アルバム評 クイーン+ポール・ロジャース「Cosmos Rocks」

 クイーンとポール・ロジャースのアルバム「Cosmos Rocks」が出ました。先行シングルなどもありましたが、ライヴ活動(とライヴアルバム)以外の本格的作品ということで、早速買ってきました。とはいうものの、正直書くとけっこう不安な気持ちでレジに運びました。ライヴアルバムや来日公演では素晴らしいコンビネーションを聴かせてくれた彼らですが、今回はスタジオ録音のフルアルバム。しかも全曲新曲。どうなることか、どちらかというと悪い意味でドキドキしながら聴いてみました。さて、どんな感じか?
 1曲目、「One Vision」風のSEにかぶって「Now I’m Here」風のリフが始まり、そしてアップテンポの曲調と展開は、もろクイーンでした。ポールのボーカルを頭の中でフレディの声に変換すると、そのままオリジナル・クイーンの新曲という感じです。以下、収録曲はわりにはっきりと「クイーン風」「フリー・バドカン風」とわかるようなものが多かったですが、例えばもろにポールらしさが前面に出たミドルテンポのブルースロック「Still Burnin’」ではクイーンらしいアレンジが絶妙に新鮮で(「We Will Rock You」までサンプリングしていました)逆にクイーンテイスト全開の「Surf’s Up‥School’s Out」ではポールのボーカルがしっかり自己主張しているという具合に、どちらかがどちらかに客演しているという具合にはなっていません。というか、絶対にそういう内容にはしないぞと当事者ががんばったんでしょうね。曲によっては、どちらの個性も感じる・両方の中間ぐらいのセンスでまとめたものもあり、アレンジ・演奏を含めて力のこもったものになっています。70年代のブリティッシュロックが好きな方にはお奨めのアルバムです。
 僕の「聴く前の不安」の多くは、このアルバムが「フレディの不在」を感じさせるようなものだったらどうしようというものでした。正直に書くと、そう言う部分、ありました。クィーンらしい曲ではどうしても感じてしまいましたよ。演奏がダレていない分よけいにそう感じたかもしれません。でもそれだけの作品ではありませんでした。クィーンもポールも、非常に強い個性を持っているので、いきなり完全にひとつになることはなかったですが、大健闘しているという感じです。ポールのボーカルの柔軟性にも驚きましたが、ブライアンとロジャーのブルースロック系センスの確かさにも驚きました。クィーンはあまり「もろブルースロック」という感じの曲やアレンジが少なかったバンドでしたが、考えてみたらジミ・ヘンドリックスがフェイバリットなバンドでしたからね、共通点は意外に多いのかも知れません。
 さて、こうしてアルバムを出したということは、これからも活動をしていこうと考えているに違いないでしょう。今までのようにクイーンの曲ばかり演奏するコンサートでは早晩飽きられてしまいます。次のツアーではぜひ、新曲をメインにした構成でやって欲しいと思います。そして出来れば、早い時期に2枚目のアルバムが聴きたいです。今はまだ完全に融合しているとはいいにくい両者の持ち味ですが、僕の想像以上に近いものであることがわかりました。これはきっと、継続して活動することでずっといい結果を出せると思います。期待していますよ、がんばってください。

Cosmos Rocks

Cosmos Rocks