はみ出し続ける個性の天才

 先々週、僕と妻はインフルエンザの予防接種を受けました。自分が罹患しないことももちろんですが、ドレミに感染させないことを考えての行動です。おかげまで今日現在、インフルエンザについては大丈夫みたいです。が、なぜか2人とも風邪をひいてしまいました(笑)。僕は軽い咳が出るのと、数日前から声が枯れてきた程度で仕事や家事には影響ないんですが、妻は咳がひどい。症状はそれだけなんで仕事には行っていますが、寝付きに咳が出るらしく辛そうです。咳止めは飲んでいるんですけどね。救いはドレミには感染っていないことです。そのため今日は基本的にのんびりムードで過ごしました。午前中は近所に買い物ついでにコピの散歩、昼下がりは家族全員(コピまで含めた3人と1匹)で昼寝してしまいました。今日の南関東はポカポカ陽気で気持ちよかったです。
 いつもコメントをくださるlazyさんが、ご自身のブログで、ベック・ボガード・アピスの「live」を聴いたという文章をアップされていました(こちらです)。それに影響されて、僕もそのあたりのジェフの作品を聴いていました。第2期ベック・グループとBBAのライヴ。ご存じの方も多いでしょうけれど、ライヴは日本公演のもので、日本のみの発売ですが初のオフィシャルライヴ盤ということで話題になったものです。BBAって世界的にはあんまり評価されないんですが(ジェフのディスコグラフィ内でしか名前を見ないです)、いいバンドだと思いますね。このライヴでも、リズムセクションはしっかりしていて、ジェフのギターも太い音で鳴っています。もしかしてジェフのキャリア全体で、最も「普通に」ギターを弾いているかも知れないです(それでもあちこちはみ出ていますが)。
 ジェフの音楽については、常々「黒人音楽との関わり」という視点で語られることが多く、事実そういう文脈だとわかりやすいことも事実ですが、さすがに最近の活動まで含めて考えると、もうそうした「整合性」は関係ないのかな?と思います。確かにフォーマットに注目すれば黒人音楽というか、ソウル、ファンクの要素が多いのは事実ですが(出発はブルースだもんね。ハードロックバンドだったBBAでさえスティービー演奏しています)、ジェフ本人に明確なビジョンというか、「1本の道を歩んでいる」感じはあったんだろうか?と思ってしまいます。野生の勘といえば聞こえは良いですが、もっと無意識的なものだったんではないでしょうか?それが振り返ってみたらきっちりとした道になっていたのか、というとそういうものでもなし、結果的に見えてくるのは、どんな時期、どんな形式にも「溶け込むことのない」ジェフのものすごい個性。それでどの時期もかっこよく様になっているんですからすごいことだと思います。
 ジェフは2年ほど前に「Live At B.B.King Club」というアルバムを出しました。テリー・ボジオなどと競演したものですが、これがまたものすごい内容。インストアルバムですが、選曲も音質も、バランスなど全く考えていないもので、ひたすらスピード感あふれる演奏が続きます。かつてオフィシャルにライヴバージョンが出ていた「Freeway Jam」や「Scatterbrain」など、曲のテンポが倍になったんではないかと思うほどのもの。普通30年近く前の曲を再演したら遅くなるでしょう。ところがジェフの場合は逆です。演奏も「円熟」とか「年齢相応」なんてまったく関係なしの世界。若返ってるんじゃないかと思うほど。
 同世代のミュージシャンで現在も活動している人は何人かいますが、テクノのフォーマットでギターを弾いて冗談やパロディにならないのはこの人だけ。形式も体裁も配慮していないのに結果的にギター演奏の新たな可能性を考えさせるところもさすがです。どこまで意識的な選択なのかわかりませんが、60歳を超えてなおこんな風にギターが弾けて、こんな形式でちゃんと作品を創り上げてしまうジェフは、やっぱり天才だと思います。どの時代・形式でも結局、ジェフの最大の魅力はこの、何にも従属することのない、ものすごい個性なんですね。

ライヴ・ベック!

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