ジェームズ・ブラウン死去

 最初ネットのニュースで知ったすぐあとにニューヨーク・タイムズのサイトで検索してもなんのニュースもヒットしなかったので「ひょっとしてガセか?そうだよな、あの人が死ぬなんてないよな」とちょっと安心して、念のためとCNNのサイトに行ったら、トップに写真が出ていました。ジェームズ・ブラウン死去。
 僕がその存在を知ったときには、当然ですがこの人はものすごい巨人でした。その後ポップスファンとして年期が入っていっても、決してこの人の存在が軽くなるなんてことはなく、ずっと巨大なままでしたが、それにしても、不思議な「軽さ」というかいい意味での「いかがわしさ」がただよっている人で、そのおかげか、他のソウル巨星(オーティスとか、レイとか)に比べてカジュアルに楽しむことができました。ちゃんと考えてみたら、あの人くらいある時期「黒人アーチストであること」に自覚的だった人はいないはずで、そういう評価もあるはずなのに、思い出すのは「黒人解放のイノベイター」(そういう評価も高いはずですよね)というよりも「ゲロッパ!」と叫んで力一杯歌い踊るファンクおじさんです。
 ぼく90年代に入ってから一度だけ、横浜スタジアムでJBのコンサートを観ていますが、もうコテコテのソウル・ショーで、そういうものは「歴史もの」だと思っていた僕のような「ベテラン音楽ファン」(笑)にとってはものすごく新鮮でした。そして、一歩間違えばただの「懐古ショー」的になっていしますところを、ほとんど力づくで「現役バリバリ」のエンターテイメントに仕上げてしまうJBの力量にも感服しました。ステージの上でもずっと踊っていて、ものすごい体力だなあと感心したのも覚えています。
 僕のような人間にとって、JBのファンクというとゼップの「The Crunge」を思い出しますが、あのゼップのリズムセクションでさえかなわない腰の強さは、今考えると脅威です(ゼップの場合は、かなわないというところを逆手に取って違う表現を実現しているわけですが)。本当にエネルギッシュな人でしたよね。訃報が届くなんて、今でも信じられません。
 今聴いているのは「James Brown's Funky Christmas」。クリスマス・レコードなのでいくぶん落ち着いた曲もありますが、やっぱりJBはJBらしい、ファンクのビートに首までつかって、気持ち良さそうに歌っています。クリスマスの季節にはいつもかけるアルバムですが、まさかこんな巡り会わせになるとは思いませんでした。
 JBのような人は、簡単に「こういう人」という、自分が知っている範囲だけの評価ではなく、いろいろな側面は個性をじっくり考えなければならないのかも知れません。
 こうして書いていて、この人の多面性に改めて気づかされます。疲れることを知らないかのように歌い続けた巨人。初めてゆっくり休めるのかも知れませんね。ご冥福をお祈りします。
 でもなんか、まだちょっと信じられません。本当かな?あのJBが逝くなんて?誰か嘘だよって言ってほしいなあ。追悼文なんて似合わないよ、あの人に。