正しい「再結成」

 このクリーム再結成ライブ2枚組、まずライナーもなにも読まずに1回通して聴きました。そのあとゆっくり考えて、今度はライナーを読み、ジャケットを眺めながら聴きました。なるほど。
 今回の再結成、けっこうな大ニュースでしたが、僕個人はあまりすごいことだとは思いませんでした。あの3人が再び集まるところは見たいですが、いざ演奏するとなると、そんなに期待できないんじゃないかな?と考えたんです。みんなけっこうな年齢だし、やっぱり演奏そのものに期待が持てないと興味自体が小さくなってしまいます。
 というわけで、聴いてみました。さて、今の正直な気持ちですが、「これはこれでいい」です。悪く言っているわけではありません。なんだか、これはこれでいいんだ、という気持ちにさせるレコードでした。
 1回目に聴いた時は、正直戸惑いました。やっぱり演奏はそれなりでした。特にジンジャーのドラムとジャックのボーカル。辛口なコメントをつけようと思えば簡単につけられる感じです。一番現役度が高いのがクラプトンなのは当然ですが、この人の「場の空気を読まない」がんばりぶりは、かえって全体の演奏をちぐはぐなものにしている感じです(いっそ全員「枯れて」いてくれれば違う心地よさがあったと思うんですが)。これ、出さない方が伝説になったんじゃないかなあ?というのが最初の感想でした。
 でも2回目以後は少し違った気持ちで聴くことができました。演奏の出来はともかく、本当の肝は「3人が再び集まったこと」なんじゃないか、と思い直したんです。ライナーに「オリジナルメンバーが全員揃っている数少ない60年代組」という表現があってはっとしたんですが、確かにそうですね。しかももう全員60代。失礼な書き方ですが、これからは何があってもおかしくない年代です。そう考えたとき、この再結成が急に貴重に思えて、決断してくれた3人に対する感謝の気持ちが湧いてきたのです。なんだかんだいって僕もファンですから。
 普通のリユニオンだと、サポートメンバーが入ったりして演奏はそつなく再現するというものもあるのですが、クリームは3人だけで昔のままに演奏しています。そうなれば年齢的に昔の完全再現には及びません。でもそれを隠さずに演奏しているのは、ある意味、今の自分たちが集まることに真の意味があるんだという気持ちがあったからなんだと思います。そう思って聴いたとき、さっき書いたように「これはこれでいい」と感じたんです。
 個々の演奏には、もちろんオリジナルのような緊張感はありません。「Spoonful」なんて、同じフレーズのイントロなのに、最初あの曲とは気づかないほどでした。でも、そういう聴き方はしちゃいけません。オリジナルテイクと比較してもいい事はありません。
 あの3人が集まれて、またあの頃の曲を演奏する、それを楽しむという「長年のファンだけに許された」楽しみ方が正しいんだと思います。1人がんばっているクラプトンに対しても、賞賛でも批判もなく「あいかわらず肩の力が抜けてないねえ」という余裕の微笑みが相応しいでしょう。かつてのスーパーグループがオリジナルメンバーで再結成、そして、偽りなく今の演奏を聴かせる。これはある意味、正しい「再結成」だと思います。

 ちょっと長い追記
 クラプトンさん、あのジョージ・ハリソンの来日コンサートでも「ジョージのソロのすぐあとに思いっきり力を入れたソロを弾いてしまう」という行為をしていました。オープニングの「I Wont To Tell You」でもそれをやり、客の関心を全部持っていってしまいました。主役が誰でも主旨がどうでも、ギターを持つと力を抜くことができないんでしょうね。なんか彼らしいですね。Royal Albert Hall London May 2-3-5-6 2005 / リユニオン・ライヴ 05