ライヴレポ ローリング・ストーンズ 3月24日東京ドーム

 22日は2階席で音も視界も良くなかったです。それでも感動できたのだから素晴らしいコンサートでしたが、普通に考えれば1階席1塁側、前方のステージもよく見えてセンターステージにも近い24日はより感動できるはずです。同じ内容なら、そういう事がいえるはずです。
 で、結論をいうと24日の方に感動したのですが、それはそんな比較の問題ではありませんでした。僕はこの日、とんでもないコンサートを体験したと思っています。
 1回目よりも少し遅れて8時15分過ぎくらいに客電が消え、コンサート開始。前々日に観ていてやや余裕を持っていたはずの僕を、いきなり「Start Me Up」のあのギターが襲ってきました。今日はコレで来たか!と思うまもなく、2曲目はなんと1日目には演らなかった「It's Only Rock'n'Roll」(この曲、1番のところ、キースが思いっきりコードを間違えてましたね。まあご愛嬌ということで)。
 ニューアルバムからの1曲を挟んで、次はなんと「BItch」、そして「Tumbling Dice」の次はミックのキーボードとファルセットで「Worried About You」。ここまでで1日目と曲目曲順ともまったく違う構成です。「BItch」「Dice」と続いたのにはもう興奮も限界というくらい高揚してしまいました。ところが!
 この日のストーンズはこんなものではなかったのです。突然チャーリーのドラムがドカドカと鳴り始めました。一瞬「えっ?ドラムソロ?」と思った直後に始まったのは「Midnight Rambler」!
 これがちょっと信じられない演奏でした。早めのテンポ、高テンションで進んでいく演奏を牽引しているのはチャーリーなんです。土台を支えてるんじゃないですよ。演奏家全員を引っ張っているんです。この曲は長時間のブルースナンバーで、途中ブレイクやハープのソロなどもあるのですが、とにかくドラムが休みなく強烈な8ビートを叩き続けるので、延々と演奏が、テンションを保ったまま終わらないのです。他のメンバーはみんな、チャーリーを追いかけている感じ、ホントよ。昨日の日記に「チャーリーが好調だった」と書きましたが、24日の中盤の演奏は本当に神がかったようでした。とても病気だったなんて信じられません。想像してください、あの英国紳士のような容貌のチャーリーが、ミックやキースを「掴んで振り回してる」さまを。チケット代17500円、まったく高くないです。
 そしてその至福の「真夜中の彷徨者」が終り、大歓声の中聞えてくるのは、、、「Gimme Shelter」!!なんだかさっきから「!」を連発していますが、それくらいの興奮だったのです。「BItch」から「Shelter」までの数曲は、僕にとって至福の時間でした。もちろん会場も大歓声に包まれていました
 キースのソロコーナーはいつもと同じに味のある演奏と歌。ニューアルバムからの曲は渋いギターとボーカルで、僕は少しレナード・コーエンを思い出しました。「Happy」でのロニーのスティールギターもいい感じ。
 それから例のセンターステージへ。僕はこの日、けっこう近くで観られたのですが、1回目の「Get Off Of My Cloud」の代わりに「You Got Me Rocking」。狭いステージでミック、キース、ロニーが動き回って観客に手を振っています。
 「Honky tonk Women」を演奏しながら、巨大な花柄ベロマークに迎えられて前方ステージに戻った後は「誰にも文句を言わせない」代表曲のオンパレード。アンコールは「一緒に歌って!」というアナウンスで「You Can't Always Get What You Want」そして「Satisfaction」!えーっ、ここまでやってまだ「満足できないぜ」っていうんですか!?はっきり言います。もう満足を通り越して、なんだかわからないです。それくらいのコンサートでした。
 僕は計算すると、もう10回を超える回数ストーンズを観ています(全部東京と横浜ですが)。でも、24日のコンサートは、何かに比べることなど出来ないようなすばらしいものでした。もちろん演奏のレベルも高かったし、演出も良かったです。でもそれよりもなによりも僕が言いたいのは、ストーンズの演奏に感じられる「熱気」です。全然枯れていないし、全然ルーチンでもない、本物の音楽。これです。
 何度も書きましたが、今回のツアーはいつもよりも強く「最後か?」と言われることが多いです。年齢のこと、病気のこと。あの規模の巡業をし続けることは確かに負担でしょう。それはわかります。
 でも、僕は今思っています。次も必ずあると。根拠は、、24日のコンサートです。彼らには僕たちの常識や思い込みは通用しないんです。あの「Midnight Rambler」のとんでもない演奏を観た・聴いたあとで「もう限界じゃないか」なんて言えません。あれができてしまう彼らは、きっと何年か後にまた戻ってくるでしょう。もし年齢が関係あるとしたら、時間があくのではなく、「俺達ももう歳だから早めにツアーに出ようぜ」と言って、いつもよりも短いインターバルで戻ってくるかもしれないくらいのものです。
 今回彼らは、西日本に行きませんでした。でも、行かなかった地域のみなさんご安心を。彼らはきっと戻ってきます。コレが最後なんかじゃありません。ストーンズはまだ坂を登っているのです。次に来るときは、きっと日本中のドームを制覇することでしょう。その日まで、僕たちファンも枯れたりくたびれたりしているひまはありません。僕は24日以来、ずっとストーンズを聴いています。次に来たときに、どの曲を演ってもちゃんと一緒に歌って踊れるように。
 最後にひとこと。ミック、キース、ロニー、チャーリー、素晴らしいコンサートをありがとう!