エイジア来日公演 5月13日 渋谷C.C.レモンホール

 忙中閑あり、13日は久しぶりに定時で退社し、コンサートに行ってきました。渋谷のC.C.レモンホール渋谷公会堂のことですね)にエイジアを観に。
 エイジア自体にものすごく愛着があるかというとそんなことはなく、取りあえずCDは持っているとう感じなんですが、今回行こうと思ったのは、オリジナル・メンバーでの2年連続来日ということで、なんとなく「次はなさそう」だという感じだったのと、今まで生で観たことがないジョンとジェフを一度観てみたいと思い立ったからです。というわけで、演奏や曲目にそれほどの期待があったわけではなく、エイジアらしい演奏が聴ければいいや、でもみんな高齢だからなあなどと罰当たりなことを考えながらの鑑賞でした。
 見事に年齢層の高い(僕が言えた義理じゃないですが)、満員の観客が見守る中、登場した4人は、スティーヴ以外の3人は年齢相応の恰幅のよさ(笑)。でも、1階席後方から観たせいかもしれませんが、不健康な太り方には見えませんでした。
 コンサートは基本的には予想どおりの感じで進行しました。僕が一番恐れていたジョンの声ですが、十分出ていました。ベースもちゃんと弾けています。プログレ界随一という歌声の持ち主は健在でした。前半はグループの曲の他に、恒例の「メンバーのソロコーナー」があり、カールは「庶民のファンファーレ」(スティーヴとジェフのソロバトルあり。これはすごかった)ジェフは「ラジオスターの悲劇」(銀ジャケにサングラスで登場し大喝采だったのに、イントロのキーボードの音が全然違っていて弾き直したのはご愛敬)スティーヴは「ラウンドアバウト」(ボーカルはジョン)、そしてジョンは「クリムゾンキングの宮殿」(あれっ?在籍してたっけ?)でした。 エイジアというと、分厚くて綿密なアレンジで歌い上げるというイメージが強く、事実そうした曲・演奏も多かったですが、実際に聴くと、予想よりもラフな感じでした。カールのドラムが始終走っていて(これはこれでかっこいい)、みんな演奏がずれないようにそれぞれの技術でフォローし合っているという感じで、いい意味で緊張感のあるプレイでした。僕が二番目に恐れていたことにスティーヴの「枯れ具合」(?)があったんですが、容貌は確かに「枯れて」いて、メタボな外見の他3人とのギャップがすごかったですが、演奏は元気でした。ステージでもよく動いていたし、数年前のイエスで観たときよりも力強いプレイで安心しました。実はソロコーナーではスティーヴはもう1曲、「Mood For A Day」を演奏してくれましたが、これもよかったです。
 ところで、僕はエイジアには思い入れがないと最初に書きましたが、特に2枚目以後の作品については、本当にあまり聴いていませんでした。それがこの日、2枚目から「The Smile Has Left Your Eyes」、3枚目から「Voice Of America」をやってくれたんですが、この2曲、とてもよかったです。「Smile」はシンプルなバックアレンジ、「Voice」はジョンがギター1本で歌ったものですが、オリジナルアレンジの、あの厚化粧のような音の壁がなくなったら、曲とボーカルのよさが前面に出てくれて、とても感動的でした。特に「Smile」は「こんなにいい曲だったか」と思うほどでした。実際、帰宅後にこの2曲を(スタジオ録音で)聴き返しても、コンサートで受けたような感銘は受けませんでしたから、生演奏という部分を差し引いても、アレンジのシンプルさが勝因だと思います。
 コンサートの後半は特別セット、あのファースト・アルバムの完全再現で、これは会場も盛り上がりました。アンコールは「Open Your Eyes」。会場はずっと幸せなムード、バンドも観客も楽しそうでよかったです。
 先日出たニューアルバムの「Phoenix」の録音中、ジョンとカールは心臓の手術を受けました。現在は回復したということでしたが、場所が場所だけに心配は心配でした。でも実際は、少なくともステージの上では、4人は元気に演奏していました。特にカールは実にパワフル。リズムのズレなんか関係なし(笑)、ドラムソロでも元気いっぱいで、いつもの僕だと「また同じようなソロか」と思ってしまうところが、「おお、以前と同じに叩いている!」と感動していましました。本当は病気のことなど持ち出すまでもなく、彼らしい手数の多いプレイでした。それはジョンにも言えることで、嫌な評判を吹き飛ばすようなはつらつさでした。「キミタチ、サイコダヨ」も生で聴けたし(笑)。
 それにしても、エイジアでこんなに感動するなんて思ってもみませんでした。やっぱり音楽はライヴなんだろうか?僕は録音芸術の価値をとても高く評価している人間なので、単純にそう断言することにちょっと抵抗があるんですが、でも、昨日の感動と満足は本物でした。このメンツでの活動はパーマネントなものではないということですが、またぜひ来て欲しいものです。