フーの「Song Is Over」のピアノは最高です!

 今日で仕事も終わり。明日から3日まではお休みです。ふう。今年は今の所属に4月に異動してきたばかりなのでいろいろ大変でしたが、なんとか年が越せそうです。

 というわけで、今日のお題はニッキー・ホプキンス。
 この人の名前を最初に知ったのは、もちろんビートルズの「Revolution」でした。あのレアでノイジーなギターとアレンジの中で、さらにそれを煽るようなエレクトリック・ピアノの早弾き。今でも印象的なあの演奏ですが、その時はただ名前を覚えただけで特別な感情はもちませんでした。だいたいまだ中学生だったし、セッションミュージシャンにまできちんと目が行き届くようになる前の話です。
 その後、だんだんレコードが増えていき、色々なアーチストのレコードで彼の名前を見かけるようになりました。僕の好きなフーやストーンズ、ジョンやジョージのアルバムでも彼はピアノを弾いていました。どこにいても彼のピアノはその曲に不可欠なパートとして鳴っていました。そして、第1期ジェフ・ベック・グループ。ここに彼の名前を見つけたときは「えっ、この人って単なる売れっ子セッションマンじゃないのか?」なんて間抜けなことを考えました。そこでの彼は、あのジェフ・ベックやロッドを向こうに回して、思い切りテンションの高いキーボードプレイを聴かせていました。考えてみれば「Revolution」の人ですからね。その後、クイック・シルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスを聴き、また違うこの人の魅力(このバンドでの彼は、キース・エマーソンに匹敵するテクニシャンぶりを発揮しています)も知りました。
 ご存じの方も多いかと思いますが、彼はその生涯にものすごい数のセッションをこなしました。ロックの名盤と言われるアルバムにも多数参加しています。それだけ信頼されたプレイヤーだったんでしょうね。よくこうしたベテランのセッションミュージシャンに対して「主役を引き立てる・出しゃばらない」みたいなほめ言葉がありますが(イアン・スチュアートなんかそんな感じですね)、ニッキーの場合は、決してそれだけの存在ではなく、逆に、彼のピアノがその曲なりアルバムを一段高いところに持ち上げているような存在感があります。少し前にこのブログに書いたフーの「By Numbers」なんて、ニッキーがいなかったらもう少しクオリティ下がってたんじゃないかと思うくらいバンドの演奏に貢献しています。しかもそれが、ソロをひけらかすような形ではないところがすごいんだと思います。いくぶん重い響きの彼のピアノは、ロックのビートや乗りに最高にフィットするのです。
 「The Tin Man Was a Dreamer」は彼のソロ・アルバム。正確には彼自身の名義のアルバムはこれだけではありませんが、まあ、代表作といって差し支えないでしょう。
 このレコードのような作品を聴き、愛でることができるのが年季の入ったロックファンの醍醐味です。基本的にはピアノ主体のロックンロールといった趣ですが、技術の高い演奏も聴きどころ(QSMSの再演「Edward」では華麗なテクニックを披露しています)。なんか先入観で「渋好み」のレコードかな?と思いますが、よく聴くと、けっこう派手(?)というか、アレンジも曲想も多彩で、この人の底力を感じます。意外にヘヴィーなアレンジの曲が多いのが印象的で、他人のレコードで演奏したときの重さは、この人の個性だったことがわかります。今は普通にCDで入手できるこのアルバム、長らく廃盤だったのを、ソニーが「廃盤になっているけど権利を持っているレコードで復刻して欲しいものはありますか?」みたいなリクエストをやったときに、第1位に輝いた名盤でもあります(僕もそれで入手して聴きました)。
 僕は行きませんでしたが、以前来日したアート・ガーファンクルのバックバンドのメンバーとしてニッキーは日本に来たことがありました。その時のメンバー紹介で、アートが「伝説のニッキー・ホプキンス!」と語ったというのを聞いたことがあります。そう、僕のようなロックファンにとって、ニッキーはまさに伝説のミュージシャンです。でも彼の音楽家としての真の大きさは、実はなかなかわかりにくいものです(活動の中心が他人のレコードへの参加ですからね)。このアルバムからは、彼の幅広い音楽性を感じることができると思います。