誕生日おめでとう、ジョージ

 今日はジョージ・ハリスンの誕生日です。お世話になっている「ビートルズ探検隊」のみなさんによると、本当の誕生日は前日で、出生届が出されたのが25日だというのが真相らしいです。生きていればジョージも64歳だったはずですね。
 ジョージのレコードの評価というのは、一般的に(例えばディスコグラフィー本など)言われていることとファンの思いがずれることがけっこうある、と思っています。僕だけかな?ジョンやポールではあまり感じませんし、気にする事もないのかも知れませんが、どうもそう感じてしまいます。例えば「Gone Troppo」、これくらい酷評された「ビートルズ関連作品」はなかったんでないかな?というものですし、事実売れなかった作品ですが、聴いてみるととても楽しい。別に曲の質も低くないし、演奏もだれてない。1曲目の「Wake Up My Love」のノリのよさなんて最高です。確かにジョンやポールのような迫力や「強烈なカラー」はないですが、ジョージにはジョージの、独特な魅力があるんですから、そういう基準で聴いてもらいたいですね。誰に言ってるんでしょ、僕?(笑)。
 「Extra Texture」は、ジョージのアップル時代最後の作品(ベスト除く)。前作の「Dark Horse」と全米ツアーがもうひとつの評価だったのを挽回しなければならなかったのに、結果的にそれは果たせないことにされています。このころのジョージには向かい風が吹いていて、ちょうどレコード会社を移籍する関係でA&Mともめていたあたりじゃなかったかな?「My Sweet Lord」の盗作裁判に負けたのも、この時期だったかと記憶しています(翌年あたりだったかも?)。A面1曲目、とてもコマーシャルな「You」を除くと、どちらかといえば地味な曲が並んでいて、きっとそのへんも低い評価の原因なんでしょうね。
 でも、僕は断言します。これはいい作品です。ジョージはジョンやポールのような、まったくなにも意図せずにも自分のカラーが強く印象づけられるタイプの才能ではありません。ジョージの魅力は、ある意味でその「地味で淡い」カラーにあるんです。その魅力を基準にして聴けば、この作品にも味わいがあることがわかります。「Dark Horse」のような時間に追われる感じはなく、むしろ業界の性急さにあえて挑戦するかのようにゆったりとしています。しかも個々の曲は決してのんびりしておらず、どれも心地よい緊張感を持っています。僕のこの感想は、世評ともっとも大きく乖離するところですので、これをお読みのみなさんがどう思われるのか興味があり、またちょっと不安なところでもありますが、僕にとっては譲れないところです。ジョージのギターの音色も前作、前々作より洗練されていて、よく唄っています。
 このアルバムは、アップルからの最後の作品といういことで、レーベルのリンゴマークが芯だけになっています。そんなエピソードも手伝って、低い評価に甘んじているんだとしたら本当にもったいないです。僕はこの作品を、あの名作「慈愛の輝き」に直接連なる作品だとまじめに思っていますし、今までもこれからもずっと愛聴盤であり続けると思っています。もしも今まで聴く機会がなかった方、持っているけれどあんまり聴いてなかったという方がいらっしゃたら、ぜひ聴いてみてください。ジョージの作品を愛するみなさんなら、きっとわかってもらえる名作だと思います。
 ジョージ、誕生日おめでとう。いつも素晴らしい音楽をありがとう。今部屋にはあなたの「Can’t Stop Thinking About You」が流れています。部屋の空気も僕の気持ちも温かくなるような歌声です。

ジョージ・ハリスン帝国

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