チープ・トリック武道館30周年コンサート鑑賞記

 相変わらず忙しく、連日残業の日々ですが、そんな中1日だけ定時で抜けさせてもらって、コンサートに行ってきました。チープ・トリックの武道館。あの名盤「武道館」を収録した初来日公演からほぼ30年目の4月24日、アニバーサリーを祝うために行われたコンサートです。あの伝説のコンサートが行われたとき、僕は中学3年生で初心者ロックファンだったころ、なのであのときの彼らの人気ぶりも来日の大騒ぎも、秋に出た「武道館」のヒットの様子もよく憶えています。当時すでに「ロッキング・オン」を読んでいたので、そこで渋谷陽一さんが何度も彼らを取り上げていたのもよく憶えています。僕自身は1980年に1回彼らのコンサートには行っていますが、それ以来のコンサート鑑賞になります。正直なところ、好きなグループではあってもアルバムを総て聴いたわけでもなく、また過去のコンサートレビューでも「初期の曲で盛り上がった」と書いてあるのが、なんとなく懐メロ大会のように思われて、ちょっと興味を感じなかったんです。今回は堂々と「30周年」と銘打ったものですので、昔の曲で盛り上がるのもいいかな、と自分に言い訳して(笑)、行って参りました。
 定刻少し前に映像が流れ出しました。内容は当時のコマーシャルやコンサートの模様、アメリカのテレビ番組などに出たときのものなどわりと雑多なもの(熱心なファンの方なら出典がわかるのかも知れませんが、僕にはあまり相互の関連がわからなかったです)。それが10数分あり、おもむろに客電が落ちてコンサート開始。オープニングはもちろん「Hello There」。ちょっとPAのバランスが悪かったですがスピード感は変わらない快演。コンサート中のMCは主にリックが行いましたが、「アリガト」を連発し、相変わらずのキャラクターでした。「30年前に来た人はどのくらいいる!?」という言葉に、相当たくさんの人が歓声を上げていたのは予想どおりとはいえ面白かったです。
 で、今回のコンサートは「30年前の武道館公演を完全再現!」という触れ込みだったので(リック本人がインタビューでもそう話してました)、そういうものを予想していったんですが、違いました。もちろん基本的にはその頃の曲が多かったですが、もっと自由に構成されていて、当時演奏して今回演奏しなかったものもあり(「ELO Kiddies」が聴けなかったのは残念!)、初来日公演以後に発表された曲も盛り込んでいました。「Voices」が始まったときは鳥肌が立っちゃいましたよ。「Speak Now Or Forever Hold Your Peace」のイントロではトムが12弦ベースでジミの「Burning The Midnight Lamp」の冒頭部分を弾いていました。演奏は、とにかくよかったです。厳密にいうと「かっちりしたアンサンブルで一糸乱れぬ演奏」というわけではなく、非常にラフで音量も「うるさい」ほどでしたが、パワーやスピードがものすごく、初期の曲を演奏していても「懐メロ」という感じがしてきませんでした。曲によっては「走ってる」ほどで、これは良い意味で予想と違っていました。メンバーの演奏が若々しかったと同時にロビンのボーカルもまったく以前と変わらず、ものすごい声量でした。
 ちょっと驚いたのは「The Flame」。80年代後半にヒットして低迷期を脱した曲で、個人的にはまったく興味も思い入れもないバラードですが(メンバーの作った曲ではないし)、コンサートで生で聴いたら、すごく良くてビックリしてしまいました。この曲でこんなに感動するなんて思いもしなかったので、本当に驚きです。やっぱりこのバンドの本領はライヴでした。実感しました。
 もちろん代表曲は最高の出来でした。「I Want You To Want Me」ではみんなで「クラインクラインクライン!」やってきました。意外に早い登場で(コンサート中盤くらい)あれっと思っていたら、隣の席にいた僕と同年配の女性がぼそっと「早いよ!」とつぶやいたのはおかしかったです。本編最後の「Surrender」ではあの「ネックが何本もあるギター」が登場していました。この曲に限らず、リックはほとんど曲ごとにギターを持ち替えていました。アンコールで「Dream Police」をやってくれたのも嬉しかったです(僕は個人的にアルバム「Dream Police」と「All Shook Up」が大好き)。最後はバーニーのあの「極太スティック」も登場して、大喝采の中コンサートは終了しました。もちろん懐かしい気分に浸りたい人にも大満足だったコンサートだと思いますが、僕はむしろ、彼らの現役ぶりに圧倒されました。良い意味で「成長していない」感じが、永遠の現役ライヴバンドという感じで、こういう魅力はやっぱり実際にコンサートを体験して初めて実感できるものなんでしょうね。このコンサートを体験してかえって僕は、今までちゃんと聴いてこなかった彼らの再近作をちゃんと聴きたくなってきました。この日のチープ・トリックは、それほど魅力的でした。コンサート、必ずまた行こう。

コンプリートat武道館(Special Japanese Edition)(DVD付)

コンプリートat武道館(Special Japanese Edition)(DVD付)