夏といえば虫、虫といえば(僕の場合)

 いつもこのブログに来てくださるlazyさんのサイトで、最近オオミズアオの幼虫を飼いだしたという文章を読みました。ご存じですか、オオミズアオ?蛾です。とても大きな。そしてとても美しい。僕もそう何回も直に観たり触ったりしたことはないんですが、透き通るような青白い翅は、自然の美そのものです。図鑑などではよく見かけるこの蛾を初めて見たのは小学生(低学年)のころ。今でもどこで何時頃見たのかはっきり記憶しています。それくらい印象的でした。
 ところで昨日、玄関を開けようとしたら、ドアのところに小さなカマキリがいました。よく見ると何匹もいます。カマキリの大きさは1cm強といったところ。孵化したばかりにしてはちょっと時期が遅いかな?でもまぎれもないカマキリです。ちょうど帰宅したドレミも気づいて大騒ぎ。ママはあんまり虫好きではないので、パパと娘だけで盛り上がっちゃいました。そんなに知識があるわけではないですが、虫、大好きです。今でも庭や公園で虫に遭遇すると嬉しくなってきます。これは子どものころからですね。ドレミにもぜひそのへんは受け継いでいただきたいなと(笑)。
 ところで今日は1冊の本がお題です。タイトルは「昆虫おもしろブック」昭和49年4月、主婦と生活社刊です。著者は矢島稔(現群馬県ぐんま昆虫の森園長、記憶が正確なら執筆当時は上野動物園で昆虫関係の要職にあったはず)とかの松本零士。本文中にあるイラストはすべて松本零士のものですが、単にイラストを描いた以上の存在感で、共著扱いになっています。
 この本、僕が小学5年生になったばかりの頃に買ってもらったもので、いまだに捨てずに持っているものです。タイトルどおり様々な昆虫の不思議な生態について、虫初心者向けに書かれた本ですが、単なる虫の説明や知識羅列的なものではなく、実に見事に「人間的な」比喩や表現で書かれていて、とてつもなく面白い本になっています。虫初心者向けの本ではありますが、想定読者の年齢層はけっこう広く考えているらしく、交尾についての比喩など、けっこう赤裸々というかストレートなもので、それが松本零士のイラスト(擬人化したもの)まであるので、最初に読んだ当時はドキドキしていたものです(可愛いもんだね)。   ただ、この本が単なる「虫入門」本ではなく、長く読むに耐えるものになっている理由は、著者である矢島氏の思いが強く出ており、それが現代にも通じる広い視野を持ったものだからです。本の冒頭に書かれていますが、戦後すぐに奥多摩で見たカラスアゲハの羽化に感激し、昆虫研究の道に入った矢島氏は、その研究の日々と逆行する形で戦後の日本が自然を破壊し、虫たちの住処がなくなっていったことを悲しみ、執筆の当時やっと芽生えてきた環境問題に対する意識の広がりの中にあって「豊かになりたい、もっと快適な生活を送りたいという(中略)欲求が、(中略)逆にキミや私の生活環境を、不快な、耐えられないものにしてしまったといえないだろうか。」と問題提議し、「そうだとしたら、豊かさの基準を考えなおして見る必要がある。」と書いています。生物に不可欠な酸素を作るのは植物、そしてその植物の繁殖に虫(受粉などの働き)が絶対に欠かせないというわかりやすい例により、小さな生命を理解し、大切に考えることが本当の豊かな世界を作ることに繋がると説明しています。そこを出発点としてチョウ、バッタ、セミ、トンボなど、いろいろな昆虫の生態を解説しています。
 ここで矢島氏が素晴らしいのは、虫と人間にコミュニケーションは成立しないとはっきり言明されているところで、体のつくりも進化のしかたもまったく違う虫については、その行動や反応からしか理解は出来ないとはっきり書かれているところです。この本は虫の行動を人間に例えるとこういうものですよ、と書いてあるところがとても多いですが(イラストがまた、実に見事にそういう感じ)、研究者としての正しい立場から「わかってもらうために」あえて踏み出すという姿勢が評価できます(そうでないトンデモエコロジー本がどれだけたくさんあることか)。そしてなにより文章がいいんですよ。わかりやすく、しかも面白い。子どものころ数え切れないほど読みましたが、読み飽きたことがないほどです。今回この日記のために再読しましたが、やっぱり面白い。虫を愛し、その正しい姿を読む人にわかってもらいたい、その姿勢を貫いた、本当に意味での良書です。僕は未入手ですが、この本は今でも文庫で入手可能らしいです。もしも機会があったらぜひ読んでみてください。今読んでも古くないというより、今だからこそ価値がわかる本だと思います。
 今日の夕方も、玄関に小さなカマキリが1匹いました。うちの庭で成長してくれたらいいな。夏になったら植え込みの中をドレミと一緒に探してみよう。うちの庭ではセミの羽化も見られるから、そっちも楽しみです。うーん、なんだか書いていて盛り上がってきたなあ(笑)。夏に備えてもう一度この本読み返して復習しておこう(笑)。

昆虫おもしろブック (知恵の森文庫)

昆虫おもしろブック (知恵の森文庫)