初めてのコンサートは「裏窓」のようだった（笑）

　今日家族で買い物に行ったついでに書店に寄ったら、「レコード・コレクターズ」11月号が出ていて、フレディ・マーキュリーが表紙でした。「？」と思って読んでみたら、新しいライヴDVDとCDが出るとのことで、クイーンのライヴにスポットを当てた特集が掲載されていました。この雑誌はクイーンを取り上げるとき、ほめてくれるのはいいんですが、なんだかいつも「部分的にはけなす」（初来日公演はがっかりだったとか、エンターテインメント性がどうのこうのとか、「Flash Gordon」はつまらないとか）ところがあり、それがどうにも「俺たちは提灯記事だけ書くんじゃない本格派だ」と気取っているようで、長年のファンとしては正直困ってしまうんですが、今回は購入しました。クイーン特集では幅をきかす（そして僕はまったく評価しない）某ライターがメインでないことと、巻頭に掲載されている大鷹俊一氏の文章で、1979年の来日公演の感想が詳細に書かれていたためです。以前にも書きましたが、この時の武道館公演には僕も行っていて、それが僕にとって、生まれて初めてのロック・コンサートだったんです。
　1979年4月14日土曜日、高校生になったばかりの僕は、友人と日本武道館にいました。一緒に行った友人の妹さんがクイーンのファンクラブに入っていて、そちらで入手できたチケットを僕に回してくれたんです。当時の僕といえば、チケットの買い方も知らず、武道館がどこにあるかも知らず、大体、クイーンのアルバムも全部聴いたわけではないという世間知らずでしたが、クイーンは大好きでした。当時のテレビ番組「ぎんざNOW」で流されたクイーンの映像はとても印象的で（今も憶えています）、コンサートもぜひ観たいと思っていました。上に書いたように何も知らなかった僕ですが、その友人のおかげで夢がかなったわけです。
初めて行く日本武道館は、とても大きく感じられました。外観も堂々としていて、中に入ってもとても広い感じ。東京ドームや野外コンサートなどを知っている今ではさほどの大きさに感じませんが、当時は比較の対象がなかったので、とにかく「すげー」と驚いていました。今思い出すと微笑ましいですね。開演前には、男子トイレに女の子が行列を作っているという衝撃の場面も目撃しました。なにもかも初めてのことで、コンサートが始まる前から興奮気味でした。
　肝心のコンサートですが、一応感動しました。このときのツアーは、僕が観た数ヶ月後に「Live Killers」として発表されるものでしたので、いつでも追体験できますが、オープニングの「We Will Rock You」のバンドバージョンから最後の「We Are The Champions」まで、本当にすごいと感じました。アコースティックセットではブライアンが「さくらさくら」ギターでつま弾いたり、曲の合間、一瞬会場が静かになった瞬間、男性の野太い声で「フレディー！」という歓声がホールに響き渡って、バンドも会場も笑い出すという場面もありました。何もかも新鮮で、行ってよかったと思いました、一応。
　なんで「一応」と書いているかって？それはですねえ‥‥、席が良くなかったからなんです（涙）。ファンクラブで入手できたとはいっても、それは「ステージ後方の席を特別に開放！」みたいなものだったらしくて、僕らは、ステージからの距離こそ比較的近かったんですが、まったくの「裏側席」。最初に書いたレココレ特集で大鷹氏が「親にも見せたいな」と思ったという豪華なライト演出など、まったく、ほんとにまったく見えませんでした。コンサートの当日は興奮していたので、まあまあ不満などなかったんですが、後日雑誌などで紹介されたコンサート写真を観ていたら、現場にいたのに何も観られなかったのがくやしくなってしまいましたよ。まったく、人生最初のコンサートがこんな感じで、ある意味とても「僕らしい」ものですが（笑）。
　でもそんな席だったおかげで、僕たちはブライアンの生着替えを目撃できました（笑）。これは「Bohemian Rhapsody」の、オペラパートでのこと。あの部分は会場にテープを流して、その間にメンバーは衣装替えをするんですが、僕たちの席から、ブライアンが着替えているのが丸見えだったんです。これはさすがにアリーナ席最前列でも観られまい（笑）。ちなみにその着替え、ローディの1人がギターを受け取り、両手を広げたブライアンの衣装を、2人くらいが「脱がし」、別の2人くらいが「新しい衣装を着せて」、ギター担当がギターを渡して完了！という、F1のピットみたいに素早いチームプレイでした。フレディなんかどうしていたんでしょうね。ちなみに着替えた後の衣装というのは、あの有名な蝶々のようなヒラヒラの袖のものでした。めったに観られないものが観られたんですから、良かったということなんでしょうね、でもさすがに「親にも見せたいな」とは思いませんが（笑）。
　このときの武道館公演、違う日程ですが日本のテレビでも放送され、ブートDVDも出ています。（大きな声では言えませんが）僕はそれを持っています。よく観るとフレディのボーカルはけっこう不安定で、厳しく観てしまうと「もうひとつ」な感じなんですが、でも、そういう（当時気づかなかった）部分も含めて、僕にとっては忘れられない「初めてのコンサート」です。

ライヴ・キラーズ(紙ジャケット仕様)