大人の科学別冊「シンセサイザー・クロニクル」

 別冊「大人の科学」マガジン「シンセサイザー・クロニクル」を買いました。某大手輸入盤ショップでは平積みになっていました。テルミンの号が一時入手困難なほど人気だったので、今回はみんな早めに買っているのかな?実をいうと僕は自他共に認める手先の不器用な人間で。テルミンが付録だったものも購入だけしてまだ箱も開けていないんですが、今回もそうなっちゃうかな?
 ところで、このシリーズ、もちろんメインは付録ですが、雑誌本体もけっこう読み応えがあります。表紙を開けると見開きに、ジャン・ミッシェル・ジャールのステージ写真。シンセ博物館かと思うような機材の並び方にまず圧倒されます。YMOのメンバーや巨匠冨田勲へのインタビューがあり、石野卓球テイ・トウワPOLYSICSなどもフューチャーされていてとても豪華。安西史孝氏による「シンセサイザー奇想天外史」は、従来とは違った角度からシンセの歴史を紐解いた、特筆すべき読み物です(「うる星やつら」のBGMは安西氏が手がけられていたと書いてあってビックリ!このLP持ってます。すごくいいアルバムでした)。ハリー・パーチのような作曲家を生んだアメリカの音楽土壌が電子音楽を生み出したというところは面白かったです。この文中に「ビートルズのシンセ導入はモンキーズビーチ・ボーイズに比べて遅かった」と書いてあって「!」と思ってしまいました。モンキーズはよくわかりませんが、BB5って60年代にシンセ使っていたっけ?テルミンならすぐに「アレだ」ってわかるんですが。
 付録のシンセを著名アーチストに改造してもらったり、ソフトシンセの使い方を紹介したコーナーがあったり、本当に読み応えのある本誌は、TENORI-ONや「初音ミク」といった最新のインターフェイスに至る、黎明期から始まる様々なシンセサイザーが至る所に紹介されています。僕と同世代のロックファンには馴染みの深いミニ・ムーグやプロフェット5、一世を風靡したヤマハDX-7やコルグM-1(持っています)など、とにかくたくさん写真が掲載されています。これが嬉しい。個人的にはVCS3(フロイドが使っていた)とアープのオデッセイ(もちろんザ・フー!)の写真が見られたのが感激です(特にVCS3は鍵盤のないシンセであまり見る機会のないものなので、はっきりした写真は貴重です)。
 こうして読み、眺めていると、シンセサイザーにもすでに長い歴史があり、その音や聴かれ方、リスナーや演奏者の思い入れも様々なんだということがよくわかります。パネルにレイアウトされたツマミやスイッチ類を動かしながら音を紡いでいくという行為は、楽器演奏と機械操作を兼ねた、ある種究極的で、どこかセクシーなものなのかも知れませんね。
 今これを書いているとき、ウォルター・カーロスの「Switched On Bach」と冨田勲の「月の光」を聴きました。どちらも黎明期のシンセ音楽ですが、どちらも全く古くなっていません。これはすごいことです。これらの作品が発表された当時、シンセはまだまだ一般的な理解と普及がなかったころですが、この2枚の名盤(つまり、創り上げた2人の芸術家)は、当時すでに時の試練に耐える名作だったんですね。
 僕のM-1は今、妻の実家に置いてあります。もう何年も弾いていないんですが、お盆に帰ったときに音を出してみようかな?