マリア・マルダーのコンサートに行ってきました。

 今僕の健康状態はいわゆる「絶不調」というやつです。風邪が完治せず、断続的に頭痛や悪寒があり、しかも重い咳が止まりません。咳は本当に難儀で、職場でもマスクと(水分補給のための)ペットボトルは欠かせなくなっています。測ってませんが、熱も時々あるんではないかな?測ると仕事行きたくなくなっちゃうから測りませんが(笑)。まあ、とにかくそんな状態です。
 なのになのに、行ってきてしまいました、コンサート、また。マリア・マルダーのコンサートに。すみません(誰に謝ってるんでしょう?)。
 会場は横浜のライヴハウス「Thumb’s Up」。僕は前売券の整理番号50番で横の方のテーブルに座れましたが、立ち見も出たようでした。コンサートはいきなり「どブルース」な曲でオープン。バックはキーボードが(マリアと一緒に来た)外国の方だった以外(ギター、ベース、ドラム、そして1曲だけ参加したフィドル)は全員日本人。僕は不勉強で知らない人達でしたが、全員実に演奏が上手かったです。マリアは重ねた年月がいい方に出たという感じの容貌になっていて(最近の彼女のCDジャケでもわかりますが)、変な書き方ですが「演奏している音楽にマッチした」というようなスタイル、身のこなしでした。
 選曲はブルースあり、ゴスペルありと本当に「これぞアメリカに深く根を張った」といえる音楽ばかり。「ベッシー・スミスの曲よ」「パーシー・メイフィールドは知っている?」「みんなJJケイルは好きかしら?」などと話ながらぐんぐん進みます。そのどれも実に見事に、余裕たっぷり、楽しそうに歌うマリアの姿は感動的でした。当たり前ですが歌の上手いこと上手いこと。考えてみたら彼女はずっと「Old Time Music」(Good Time Musicかな?)を歌ってきたわけですが、それを今でも続けていて、しかも今も表現の輪郭がぼやけないというのはすごいことだと思います。コンサートでは知っている曲も知らない(思い出せない)曲もありましたが、そのどれも実に地に足のついた演奏と歌声で、感動的でした。
 「ボブ・ディランは知っている?彼の曲ばかり歌ったアルバムから1曲演るわね」と言って始まった「Buckets Of Rain」は、個人的には最高の瞬間でした。この曲を生で聴けたなんて今でも信じられません。この曲の間は風邪ひいていることを忘れてしまい、咳も出ませんでした。「デビューして35年も経って、たくさんの歌を歌ってきたんだけど、どのコンサートでも必ずリクエストされる曲はたった3曲。バンドのみんなはそれを『マリアのビッグ3』と呼んでいるのよ」と笑わせてから「Midnight At The Oasis」「Don’t You Feel My Leg」で盛り上がり、コンサートは終了。アンコールはなんとマリア1人でステージに戻り、バックなしの独唱で1曲。曲名はわかりませんでしたが、ゴスペルのような曲想で、切々と歌うその声は、胸に迫るものでした。立ち見まで出た満員のお客さんがみな、水を打ったようにして耳を傾けて聴き入りました。コンサート自体はかしこまってブルースの歴史を学ぶような雰囲気では(もちろん)なく、楽しいムードのものでしたが、音楽が紛れもない「本物」だったので、聴く方も自然と襟を正してしまうようなものでした(もちろん比喩ですよ。僕も飲み物飲んだりのど飴なめながら聴いていましたから。でも終わった後みんな満足そうでした。楽しい時を過ごせたという気持ち以上の表情だったと思っています)。
 終演後にあったサイン会で、僕が持参したディランのカヴァー集を差し出したところニッコリ微笑んで、「このアルバム、私のお気に入りなのよ」と言ってくれたので、思わず「僕も大好きです」とか返事をしていしまいました。「今日はあのー、このアルバムのあのー、歌ってくれて嬉しかったです、あの、バケ、バケ、バケツ、、」「『雨のバケツ』ね」「そうです。最高でした」「ありがとう」という、通じていたかどうか非常に怪しい英会話も交わしてきました。
 前にも書きましたが、僕は今「アメリカ音楽」について考察しています。それは主にクラシック系の音楽からポピュラー方面への流れを確認したいというものがメインで、ある程度知っている(つもりの)ブルース〜ロック〜ソウル方面については後回し的な扱いでした。でもこの日のマリアを聴き、後回しにしている方(つまり、少しは知っていると思っている方)でさえ、これだけの深さを持っているんだということを知ることができました。楽しくて感動的な夜でしたが、僕にとってはまた「自分の愛する音楽の美しさを再確認する」夜にもなりました。
 今度の旅は、長くなりそうです。 

ハート・オブ・マイン~ラヴ・ソングス・オブ・ボブ・ディラン

ハート・オブ・マイン~ラヴ・ソングス・オブ・ボブ・ディラン

  • アーティスト: マリア・マルダー,デヴィッド・トカノフスキー,ハッチ・ハッチンソン,トニー・ブラナゲル,クランストン・クレメンツ,ジョエル・ジャフィ,土屋陽輔,リチャード・グリーン,スージー・トンプソン,ダニー・キャロン,クリス・ハウゲン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2006/08/16
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