アカデミーにまつわるちょっとした思い出話

 今日はアカデミー賞の授賞式ですね。いえ、特に映画マニアというわけではないんですが、なんとなく気になって、今年もテレビでチェックしています。ものすごく熱心ということではなく、のんびりとですが。あ、今パールマンが「作曲賞候補曲メドレー」というのを演奏しています。、、これ、すごくいいな。これ、発表しないかなあ。毎年思うんですが、この授賞式で披露される歌(プレゼンターや司会者の)やパフォーマンスをまとめてソフト化して売ってくれないですかねえ。
 むかし、主題歌賞のプレゼンターで出てきたリンゴ・スターともう一人、名前を忘れちゃったんですが俳優の男性が2人で「受賞できなくってもがっかりするなよ、受賞できなかったけどスタンダードになった歌はたくさんあるよ」と歌っていたのを憶えています。あと、2年前のオープニングで、司会のビリー・クリスタルが作品賞(だったよな)のノミネート作品を替え歌で紹介するのが傑作でした(ロード・オブ・ザ・リングを「My Favorite Things」で紹介するときに、最前列のジュリー・アンドリュースに向かって「ジュリー、歌う前に前もってお詫びしておきます」と言ってから始めたのがおかしかった)。受賞者のスピーチも含めて、みんなエンターテインメントのプロなんだなあ、と思います。はっきりいって、候補作のほとんどは見ていないですが、随所に一流の芸や、自分たちの芸術に対する愛情が感じられて、楽しく見られます。
 今日はそんなちょっとした記憶をひとつ。
 2002年の春にやった授賞式を観ていたときに、「ドキュメンタリー」部門の紹介というか、ドキュメンタリーフィルムを紹介するコーナーがありました。古今のドキュメンタリーをコラージュした映像に音楽が乗るというもので、映像は戦争や大きな社会の模様、マザー・テレサなどの社会的な活動をしている著名人の映像がランダムに移り変わるのですが、バックの音楽が、「Let It Be」だったのです。これが、なんだかオーケストラで大げさなアレンジを施されたもので、画面を観ながら「あんだこれ?もっとましなアレンジなかったの?」と思っていたのですが、、、。
 オリジナルでいうと間奏に入るところ、画面があの「アポロの打ち上げシーン」になったところで突然テイクが、オリジナルの「Let It Be」(つまり、ビートルズのものです)に切り替わったんです。「えっ」と思った瞬間、画面にはジョージ・ハリスンがギターソロを弾く姿が!会場は割れんばかりの喝采に包まれました。
 そうか!そのときようやく僕にもわかりました。このフィルムを編集した人たちは、ここにジョージのシーンを登場させることで、その前年に亡くなったジョージへの追悼の意を表したんです。映画「Let It Be」はドキュメンタリーでしたから、コーナーの趣旨にもぴったりです。そして、ハンドメイド・フィルムなどで映画界に貢献したジョージに対しての表敬の意味も盛り込んでいたのです(実はこの日は、「メモリアル」コーナーでもジョージが紹介されていました)。曲が突然切り替わる(確かキーも違ったと思います)のも、観ているひとをそこではっとさせる演出だったに違いありません。改めてジョージの偉大さと、集めている敬意を感じました。
 この年はちょうど9.11の翌年で、プレゼンター、司会者、受賞者の言葉の端々に愛国心を強調するような内容が多かったんですが、それよりもジョージが登場したそのシーンの方が印象的で、そして製作者の愛情と敬意が感じられるものでした。
 今年は社会的な作品が多くノミネートされ、いろいろな話がでています。実は僕はもう結果を知っているのですが、ずっとあとになって、「あの頃はこんな題材で映画をつくって、それで大騒ぎだったんだなあ」という時代が来て欲しいと思います。