英国にも月見ってあるのかなあ、、、?

 今日は中秋の名月。僕の住んでいる地域は夜も雲一つなく見事な月が部屋を照らしています。月の明るい夜は、部屋の明かりをすべて落とすと、いかに月が明るいかわかります。
 少し前に朝日文庫から出た「R&BコンプリートCDガイド?ブルース・ロック・ヒップホップ・J‐POP(松村雄策さんの監修です)」でマイク・オールドフィールドの「Tublar Bells」が取り上げられていました。これには正直ビックリしたのですが、この本ではR&Bの解釈を従来のものよりも広く考えていて、彼の音楽の中にある、イギリス人としてもルーツ(ソウル)の探求という部分に注目して取り上げていたようです(すみません、今現物がどこかに行ってしまっていて、再読できないので記憶を頼りに書いています)。元祖宅録マルチプレイヤー、叙情派プログレの代表など、彼に貼られるレッテルは多いですが、上記のような切り口はあまりなかったので、はっと気づかされるものでもありました。ある意味で、この人の音楽ほどストレートに「英国の伝統的な音楽を現代的な意匠で演奏する」ものはないのかもしれません。
 「Tublar Bells」や「Ommadawn」など、初期の4枚が好きなファンの間では「その後はすべて駄作」と言われるほどスタイルを変えた「Platinum」以後の作品群、僕にはやっぱり魅力的です。というか、表面的なスタイルがどう変わろうと、マイクの音楽の核は少しも変わりません。哀愁を感じるメロディーと和声が、日本人の僕らにはとてもわかりやすい形で「イギリス的」な何かを感じさせます。
 そしてもう一つ、あまり語られませんが、マイクのギタリストとしての個性と才能は大変なものだと思っています。マルチプレイヤーなので、どんな楽器も操れる彼ですが、ギターを持ったときの輝きは別格的です。その音色も個性的で、やはりイギリス以外では考えられないフレーズ、音色だと思います。これも初期から現在まで変わらない特徴の一つです。丹念に聴けば、この人は、実はデビュー以来何も変わらずに英国的たたずまいで音楽を鳴らしているのです。むしろ初期の作品のように「誰でもわかる叙情性」を排した作品の方が、その独特の音楽をストレートに理解し楽しめるのかも知れませんね。
 今日のセレクトは「Crises」。大作、小品、インスト、唄入り、と彼の色々な側面がかいま見られる1枚ですが、そのどれもが一級の輝きを持っています。ジョン・アンダーソンもゲスト参加していますが、なにより重要なのはマギー・ライリーの唄ですね。この時期のマイクの音楽に欠かせない透明感のあるボーカル。この人の参加がなければ、あの名曲「Moonlight Shadow」はあれほどのものにはならなかったでしょう。この人の歌声が入ったマイクの曲は、僕には本当に強く「イギリス的意匠」の魅力を強く感じさせてくれるものです。
 月が中天にさしかかってきました。この部屋の窓から見える隣家の屋根が、月光で白く浮き立って見えます。どうかみなさま、月影にさらわれませんように。。。Crises