宿痾「ロックマネ病」(笑)

 購読はしていませんが読売新聞のサイトはときどき覗きます。以前「ビートルズを知ったきっかけは?」などのトピックが立つ(こともある。大部分はもっと女性向きの悩み相談や情報交換です)「発言小町」、そして「人生相談」のコーナーをよく見ます。「人生相談」はその名のとおり、人生や人間関係、恋愛や金銭問題など、様々な相談が寄せられ、それについて専門家や作家などが回答しています。このコーナー(本紙では家庭欄の囲み記事です)には時々「え?」と思うような不思議な悩みが登場する事があります。ずっと以前に「カマキリが恐くて仕方がないんです」というものがあって驚いたことがあります(内容は、子どもの頃の刷り込みで怖い、というもので、回答は非常に真面目で好感のもてるものでした)。他人様の悩みを覗いておもしろがるというのは悪趣味ですが、悩み事のどこに問題があり、どのように考えて解決につなげていくのか、回答内容も含めて勉強になります。
 で、今日(6月12日付け)に、ある悩みが掲載されました(こちらをクリック)
 大変不謹慎ながら、僕は大笑いさせていただきました。60代というこの男性の方は若い頃に目の当たりにした小沢征爾の音楽と指揮振りに感激し、それ以来音楽を聴くとタクトを振るまねをして陶酔していた、しかし階下に住む人から「うるさい」と苦情を言われて悩んでいる、というものです。これに対して精神科医の方が回答されていますが、この回答がふるっています。「そんな音楽の楽しみ方があるなんて、なんてユニークなんでしょう」「この楽しみを止めるべきではないですよ」と暖かい理解を示したうえで、「ご自分が1階に住めば解決ですよ」と、実に的確なアドバイスをしています(この表現は皮肉ではありません。このようなアドバイスは大変現実的で正しいと思います)。
 ですが僕が大笑いしたのはもうひとつの解決方法として提案されたものです。それは「イメージするのが小沢だからうるさくなってしまうんですよ。もう少し静かな指揮者をマネるのはいかがですか?」というもの。例として挙げられたのがカール・ベーム(ちなみに回答者はベームの名前の後に『(ほとんど動きませんよね)』なんて書いています!)。回答は「躍動感のある指揮者も良いですが、抑制の効いた内面的な指揮もマネるに足ると思うんですが。」という文章で結ばれています。なんか、音楽ファンの琴線にふれるいい回答だなあ。相談者にとっても、「この回答者は自分の趣味に理解があるだけでなく共通の知識や造詣がある」ということで、信頼関係が築けそうです。
 さて、この内容自体もとても面白く(バカにしているわけではないです。心から音楽にのめり込んで陶酔したい相談者と、それを受け入れ、誰も傷つかないように上手に解決を図る専門家のやりとりは、多くの示唆に富んでいると思います)、これだけでも十分日記ネタにはなりますが、僕が「読んで大笑いした」のは別な理由です。
 それはですね、えーっと、僕にも憶えがあるんです(笑)。僕もレコードかけながらやってました、いえ、やってます今でも(笑)。ミュージシャンなりきり(笑)。僕の場合プレイヤーというよりボーカリストのことが多いですね。エアロスミスのスティーブンとかクィーンのフレディとかミック・ジャガーとか(笑)。一番の「お気に入り」はもちろん、ザ・フーロジャー・ダルトリーです。これは燃えます!あのマイク振り回しをマネるんです。フーの場合はピートのマネもするので忙しい忙しい(笑)。「Who Are You」では(82年のアメリカツアーをマネて)ランニングポーズまでやっていた(これはさすがに結婚前)ので、さぞや家族はうるさかったと思います(独身時代はマネるだけではなく大声で歌っていたので、なおさらですね)。部屋は閉め切って、汗びっしょりでやってましたよ(笑)。指揮者どころではないですね。この相談者なんて全然問題なしだ、僕に比べたら。そんなふうに思ったんです。
 この相談者は、ご自分の趣味を「私の“宿痾(しゅくあ)(持病)”である「指揮マネ病」」と表現されていますが(素晴らしいネーミング)、そのセンでいきますと僕の「宿痾」は、「ロックマネ病」とでも呼ぶんでしょうね(笑)。この相談者も僕も、回りに気を使いながらこれからも音楽に陶酔して、楽しい日々を過ごしていきたいものです。

Who Are You

Who Are You