クラシックネタかと思いきやいつものとおり(笑)

 仕事でしょっちゅう行くところに横浜の関内があります。ここは有名な中華街などもあり、仕事仲間と昼食をとることもあって、それもなかなか楽しいんですが、今日の話題は相変わらず音楽です(笑)。
ちょっと前に偶然通りかかったビルの1階に、CDショップがありました。眺めてみるとどうもクラシックCDの専門店のようです。最初に通りかかったときは仕事先に行く途中だったので素通りでしたが、その数日後はちょうど1日出張で昼休み時間を使えたので、早速行ってみました。
 お店の名前は「プレミアムジーク」(HPはこちらをクリック)。それほど大きくないお店は、落ち着いた雰囲気でした。他の量販店でも見かけるものもありましたが、けっこう初めて見るものも多く、価格も1000円前後のいわゆる「バジェット」ものに掘り出し物がありそうでした。(元)ゲヴァントハウス・クァルテットのカール・ズスケがヴァイオリンを弾くベートーヴェンソナタやリストの歌曲集などを購入しました(どちらも「Berlin Classsics」でした)。
 ところで、このお店には、ちょっと変わった商品がありました。「ダイレクト・トランスファー・CD-R」というものです。これはSPを復刻したもので、往年の名演奏家の名前がずらりと並んでいます。お店にこの商品の紹介チラシがあり、独自の方式で「SPレコード本来の音を追求した」ものだそうです(制作者のHPはこちら)。実はちょっと前からSP復刻に興味を持っていたので、試しに2枚購入しました。エルガーのチェロ協奏曲(パブロ・カザルスとエイドリアン・ボールト指揮BBC交響楽団、1945年録音)とショパンエチュード(作品10)集(アルフレッド・コルトー、1933年録音)。
 さて、聴いてみた感想ですが、よかったです。確かにノイズはありますが(ノイズリダクションはしていないそうです)、想像するよりもずっと存在感のある音で、気持ちよく聴けます。カザルスはともかく、コルトーなどはあらえびすの本などで知っているだけでちゃんと聴いたことがありませんでしたが、ちゃんと鑑賞できました。驚いたのはそのコルトーで、一聴してわかるほど「弾き間違い」があるということと、独自の演奏順になっていて、なんだかいつも聴いているエチュードと印象が違うことにビックリしました。第1番で始まり「革命」で終わるところは通常どおりですが1番の次に4番、以下5、2、7、3、6、11、9、8、10、12と並びます。最初は変な感じがしましたが、何回か聴いているとこれはこれで馴染んできます。全体での盛り上がりを意識したような感じですね。前述の「弾き間違い」と相まって、実に独特の雰囲気です。でも聴くに値するものだとは思いました。ミストーンも、難しい箇所で頻発するのではなく、早いパッセージを難なく弾くところも多いので、単なる技術不足ではないですね。よく知らないんですが、この人はこういう演奏がスタンダードなんでしょうか?パッケージには「今では聴けないエラール社のピアノの音が光り輝いている」と書かれていて、その音色を確かめるだけでも貴重だと思います。いい買い物でした。
 以上前振りです(笑)。
 さて、なぜ僕がこの2枚を求めたか?もちろん演奏者と曲目に興味があったからです。でもただそれだけではありません。この商品、パッケージの裏面に曲目と演奏家名、録音年月日・オリジナルのレコード番号などが記されていますが、その他に「録音場所」も明記されています。これに引っかかったんです。カザルスのものは「ロンドン・アビー・ロード・第1スタジオ」、コルトーは「アビー・ロード第3スタジオ」。もうおわかりですね(笑)。購入の決め手はこれでした。ビートルズファンの聖地アビイ・ロード・スタジオは、戦前から稼働していて、このようなクラシックの録音もしていたんですね(そういえば数年前に出たジョージ・マーティン卿のボックスにもクラシック作品が収録されていました)。
 我らが4人組は主として第2スタジオを使用していました。第1スタジオはフルオーケストラも入れる大きなものだということは知っていましたが(確か「All You Need Is Love」の衛星中継はここからだったはず)、第3スタジオのことはよく知らなかったので、意識して音を聴けたのは収穫でした。というか、早い話、クラシックCD専門店でアビイ・ロードの名前を発見できて嬉しい!とまあ、そういうわけで(笑)。このシリーズ、他にもたくさんあり、よく確かめると、このスタジオでの録音は多いです。もちろんあの4人組もマーティン卿もいない、それどころかロックそのものが存在しない時代の録音ですが、はるか時空を越えて(?)親しみを感じる情報です。
 今部屋に流しているのはそのコルトーショパン。落ち着いて聴いてみると、なんというかとてもロマンチックで抑揚に富んだ演奏です。そういうところが時代を感じさせますが、これはこれで潤いのある演奏ですね。バックハウスやケンプといった大家とは違う味わいがあります。こういう演奏には、針のトレース音やノイズは、むしろ似合っているのかも知れません。雨模様の南関東の夜によく似合う演奏です。