でもやっぱり、ジャケ写はちょっとナニだなあ、、

 最近テレビからデビッド・ボウイの「Rebel Rebel」が聞えてきます。ボーダフォンのCMらしいです。ボウイのテイクではないようですが(誰が演奏してるかは未確認)。僕がこの曲初めて聴いたのは、ボウイのオリジナルではなくベイ・シティ・ローラーズのものでした(ついでにいうとビーチ・ボーイズの「Don't Worry Baby」もラズベリーズの「Let's Pretend」もロネッツの「Be My Baby」もローラーズで初体験でした)。
 僕にとってボウイというとまず最初に「Low」がきます。ベルリン時代のボウイの音は、ロックはおろか他の全ジャンルのどこにも類似の音楽が存在しない唯一のものだと今でも思っています。で、その次に好きな時期はいつかと言いますと、「Diamond Dogs」の時期になります。今の時点から見るとこの時期のボウイは様々な混乱や災難に見舞われ、経済的にも精神・肉体的にも限界に近かったようです。しかし音楽に限ってみると、「Ziggy」以後の彼は間違いなく最初のピークに向かっており、音源としては全く駄作がありません。
 「David Live」は1974年に発表されたライブ・アルバム。「Diamond Dogs」ツアーのフィラデルフィア公演を収録したものです。このアルバム、現在に至るまであまり好意的な批評をもらったことがないアルバムです。僕が持っているのは東芝EMIから1990年に出たCDなんですが、発表から15年以上も経っているのに、ライナーにあんまりいいことは書いてもらっていません。このライナーでは触れられていませんが、確かプロデュースをしたトニー・ヴィスコンティが「自分が手がけた中でもっとも中身のないもの」とコメントしていたこともありました。ボウイ自身も辛辣な発言をしています。
 肝心の音はというと、実はきちんと演奏していて、ボウイのボーカルも含めて別に非難するようなものでもありません。ただ、全体に漂うムードがどこかよそよそしい冷たいもので、それが当時のボウイを取り巻く空気を反映しているように感じられます。実は僕は、このアルバムを上記のCDでしか持っていません。ずっと以前、アナログで買おうとレコ屋で手に取ったことはあったのですが、そのとき、ジャケット写真のボウイが、なんだかとても不気味に思えて買わなかったのです。後になって聴いた実際の音も、そのジャケットのムードを証明しているような感じでした。
 でも僕はこのアルバムを愛聴しています。本人達には不本意だったのかも知れませんが、まさに「ライブ・アルバム」(そのときのアーチストの姿を正しく記録している)として、ボウイの姿を最も正しく映していると思うからです。数年後に発表される「Stage」での堂々とした姿ではありませんが、1人のアーチストが、まさに「生きている」様子が、非情に残酷ですがここに収められていると感じるのです。ヴィスコンティが薄っぺらと表した演奏も音も、かえって胸に迫ります。それは、ここには(図らずも)取り繕ったり水増しされることのないボウイがいるからです。
 年表で見ると、このあとボウイはソウルに近づき、大ヒットを飛ばし、ヨーロッパ回帰し、ベルリンに行ってイーノと知りあい、、と続くのです。僕にとっては、このあとボウイは誰も到達できない高みに上っていくということになるのですが、主観的にはボウイは、この「評価の低いライブアルバム」の時ですら「偉大なアーチスト」です。
 このアルバムの2曲目で「Rebel Rebel」が演奏されています。アルバムとは少し違うアレンジで(このコーラス入りのアレンジは、編集盤「Sound + Vision」でスタジオ録音のものが聴けます)、曲の出だしもカッコいいバージョンです。中古盤屋で安い出物を見つけた等、機会があったら敬遠せずにぜひ聴いてみてください。「完成された」ものではありませんが、ここでしか聴くことが出来ない「その時のアーチストの真の姿」が確かにあります。

David Live

David Live