ゼップを語る幸福な2人(ロッキング・オン12月号)

 というわけで、「ロッキング・オン」12月号についての続きです。まずはゼップのインタビューの感想から。
 今回のインタビューでは、ごく最近のロバート(以下パーシー)とジミーのものが1本ずつ掲載されています。分量・内容のどちらから考えても、パーシーのものがとてもいいです。生い立ちから始まり、ブルースにのめり込んだ十代の話し、音楽活動を始めた頃のエピソード、そしてゼップ時代、さらにはソロ活動に至るまで、彼の半生を語り尽くすという感じのもので、「2000字インタビュー」の称号は伊達じゃありませんでした。これはインタビュアーの手腕も高く評価しなくてはなりませんね。今までのインタビューでは、ゼップのことについてはあまりいい(高い評価という意味でもそうですし、内容のある話しを聞き出すという意味でもです)話しはなかったんですが、ここでの彼はとても率直にあのビッグ・グループについて語っています。僕はパーシーが、ゼップの幻影から逃れようと必死にソロ活動をしていたことを高く評価している人間なので、そうした年月も踏まえたうえで、あのビッグバンドについて思いを述べていることはなおさら嬉しいし感動的です。
 対するジミーは、2005年にゼップが初めて(ノミネートも含めて)グラミーを受賞したことを、本当に本当に素直に喜んでいるインタビューです。パーシーやジョーンジーがゼップ解散後、グループとは一線を画する活動・生活をしようとしていたの大して、ジミーだけはずっとゼップと寄り添っていました。解散後に発表された「Coda」やボックスセット、ライヴ盤、ライヴDVDなども、基本的にはジミーが手がけて世に出たものです。このインタビューではグラミー受賞によってなのか、とても良い感じで「報われた」という雰囲気が良く出た発言が多くなっています。現役時代は(ちょっと日本人には信じられませんが)酷評ばかりだったということも余裕で語り、心からの愛情を持ってグループを語るジミーには、読んでいるこちらまで嬉しくなってきます。
 興味深いのは、ゼップ現役時代の音楽について語っているところで、具体的な録音技術や音楽的手法などについて語っていることが非常に少ないこと。これはパーシーもジミーも共通で、2人とも「これこれの要素とこれこれの技術でこの音楽が完成しました」みたいなことはあまり話さず、「変化することで新たな活気が沸いてくるんだよ」(パーシー)、「4人の全員が、それぞれ持ち味を投入して出来上がったものだった。理想的なアプローチさ。(中略)一緒に演奏しながら、全員が互いに心を通じ合わせるんだよ」という感じで、気合いや結束が素晴らしい音楽を創造したとは語っています。これは絶賛一方のジミーも、初期の自分のボーカルに対していくぶん否定的なパーシーも同じです。僕はそういう発言に、あのバンドが創り上げた音楽の、あのとてつもない巨大さ、部分に還元できない、簡単な形容で語りきれない力を感じます。今聴き返すと、まるで最初からシナリオが出来ていたかのようなかれらの活動と音楽ですが、それを支えていたのは、熱病のような(当人たちでさえコントロール不能な)誠意なんだと思います。名高い「ご乱行」も、ジミーの黒魔術も、ここではもう関係ありません。現在までバンドの伝説が持続していることについて尋ねられたジミーがこう答えています。「神話のことは忘れよう。だって、本当に音楽がすべてだったんだから。」

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