もうすぐ出るアルバムに向けて(フーとビートルズ)

 今月は2組のベテランアーチストの「思いもよらなかった」新譜が出ます。そのことについて。
 ザ・フーの"ニューアルバム"「Endless Wire」は、スタジオのフルアルバムとしては24年ぶり、前作は何かというとあの「It's Hard」ということになります。振り返って思い出すと、1982年に「It's Hard」が出た時は、ちょうどピートの「フー解散宣言」が出て、それに伴うサヨナラ北米ツアーがあったときで(ツアーの模様は映像・音源ともに既発表で、熱心なファンには賛否両論のものですね)、ファンとしてはとても悲しい時期でした。キースが亡くなった後の2枚のアルバムもなにかと全盛期と比べられていて(僕はどちらもそれなりに好きです。そのうち書いてみたいと思います)、総合すると、フーについてはあまりいいニュースのなかった時期でした。その後の何回かの「再結成ツアー」も「金もうけ」とか言われて、、、。
 そう、僕たち「未来人」ファンはもう知っています。その後の腰を据えた活動と定期的ツアーの充実、そしてとうとう実現した日本公演での現役ぶり。突然のジョンの訃報さえ乗り越えての彼らには、24年前の「疲れ」は感じられません。今回のアルバム、僕はまだ先行シングルしか聴いておらず、その限りでは判断保留(保留というのは、シングルの演奏がけっこうラフだったのと完奏バージョンではなかったために判断がつかないということです)なんですが、期待はしています。先行シングルには「A Mini Opera」とクレジットされていました。フー(ピート)でオペラといえばアレとかコレとか、控えめに表現しても「力作」揃いですから、気持ちも昂ぶってきます。僕の期待に応えてくれるかどうかはともかく、少なくとも、現在の彼らの直球勝負が聴けることだけは間違いないでしょう。どうもザックもいるみたいだし。実は今「It's Hard」のタイトルナンバーを聴きながらこれを書いているのですが、「神様なんとかしてください/この人生は僕には過酷過ぎます」と歌わずにいられなかったあのころから四半世紀、まさかこんな日々が来るなんて誰が想像したでしょう。願わくば、数日後この期待が報われますように。
 ビートルズの新譜(?)「Love」が下旬に発表されるそうです。これも詳細はファンのみなさんご存じかと思いますが、「シルク・ド・ソレイユ」のために楽曲が使用されていて、しかもそれが従来許されていなかったリミックスということで、ファンにとっては大きな話題になっています(公式な解説ではコラボレーションと表現されていますが、それほど綿密なものか正直疑問です)。
 で、僕の現在の気持ちですが、正直「うーん」というものです。断っておきますが、買うか買わないかと問われれば「コピーコントロールじゃなかったら必ず買う」です。聴きたい気持ちに偽りはありません。僕はこの手の「リミックスもの、メガミックスもの」はけっこう好きですので、ものがビートルズならなおさら興味はあります。制作に携わったのがジョージ・マーティン親子(!?)というところも面白いなあと思います。なによりも「音質が大幅に向上!」というところは、ファンにとっては一種の悲願ですから。
 なんですが、そういう、ファン心理丸出しの部分はさておき、やっぱりどうも疑問というか、不思議に思う事があります。なんでまた「シルク・ド・ソレイユ」がらみで、マスターテープからあれこれさせるような大プロジェクトを始めたんだろうということ、がよくわかりません。僕は「Yellow Submarine Songtrack」で音質向上(と「Only A Northern Song」のステレオ化!)が実現した時に大喝采を送った人間です。ステレオ定位までいじったものでしたけれど、僕はああいう形で、ある意味「純粋」に音質向上を図ったものは本当に嬉しかったし、事実今でも愛聴しています。でもそれは、いかにDVDとの同時作業だったとはいえ、あくまで「ビートルズの楽曲の音質をを現代の技術で向上させ、ファンに届ける」ものだったからです。ジョージ・マーティンが関わっていない事さえ気になりませんでした。
 今回のプロジェクトに関しては、実は最初にニュースが入ってきたときに某SNSで少し文章を書いたのですが、大意は「これはこれでいいけれど、その前にやる事があるでしょ?まずオリジナル楽曲のリマスターやってくれよ」というものでした。この気持ちから変わりありません。今はかなりな「クラシック・ロック」がリマスターされていて、新しいファンのもとにも届いています。なんでそれを先にやらないのか?
 もしも今回の「新譜」が、オリジナルのリマスター・発表後であったなら、僕は疑問も持たず、こんな文章は書かなかったと思います。でもやっぱり、今回のような形態での発表の前に、やるべきことがあったと考えています。それでも僕は、いや、僕のようなファンは発売日を待ち、そしてレジに持っていくんでしょうね。うーん、これについても書きたい事があるんですが、それは実物の「Love」を入手して聴いたときに書く事になるかと思います。