円谷プロ買収への雑感

 円谷プロダクションがCM制作やCGなどの新興企業に買収されたというニュースが入りました。とはいっても僕はまだきちんと情報を得ていないんで詳細はわからないんですが、買収自体は間違いないようです。KENNYさんのブログでも取り上げられていて、そこでは旧経営法に対する辛辣な批判と、ミニチュアセットではなくCGを使ってリアルな合成を行うというような話しも出ていたということです(上の2つのコメントはニュースサイトでも確認しました)。
 円谷プロは一種の同族経営企業であり、特有の経営上の問題を抱えていたことは容易に想像がつきますので、(企業である以上)買収され、そこでコンフリクトが起こること自体は「想定内」のことでしょう。ちょっと辛辣すぎるかもしれませんが。
 しかし、もうひとつの方にはちょっと引っかかるものがありました。もちろん新しい技術で見事な映像が見られるのはうれしいですが、「ミニチュアはチャチだ」「それを喜ぶのは少数のマニアだけ」(ちょっと意訳)というのは、円谷プロの作品を愛する「中年ファン」としては、どうも複雑な気持ちになってしまいます。願わくばこの発言が「現状打破のための挑発」であって、本当にビックリするような素晴らしい作品を世に出す意気込みを語ったものであってほしいです。僕自身は「平成ガメラ」シリーズには感動した人間ですので、セット、CGなどを効果的に使用した「ウルトラマン」は、ぜひ観てみたいです。
 それにしても、日本随一といっていいキャラクターとコンテンツを抱えた企業が買収されるというのは、なかなか企業運営というのは難しいんですね。もともと円谷プロは、あの円谷英二氏が設立した会社で、いろんな意味で「ファンやシンパの聖地」でした。それが素晴らしいともいえたんですが、いつのまにか「会社とファン」による「閉じられた」ものになってしまったのかも知れません。特撮関連の書籍などを読むと、コンテンツの権利をすべて持っている円谷プロへの発言はどうしても(その世界で食っている人ほど)率直ではなくなっているようでした(ディズニーなどもそういう傾向がありますよね)。僕のような「特撮オタクになり切れていない」人間、ロック界のようにミュージシャン同士、雑誌同士が批判し合ったり論争したりしているのを日常的に見聞きしている世界に親しんでいる人間にはそこが腑に落ちないところでした。
 映画「ウルトラマンコスモス」のストーリーを批判したSF作家の山本弘氏の文章は、だから僕には新鮮でした。山本氏はまた、その文章の中で、特撮番組の「作り手」と「受け手」の間の馴れ合いをも厳しく批判されていました。山本氏の活動フィールド、そして円谷プロの影響力を考えたら、氏の勇気はたいしたものだと思いますが、その批判の内容はごくごくまっとうなもので、このレベルの批判でも「勇気!」と感じさせてしまうような空気を、円谷プロは持ってしまっているのかと悲しくなったのものです。
 僕が持った印象をそのまま経営とイコールすることはできませんが、そうした「旧弊」が新しい発想の登場を遅らせ、経営改善を妨げ、結果今回の事態になったんだとすれば、ちょっと切ないです。新しい体制になった円谷プロには、こうした批判や批評を正面から受け止め、堂々と素晴らしい作品を作っていってもらいたいです。
 
 で、もうちょっとミニチュアワークが好きなおじさんファンにも優しい言葉をかけてくれたらいうことないんですが、、、。