ディスクレビュー フォックスボロ・ホットタブス

 フォックスボロ・ホットタブスという「新人」バンドのアルバム「Stop Drop And Roll!!!」が話題を呼んでいます。とまあ、1行目くらいはお付き合いしてあげて(笑)、本題に入りますと、グリーン・デイのサイドプロジェクトのアルバムが日本でも正式に発表されましたね。僕は昨年末の、本国で起こったこの「新人」についての騒ぎはまったく知らなかったので、情報としてはすでに「グリーン・デイが黒幕」ということもコミで知ったクチですが、ここまであからさまなのもなかなか不思議ですね。本国ではそれなりに騒ぎになったらしいのが、日本ではタイムラグがあったせいか、なにもかも明らかになっているのがちょっと可笑しかったです。まあ、こういうことは本人達もわかっていてやっているんだから、「タイマーズって何者?」「ラッキー・ウィルベリーって誰だ?」というレベルで楽しむのがよかったのかも知れませんね。
 で、このバンド(もう面倒なので、グリーン・デイということで行きます)のアルバム、ジャケットもなかなかのものですが、肝心の音もなかなか。彼らのルーツがもろにわかる、というかそのまんま、パンクっぽいロックンロール。元ネタがすぐにわかるものもあり、そういう意味では演奏する側も聴いて面白がる側にもある程度のロック偏差値があった方が多様な楽しみ方ができそうです。もろ「Summertime Blues」というものもあって実に微笑ましいです。演奏自体は引き締まったいいもので、ボーカルも含めて手抜きなし。30分強という時間も集中して聴くにはちょうどいい感じです。特に文句なしというところでしょう。もしこれが本当に「新人バンド」のアルバムなら。
 グリーン・デイがやったというなら話しは別です。ご存じのとおり、彼らは現在新作のレコーディング中で、前作はなんだったかというと、あの「American Idiot」です。で、あの傑作リリースから早4年。大変なんでしょうね。変な言い方ですが、今回のプロジェクトの威勢が良ければ良いほど、彼らにのしかかっているプレッシャーの大きさ、彼らが自分たちに課しているハードルの高さがわかります。このプロジェクトの音楽は、無名の新人だったとしたら「なかなかいい」と言っていい内容です。でもグリーン・デイの新作として聴いたとしたら微妙です。それが今のグリーン・デイの立っている場所です。こんなふうにのどかで自分たちのルーツに対する愛情を隠さない素直な音楽を演奏するという立場を、今の彼らはとれない、いや、表現を変えましょう、そういう立場を、今の彼らは「後にしてきた」んだと思います。
 繰り返しますがこのアルバムは楽しくて昂揚する、いいアルバムです。ロックファンなら聴いて損はないです。でもやっぱりそこまでの評価です。僕たちはここで「肩の力を抜いて」休息をとった彼らが、再び自分たち本来のコースに戻って活動をすることを待っています。そうであればこそ、このアルバムは楽しめるのです。その意味では、今回のプロジェクトはまさしく「副業」なんでしょうね(ホワイト・ストライプスザ・ラカンターズのような相互補完的関係ではなく、あくまで本業との対比で存在するということ)。なにしろ「American Idiot」の次ですから大変だと思います。が、どうかかんばってほしいと思います。ロックの未来を担っているといっても過言ではないグリーン・デイのみなさん、応援しています。めでたく素晴らしい新作が出たときには、ツアーでこのアルバムの曲も演奏してください。きっと大受けしますよ。「愛すべき寄り道」として。
 追記:そういえば映画「シンプソンズ」にグリーン・デイ、ゲスト出演していましたね。あの「グリーン・デイシンプソンズのテーマ」は売っているんでしょうか(サントラ盤には未収録だったみたい)?ぜひ発売してほしいな。カップリングはもちろん「アメリカン・イディオット葬儀用バージョン」で(笑)。

ストップ・ドロップ・アンド・ロール

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