追悼 ボ・ディドリー

 ボ・ディドリーが亡くなったというニュースが入ってきました。79歳だそうです。
 僕が初めて彼の音楽を聴いたのはたぶん大学生くらいのときで、最初の印象は「初期のストーンズそっくり」というものでした。考えるまでもなく反対で、初期のストーンズが彼にそっくりなんですよね。かっこいいとは思いましたが、僕はあの独特のリズム感覚がどうもしっくりこなくて、あまり熱心には聴きませんでした。そのころはまだ(今に比べると)自分の好きなアーチストのルーツまでしっかり理解していなかったので、その程度の理解でした。今聴くと最高にかっこいいんですが、あのころはわからなかったです。
 今日、iPodにボ・ディドリーの曲を入れて通勤途上聴いていて改めて気づいたんですが、この人のボーカルやメロディがどれも洗練されていて、あまり泥臭さを感じないんです。あの有名なビートも、それだけ取り出して考えるとアーシーなものですが、曲全体でみるとR&B的な暴れ回る感覚よりも、アートとしての完成度を感じさせるものになっています。ザ・フーエアロスミスもカヴァーした「Road Runner」など、オリジナルよりもカヴァーの方が粘りのある演奏になっていて興味深いです。僕たちが好きなビートルズストーンズ、フーなどの「イギリスからの侵略者第1期生」がカヴァーしたR&Bのオリジナルは、大概カヴァーバージョンよりも「黒っぽい」んですが(当然ですよね)、ボ・ディドリーの場合は逆で、カヴァーの方が熱のこもったもので、オリジナルにはどこか風通しのいい明るさがあります。僕が知っている限りこういう例は彼とチャック・ベリーにだけ感じられるもので、とてもユニークな音楽性だと思います。「Pills」やポールもカヴァーした「Crackin’ Up」などもポップな曲調で、もっとたくさんの人に聴かれて評価されてもいいと思います。
訃報というのは残念なことですが、これをきっかけに今以上に彼の音楽が聴かれ、相応しい評価と知名度を得て欲しいと思います。今部屋にはもちろんボ・ディドリーの曲が流れています。ビートは強烈だし音の重心はどっしり低いですが、でも今感じるのはメロディーの美しさやボーカルの巧みさです。最近まで元気に活動されていたという話でした。本当に残念なことです。謹んでご冥福をお祈りいたします。
 

His Best : The Chess 50th Anniversary Collection (紙ジャケット)

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