実は「海洋地形学の物語」大好きなんです

 mixiというソーシャル・ネットワーキングサイトがあります。昔のパソ通みたいな「ほどよい内輪感」があって、僕もちょこちょこ日記など書いて、ささやかにうごめいています。
 その中に、コミュニティと呼ばれる、趣味の集まり(パソ通でいうところの会議室ですかね)があるのですが、そこにあるイエスのコミュニティに最近参加し始めました。で、今日はイエスの話題なんですが、その中で、ドラマーをのアラン・ホワイトのことを書いてみたいと思います。
 イエスに関して、僕がいつも不思議に思うのは、なんでみんな今だに「イエスのドラマーはビル・ブラッフォード」だと思っていて、それを基準にイエスを語るんだろうということです。確かにビルは才能あるミュージシャンで僕も好きですが(サインも持ってます)、イエスの音楽全体をそこから考えてはいけないだろうと思うんです。「繊細でテクニカルなビル、おおざっぱなアラン」なんて図式で批評するマスコミやファンは、いったい何を聴いているんだろうか?と。
 アランは間違いなく、素晴らしい技巧をもったドラマーで、しかも単なるリズムキーパー以上の「楽器を歌わせる」ことができる人だと思います。イエスの大作指向はビルの在籍時から始まっていましたが、「海洋地形学」「リレイヤー」といった作品、そしてそれに伴う大規模なコンサート活動を支えたのは、アランのレンジが広く、全体を支えられるドラミングでした。イエスは長い歴史で音楽性を変えてきましたが、どの時期にも、屋台骨を支えるリズムセクションが居続けてくれました。アランのドラムが、どのような音楽にもフレキシブルに対応できたため、リズムが古くさくならなかったのです。インタビューなどを読むと、作曲やアレンジにもずいぶん貢献しているようで、そういう部分がどうしてファンに正当に認められないのか不思議です。
 例の8人イエスのとき、「あなたの素晴らしい演奏を理解しないで隣でドラムをたたいているアランをどう思いますか?」というようなヨイショの質問に喜んで答えていたビルが、とても不快だったことを憶えています(例によって裏とってませんが、まあそんなようなことを話していました。出典は、記憶が確かなら「ロッキング・オン」です。インタビュアーの名前も記憶していますが、間違っていたらまずいのでふせておきます)。スタイルの違いはあるでしょうし、いろいろ自負やプライドもあるでしょう。しかし、仮にも(自分の後任とはいえ)あるバンドに長期間正式に在籍し、その音楽に貢献した人間に対してとる態度ではないだろうと思ったのです。そしてなにより不快だったのは、そのやりとりが、ファンのある部分を代弁しているに違いないということでした。
 今「長期間在籍」と書きましたが、アランはなんと、すでに30年以上もイエス一筋でがんばっているのです。この人の経歴(セッション歴)は、イエス加入前から非常に華々しいものでしたが、イエス加入後は、そういう「賃仕事」はほとんどなくなり、バンドだけに集中しています。僕はそういうことを評価したいし、そういうことに気をつけて耳を傾けることこそ音楽を愛することだと思っています。
 アランは今までに、ソロは「Ramshackled」1枚しか発表していません。これは、まあ、ありがちな「ジャズとフュージョンの中間を行く」感じのアルバムです(1曲ジョン・アンダーソンが参加していて、なかなかの味)。ものすごい名作ではないですが、それでいいんです。アランの代表作とは、イエスの代表作を指すのだと、僕は思っています。
 あと2日すると、またあの日がやってきます。そして、また「あの名曲」が聞こえてきます。その曲の、あのシンプルで的確なドラムを、実はアランが演奏しているのです。いつもオリジナルメンバーと比べられる「イエスの2代目ドラマー」の演奏は、そうとは知らないたくさんの人たちの耳に、心に届いているのです。

Ramshackled

Ramshackled