トリノ五輪でヨーコとガブリエル

 始まりましたね。トリノ五輪
 それほど詳しいわけでも好きなわけでもないんですけれど、やっぱり観てしまいます。まあ、小市民ということでここはひとつ(笑)。
 で、さすがに生中継ではなかったですが、開会式、観ました。
 僕はもうずっと「選手入場がメインじゃないなんておかしい」と思い続けているので、過剰な演出はあんまり興味がありません。観ているときは「おおっ」とか思うんですけど、感動とかはしないで、あくまで娯楽として受け止めています。
 なので今回一番驚いたのは、もちろんアノ場面です。突然オノ・ヨーコが登場して平和のメッセージを語ったところと、その後のピーター・ガブリエルによる「Imagine」。
 オリンピックの場で平和の呼びかけというのは、ある意味でベタすぎてそれほどのアピールはしないように思えるんですが、今回はそれなりにきちんと考えたんですね。反発する人もいると思うし、その人の気持ちもわかりますが、最近の世界情勢を考えたら、言わないよりは言ったほうがいいのかも知れません。前回の塩湖大会では、絶対言えなかったことだということを考えても、意義はあると思います。あのメッセージが、例えば欧米型の宗教バックグラウンド、価値観を持たない国や地域の人たちにどう聞こえたかも、ちょっと無責任な言い方ですが、興味あります。皮肉ではなく、まったく届かなかったとしても、伝えたということは、伝えないよりは「一歩前進」だと思います。
 えーっ、それでですね、本題に入ります。ほんとに驚きました、ピーター・ガブリエル(以下ピーガブ)の「Imagine」。これは良かったですね。最近の彼らしい、抑制の効いたアレンジと歌唱。朝に民放で観たときはワンコーラスだけしかオンエアしなかったんですけど、夜になってNHKで観たらちゃんとフルコーラス演奏していました。これ、CD化とかしないかなあ?
 これで思い出したんですが、ピーガブは、実はジェネシス脱退後のソロ活動を、ビートルズ・ナンバーのカヴァーから始めています。ご存知でしたか?
 1976年に、「All This And World War 2」という映画が作られ、そのサウンドトラックが発売されました。映画はタイトル通り、第二次世界大戦を題材にしたものなんですが、ふつうの作り方ではなく、過去に制作された二次大戦ものの劇映画や当時のニュースフィルムを繋げて、戦争の始まりから終りまでを綴ったというものです。面白くなさそうでしょ?僕は1回だけ深夜のテレビで観ましたが、面白くなかったです(笑)。何を言いたいのかわからないもので、一見の価値もない代物です(戦争を取り扱う以上避けられない、その戦争に対しての製作者の立場はまったくなく、単に時系列に沿って繋げて、それにナレーションを被せているだけ)。
 ところが僕は、その面白くなかった映画のサントラを持っています。なぜかというと、これ、全編が「ビートルズのカヴァー」で構成されているんです。アナログ盤2枚組のボリューム。しかもこれがものすごい。ロイ・ウッドの「Lovely Rita」、ジェフ・リンの「With A Little Help From My Friends〜Nowhere Man」、レオ・セイヤーの「I Am The Walrus」、キース・ムーンの「When I'm Sixty Four」(!!!)など、ものすごいメンツが参加しています。「i am sam」みたいな、録音するに当たっての意思統一などなかったようで、各自それぞれの持ち味で演奏していて、ほんとに驚きの連続です。
 で、この中にピーガブの「Strawberry Fields Forever」が収録されているんです。これがいいんです。あのトリッキーな名曲に対して、重厚なアレンジで取り組み、感情のこもったボーカルで重厚に歌い上げています。僕はこれを初めて聴いた当時は知らなかったのですが、これが彼にとって、ジェネシス脱退後の、ソロ活動の一番最初の仕事のひとつだったんだそうです。
 このサントラ、ワーナー・ブラザーズから発売されていますが、現在に至るまでCDになっていません。収録曲のいくつか(ロッドの「Get Back」など)はアーチスト個人のアルバムに収録されるという形でCD化されているものもありますが、ピーガブの苺畑やキースの64歳などを含めて、大部分がCD化されていません。もちろんアナログでも廃盤状態です。映画はどうでもいいですが、このサントラは埋もれてしまうには惜しい作品です。今日の「Imagine」がきっかけになって、彼の仕事が全面的にクローズアップされて、「第二次大戦サントラ」もCD化!なんてことに、、、なってくんないかなあ(苦笑)。
 ま、なにはともあれ、意外なところで意外なものが観られて得した1日でした。ありがとうヨーコとピーター。そして選手のみなさん健闘をお祈りしています。そして世界が平和になりますように。