そういえばサインもらった事があります、この人に

 今日の職場は暑かった。冬は寒いし夏は暑い。もう覚悟はしていますが、さすがに5月に暑いとへこみますね。外出先から帰ってきた同僚が「外の方が風がある分さわやかです」とか話していました。そうか、今はそういう季節だなあ。僕は今の所属に来る前(2年前まで)の所属では、仕事の関係で自分で時間をつくって外出が出来ました。公園や人の集まるスポットの模様を記録したりちょこっと写真を撮ったりするので、この季節に大きな公園で花の写真など撮りに行けました。そのころは一種のルーチンで、面倒になると後輩に任せたりしていましたが、今ごろそれが悔やまれます。今の業務は基本的に所属のビル内なので、季節感があんまりなんです。毎年今ごろ行っていた公園には大きめのバラ園がありました。今ごろは花盛りなんだろうなあ。
 今日聴いていたのは久しぶりにトッド・ラングレン「Todd」。実はこれ、僕が初めて買ったトッドのアルバムです。だから僕にとっては、トッドのスタンダードがこれになるのです。なんですが、初めて聴いた時から、これはちょっと一筋縄ではいかないなあという感想でした。なにしろ音が厚く、整理されていない感じです。曲調もバラード、ハードロック、可愛らしいポップス調からわかわかんないシンセ音の洪水みたいなものまであって、どれがこの人の本質なのかすぐにはわかりませんでした。その後枚数を重ねていく中で、僕なりにこの人の音楽は理解したつもりです。「Something/Anything」も聴きました。コンサートにも行きました。この人の、フィリーソウルをこよなく愛する永遠のポップメイカー、ビートルズの遺伝子を持ったイノベイター、最高のギタリストといういろいろな面を今では知っています。
 そうした中で今これを聴いてみると、いろんなことがわかります。この人はもともと評価の高い人で、すばらしいメロディも書ける人です。例えば「Hello It's Me」や「I Saw The Light」路線でずっと行けば、そのままスターになれた人でしょう。でもそうはしなかった。「Todd」は大好きなアルバムですが、上にも書いたように聴きにくいものでもあります。初心者のファン、あまり熱心でないファンには「?」という人も多いです。でもそれこそがトッドの目指す方向だったんだと今はわかりますね。この人は進歩の止まったスターになどなりたくはなかった。いつまでも自分の音楽を進歩させたい、評価とセールスの安定ではなく不安定でも自分のやりたい音楽をやりたい、そういうことだったんでしょう。
 そしてなにより嬉しいのは、この人の音楽に、よくある「わかる人だけわかってくれればいい」という後ろ向きな姿勢がないということです。セールスには浮き沈みがありましたが、決して「マニアに受けたアルバムパート2」みたいなレコードは作っていません。いつでも全ての聴き手を相手にしている、そういう感じ。よくこの人の表面だけを聴いて「世捨て人」呼ばわりする人もいますが(「ミンク・ホロウ」なんてもろですが)、とんでもない、安易に流行を取り入れなかっただけで、この人が一度でもそんな音楽を作ったことはないでしょう。あまりにその姿勢が厳しいので、時として熱心なファンもついていけないときがあるほどです。
 「Todd」は、その目まぐるしく変わる曲調や音の中に「予想もつかない旅路に、君も一緒に来てくれるかい」と言われているようです。ラストの「Sons Of 1984」の、どんな事が起ころうとも未来を祝福しようとするその内容は、同時にトッドの、自分自身に対する鼓舞だったのかもしれません。
「Todd」のなかに「Dream Goes On Forever」という短い曲があります。「たくさんの兵士が命を落とし、たくさんの恋が破れていこうとも、僕の夢は永遠に終わらない」という内容の歌です。切ないメロディとトッドの切実な感じの歌声が印象的なこの曲の最後に、トッドはこう唄っています「君が遠く去ってしまっても、僕の夢は永遠に終わらない/いつの日か君もこの夢に着てくれると信じているよ/そうでなかったらこの世に夢なんてない」。この歌はトッドの決心を唄ったものだと僕には思えます。たくさんある彼の名曲の中で、一番好きな曲です。
 追記:最近のトッドの活動で一番わからないのが、例のニュー・カーズへの参加(というより、リック・オケイセックの後釜)ですね。音はまだ聴いていないんですが、どういうことなんでしょう。いや。クイーンとポール・ロジャーズみたいな例もあるから即断は禁物ですが、、、。

Todd

Todd