老後の楽しみ(ビートルズ以外で)

shiropp2006-06-28

 すみません。今日はなんだか持ち物自慢みたいな日記です。
 何度か書いているように、僕はロックファンとしての年月が長く、それ以外の音楽をちゃんと聴くのが遅かった人間です(ちょこっとだけならジャズもクラシックも中学から聴いていましたが)。特にいわゆる黒人音楽、ソウルやR&B、ファンク系に対してはオクテでした。自分でも不思議ですが、なんだか手が出なかったんです。もちろん全然興味がなかったわけではなく、EWFやスティービーなどは早くから聴いていましたし、ちょっとニュアンスは変わりますがボブ・マーリーなども好きでした。聴けば「いいなあ」と思うんですが、あの世界、ものすごく深く広く感じられて、まだロックも一通り聴いていないのに入り込んだら、どっちも中途半端になっちゃうんじゃないかと思って躊躇していたんです。なんか書きながら「そんなに謙虚な人間だったかな、自分?」とか思いますが、当時はそう思っていました。
 そんなわけで、今日取り上げるモータウンも、ちゃんと聴き始めたのはたぶん20歳を越えてから(CD時代になってから)だと思います。で、今どのくらい聴き込んだのかというと、これがなんかお寒い状況で、いくつかの編集モノを除くと、スティービーやマーヴィン、シュープリームスのものなど有名どころがチョボチョボという感じでした(曲単位で言えばアレとかコレとか、名曲ぞろいですが)。言いわけするわけじゃないんですが、正直どこから聴いていいんだか、わかんなかったんですよね。今もそうですが、聴き始めた当時、モータウンの詳しいバイオやディスコグラフィーはなかなか見る事ができなくて、全貌がつかみにくいんです。アーチストの名前もやたら登場するし。考えてみたらモータウンってグループではなくてレコード会社なんですから当然なんですが、そのへんの「全体がよく見渡せない」感じが、編集ものばかり多いということも相まって、もう一つのめり込めなかった原因かも知れません。
 で、今僕がモータウンを「航海」のするためにものすごく珍重しているアイテムがあります。「The Complete Motown Singles」というコンピレーションです。
 これは文字通り、モータウンとその関連レーベルの発売したシングルを、AB面ともに年代順に収録したボックスで、「Vol.1」だけが1959年から61年まで、次からは1年区切りでそれぞれ4〜5枚セットになっています。アナログのシングル盤と同じサイズのハードカヴァーブックレットがついていて、ものすごく詳細な解説つき(英文なんでちゃんと読んでいませんが)。おまけに、各セットごと、本物のシングル盤が表紙に入っているという豪華版です(「1」ではFab4もカヴァーした「Money」が入っていました)。現在「4」(1964年)まで出ていて、僕は「3」(1963)まで持っています。「1」にはあの「Please Mr.Postman」、「2」には「You've Really Got Hold On Me」、「3」ではフーのファンにはおなじみの「Heat Wave」が入っています。
 このボックスを聴くと、モータウンが当初からいわゆる「モータウンサウンド」を持っていたのではなく、その初期は想像以上に「もろR&B」なサウンドだったということがわかります。ちなみにビートルズがカヴァーしたモータウンナンバーである上記3曲は、いずれもモータウンの歴史ではごく初期に位置するもので、そこからも彼ら(Fab4ね)の「アメリカ黒人音楽オタク」ぶりが窺えます。
 こんな便利で豪華なコンピが出てくれて、これで僕のモータウン理解もぐっと深まる!と当初は思っていました。いましたが、、、。
 ガーッ!多すぎる!曲が!とにかくCD1枚に25曲以上が入っていて、それが4枚とか5枚とかのセットなので、今僕が持っているだけでも400曲近く入っていて、しかもこれでまだ1963年までしかないというとんでもないボリューム!だから聴いていても、やっぱり全貌つかめません。聴くところによるとこのセット、1970年あたりまで続いて、最終的には10セットだか12セットだかで完結するそう。単順に1セット100曲だったとしても、、、。えー!そんなに!?しかもこれはあくまでシングルのコンピなので、アルバムまで考えると、、モータウン聴いているうちに人生が終わるかも、、、!?
 僕の友人で大変な読書家がいます。その友人がずっと昔からギボンズの「ローマ帝国衰亡史」を「老後の楽しみに」と言って、全巻をハードカバーで揃えて、読まずに置いています。読もうと思えば読めてしまうものですが、それは後にとってあるんだそうです。
 今、「Vol.3」まで手元にあり、ずっしりと重いこの未完の全集を眺めながら考えています。僕もそうしようかな?全巻揃って、社会人をリタイアしたら、ゆっくり毎日楽しもうかな?でも、モータウンの音楽は、そんなふうに楽しめるほどの高い質を持ったものだなあと、iPodでランダム再生しながら思っています。
 追記:この「The Complete Motown Singles」のシリーズは、「Hip-O Select」というアメリカの通販専門サイトで購入できます。日本の店頭でも見た事がありますが、変なプレミアがついていたので、ここで買うのがいいと思います。