今日吹いた、今年最初の秋の風に相応しい・・

 先行シングル「Fine Line」が僕にとってはもうひとつだったためにどうかな、と思っていたポール・マッカートニーの新譜「Chaos And Creation In The Backyard」が届きました。もちろんコピーコントロールものじゃありません。アメリカ盤です。DVDもついてますがまだ観ていません。
 1曲目は先行シングル。その後はどちらかといえば静かに進行します。どの曲も落ち着いた感じで、最初は物足りない印象ですが、どこかに、それだけではない雰囲気を持っています。これは、ひょっとすると・・・と思わせてくれます。「Jenny Wren」のギターは、ファンにはたまらない「あのポールのアコースティック」です。最初のショックは6曲目「English Tea」で来ました。ストリングスの静かなイントロに続いて突然「あのポール」が帰ってきました。「あのポール」です。
 正直に言ってしまうと、僕にとっては「Flaming Pie」「Driving Rain」はのめり込むことができないレコードだったのです(嫌いなわけはないですが)。言葉では月並みになってしまいますがポールのあの魔法のような感覚、どこにでもあるポップスのようでいて、実はどこにも類似のものがない、あのスリル。それがこのレコードにはあるのです。「A Certain Softness」は「Somebody Who Cares」や「Distraction」の香りがしますし、不思議な感じの「Riding To Vanity Fair」もポールならではのアレンジ処理、「Promise To You Girl」も、ポールの魅力爆発です。そして「This Never Happned Before」と「Anyway」。ポールの新譜を聴いて、久しぶりに本当の感動を味わいました。
 特に「Anyway」。「強い愛があれば、決してしくじることはないよ」と「Anyway,Anyway」をリフレインしながら歌うポールに、もう会えないと思っていた「Silly Love Songの帝王」を見ました。「僕を愛しているのなら呼びかけておくれ/ずっとそれを待っていたんだ」という冒頭の歌詞に思わず「おかえりなさい!」と叫んでしまいました(もちろん心の中でですよ)。そして、その「Anyway」が終わってそのあと・・・・。
 全体的には派手さのないレコードで、ポールのパブリックイメージの華々しさはないですが、これは良いレコードです。始まったばかりの秋の風に相応しい、清々しい名作です。それにしても「Anyway」の美しさといったら・・・。Chaos & Creation in the Backyard (Bonus Dvd)