ったときに、「モーグ」と発音していたのを憶えています)。ビートルズの「Here Comes The Sun」で使われていたのは、間抜けなことにしばらく気がつきませんでした。ビートルズはテクノロジーを使いこなすのがうまかったですね。
 シンセサイザーは当時とても混乱したイメージで捉えられていて、万能の楽器だ、いや単なるきわものだと色々言われていましたが、今から考えると偉大な発明だったと思えます。これも何年か前ですが、初期のモーグが単音しか出なかったということを話したときの僕の妻の驚き様は見物でした。「じゃあ、このレコード(富田の「月の光」)はどうやって作ったの?」という質問に答えるときの快感といったら。まるで自分がやり遂げたように得意になっていました。90年代に再結成したELPのコンサートに行ったときにステージにデンと置いてあった「タンス」の偉容も忘れられません。ミニムーグプロディジーを楽器屋でさわって興奮したのも気がつけばはるか昔の話し。でも鮮明に憶えています。
 今シンセは様々なメーカーからたくさんの種類が出ています。それでも「モーグ」の名前はシンセサイザーの代名詞であり続けるのでしょうね。たくさんの音楽家の想像力を刺激し、頭の中のヴィジョンに音色を与えた功績は、20世紀の達成の一つに違いありません。ご冥福をお祈りいたします。惑星