祝来日!、祈CD化!

こんなジャケットです

 ええっと。
 昨日の日記に「散財」と書きました。U2のチケットを買ってしまった、お金ないのに、という内容でした。
 ええっと。
 実は、もうひとつあったんです。
 同じチケットぴあで、もうひとつチケットを取ってしまったんです。それは、ジョン・アンダーソン。ご存知ですか?イエスのボーカルの人です。今回はソロで来日とのことで、イエスの他のメンバーは来ないようです。
 この人はもう絵に描いたような天衣無縫の人で、ルックスも(いい歳のくせに)まるで聖者のコスプレのような感じ。いつでもポジティブで、どんな時期のインタビューでも「今が最高さ!」と話す楽天家ぶり。冷静に見ればバンドを抜けたりメンバーをクビにしたり、けっこう生臭いこともしていて、トレヴァー・ラビンからは「ジョンは長期のツアーを要求した。金もうけになるから」なんて言われるような側面もあるようです。なのに不思議に、その振る舞いにも音楽にも、そういう感じが全然しません。得ですよねそういう性分って。ともかく、イエスの音楽が、時期による好き嫌いはあっても基本的な部分が変わらないのは、ジョンのあのキャラクターも理由になっているはずです。
 ジョンは現在まで、ヴァンゲリスとのコラボレーション以外にも、けっこうたくさんのソロ・アルバムを出しています。最近のものはもろヒーリング系というか、ロック的でないオーガニックなものが多く、今回の来日もその線でいくみたいです。声の質を考えるとその方向性がぴったりのような感じですが、以前のソロはけっこうロックテイストの感じられるものも多く、特に1988年の「In The City Of Angels」はジェフ・ポーカロやデビッド・ペイチが参加してモロ80年代ポップス。これがなかなかいい感じであなどれません。
 で、そのソロアルバムですが、なぜか1枚だけ、未CD化のものがあります。それが今日取り上げる「Animation」(日本盤はポリドールから出ていました)。
 これは1982年、イエスが一時解散していて、「Owner Of A Lonely Heart」で大ヒットを飛ばす直前に発表されたものです。参加ミュージシャンがなかなか豪華で、クレム・クレムソン、サイモン・フィリップス、イアン・ウォーレス、そしてジャック・ブルースなども参加しています。上に「ジョンのレコードにもロック的なものがある」と書きましたが、このアルバムがその最たるもので、引き締まってダイナミックな演奏は、ボーカリストのソロにバックをつけましたというだけではなく、はっきりとキャラクターを持っていて、このまんまバンドとしても成立しそうです。曲もいいものばかり、その後モロバレになるジョンのラテン趣味もその萌芽が見られて微笑ましいです。
 そして個人的には、オープニングを飾る「Olympia」が、もうものすごく大好きなんです。力強いバックの演奏に乗ってあのハイトーンで歌われるのは、もう両手いっぱい広げての「テクノロジー賛歌」。歌詞の中に「Sanyo」「Casio」「Sony」なんて単語も飛び出す、なんつーか、今どころか82年当時の中学生でももうちょっと批評的な視点だったぞ、というくらいの「新しい技術で未来は明るーい♪」という手放しの賞賛ぶりです。でも、これがいいんですよ。皮肉や冗談ではなく、ジョンの持ち味全開で、しかも演奏も上出来で、なによりジョンの歌がすばらしいです。エアロスミスジョー・ペリー・プロジェクトの「Let The Music Do The Talking」をグループで再録音したように、「Olympia」もぜひ、イエスで再録音してもらいたいものです。
 このアルバム、もしかしたらジョンのソロの中では(サンヒロー以外では)最高作ではないかと思うくらいの出来なのですが、ちょうどイエスも存在しなかった時期であり、しかもアナログ最終時期くらいの発表だったためか、今もCD化されていません。何年か前には、ジョンの公式サイトでCD 化のための署名運動までやっていたのに(署名しましたよ)、とんと噂を耳にしません。いいアルバムなのになあ。ソロで来日するわけなんだから、この際「来日記念盤」ということで、ぜひCD化してもらいたいもんです。よろしくお願いします、ポリドール様!