サザンオールスターズ「真夏の大感謝祭」

 8月23日土曜日。僕と妻、そしてドレミは横浜の日産スタジアムサザンオールスターズのコンサートを観に行きました。このコンサートを最後に、無期限の活動停止期間に入るということで各方面大反響、あいにくの小雨模様でしたが会場までの道もファンがたくさん歩いていて会場前も含めて大変な人出でした。ドレミを託児サービスに預けて自分の席に着くと、僕たちの席は幸い屋根付きのところでホッとしました(ステージからは相当遠かったですが)。もちろん会場は超満員。壮観でした。僕はコンサートの間何度も、コールアンドレスポンスや曲に合わせて手を挙げる観客席を観てしまいました。それほどの聴衆でした。
 ほぼ定刻どおりコンサートはスタート。1曲目は懐かしや「YOU」。続いて「ミス・ブランニュー・ディ」〜「Love Affair」と畳みかけるような感じで始まりました。
 3曲終わったところで桑田さんのMC。桑田さんはコンサートでけっこう時間をかけてMCをやりますが、今回はもちろん、今回の声明についての発言もありました。コンサート中何回かあったMCで常に「30年ありがとう」「また必ず帰ってきます」「ここにいるのはいつものサザンです」と話していました。あの声明に予想を超えた大きな反響があったことにいくぶんナーバスになっているかのような強調のしかたに、僕などは逆に「本当の意味での大きな一区切り」を感じました。
 それはなによりもこの日の選曲によく現れていました。ネットでセットリストも出回っているようですが、長大なメドレーで演奏されたのは、なんとファーストアルバムからほぼ年代順に並んだ代表曲でした(ヒットした曲ばかりでないところがミソ。みんな熱心なファンには人気の曲ばかりです。「お願いDJ」や「松田の子守唄」「ラチエン通りのシスター」「Melody」「働けロックバンド」なんて個人的にとても嬉しかったです。メドレーに限りませんでしたが「人気者で行こう」からの曲が多かったのも感激でした)。通常サザンのコンサートでは、こういうセットは組まないので、やっぱりバンドの歴史を総括するという送り手の意志が感じられるものでした。
 演奏は実に丁寧。終盤の盛り上がりでは少し(いい意味で)はじけるところもありましたが、コンサート全体で演奏は非常に手堅く、そういうところにも、バンドの「気持ち」が正直に出ていたんだと思います。今まで何回もあった活動停止期間、「復活祭」なんてタイトルでコンサートをやったことさえあったサザンがあえて今回はっきりと「無期限」とことわりを入れての活動停止。30年という、日本のバンドとしては前人未踏の業績(もしかして、世界的にみてもそんなにないかも知れませんね)は、当事者にとっては大きなプレッシャーなのかも知れません。それを今回下ろそうということは、ずっと一緒に歩んできたファンとともに30年を振り返るという形をとる以外に、形にはなりません。上に書いたように「これは単なる途中経過」「このコンサートを伝説にはしません」と桑田さんは繰り返し、実際必要以上にしめっぽい演出もなく、特に後半はファンにはおなじみの大々的な盛り上がりを見せたわけですが、それでもバンドの「強い思い」は感じられました。
 僕がそれを一番強く感じたのは、後半に入って「いとしのエリー」「真夏の果実」「TSUNAMI」を立て続けに演奏したときです。サザンのコンサートに何回か行かれた方はおわかりだと思いますが、通常サザンはこうした「人気のバラードを続けて演奏する」というベタなプログラムは組みません。「エリー」など、演奏しない日の方が多いといっていいほどの頻度です。それが今回こうした曲順で、しかも、変にフェイクアレンジすることなくスタジオ録音をきちんと再現するようにフルコーラス演奏。やっぱりこれは、今までもあった活動停止ではないんだと僕には感じられました。
 「Oh!Summer Queen」から「マンピーのGスポット」までの数曲は、これ以上ないほどの迫力。ここでいったん終了し、アンコールの1曲目は「夕方Hold On Me」。個人的に「人気者で行こう」は大好きなアルバムなので、ここで聴けたのは嬉しかったです。そして「みんなのうた」「勝手にシンドバッド」でピークに、そして最後の最後は「Ya Ya(あの時代を忘れない)」。「サザンの名前はいったんみなさんにお渡しします。きっと返してもらいに戻ってきますから、それまで預かっていてください」という切なくも前向きな言葉でコンサートはお開きになりました。
 30年.本当に長かったと思います。サザンが活動し、そして大スターで居続けたことで、日本には世代を超えて愛することが出来るバンドが存在しうるということが証明されました。サザンが開いた扉から、たくさんの才能や音楽のあり方が飛び出していったと、僕は本当に思います。サザンのみなさん、素晴らしい音楽をありがとうございました。ゆっくり休んでください。いつ復活してもいいように、僕たちはこれからもサザンの曲を聴き続けていきますよ。30年間本当にお疲れ様でした。