「ザ・フー」という名の長い長い物語

 昨日(11月14日)横浜アリーナザ・フーのコンサートを観てきました。フーのコンサートは4年前のロック・オデッセイでも観ていましたが、今回は初のワンマンコンサートということで、僕としては大いに期待、というかもうドキドキしながら会場に向かいました。
 そして結果、本当に素晴らしく、感動的なコンサートを観ることが、いや体験ができました。本当はここでライヴレポを書くのが普通ですが、フーはまだツアー中、僕があれこれネタバレ感想を書くのもナニでしょう。僕自身あと3回(16日のさいたま、17・19日の武道館(!!))行く予定ですので、昨日の感想というよりも、昨日のコンサートを観た感激の中で思ったことを書いて、露払いにしたいと思います。
 ご存じのとおり現在のフーにオリジナルメンバーはピートとロジャーの2人しかいません。キースとジョンはすでに世を去り、「あの4人」を観ることは永遠に不可能です。もちろんキースとジョンが、余人で交代可能な人でなかったことは言うまでもないことです。だからキースの死後、今回の来日に至るまで、ファンの一部が「あの4人でない」こと、「活動の意味」に疑問を表明することについて、僕自身は共感しませんが、気持ちはわかります。
 でも、4年前の初来日、「Endless Wire」と今回のコンサートを体験した僕は、今はこう思っています。ザ・フーというのはひとつの長く大きな物語なんだと。メンバーが出会い、音楽を始めてから現在に至るストーリーなんだと。聴き手は、人生のある時期、彼らの音楽を聴き、ファンになることでこの物語の一部になるんだと。そこには素晴らしい音楽も、ステージを破壊し尽くす激情も、友情と軋轢も、苦悩する芸術家もポトラッチのような人生を送った天才も、そして賞賛と酷評も、あらゆるものがありました。そして一番重要なことは、その物語は、今も続いているということです。
 キースが去り、ジョンが去り、たくさんの人達がやってきて、去ってもいきました。それは僕たちファンも含めてです。それは、長い歴史を持つロックバンドの物語でもあり、ファン1人1人にとっては「自分とフーの物語」でもあると思います。彼らの音楽を聴き、コンサートに行くことは、その物語を紐解き、自分も登場人物として関わることなんだと思います。そう感じるからこそ、僕はいつの時代の彼らも愛するし、今の彼らにも賞賛を惜しまないのです。
 昨晩のコンサートは、4年前よりも充実した素晴らしいものでした。昨夜は4年前には演奏しなかった曲もあり、また「Endless Wire」からの曲も演ってくれましたが、見事という他ないものでした。まさしく「現役」の輝きを放っていました。ちょこっとネタバレになってしまいますが、コンサートの最後、大歓声の中ピートとロジャーがステージ上で抱き合いました。その場面を観たとき、僕は思いました。この長い長い物語の「2008年の章」で、こんな胸に迫る場面があるなんて想像もしていなかった。しかもそれが日本で、自分がその場にいられるなんて、本当に思いもしなかった。バンドとファンによる「ザ・フー」という物語には、まだ驚きや発見、新しい感激が待っているんだと。
 残る3回のコンサート、僕は何を観て、何を聴き、どんな感動をするんでしょう。まさしくこの物語は「Amazing Journey」です。
 追記:昨日のコンサートはブログ友のlazyさんとご一緒させていただきました。そして会場で思いがけず、高校時代のガールフレンドに20数年ぶりに再会しました。Lazyさんは僕が4年前のロック・オデッセイのことをブログに書いたものを読んでくださったのがきっかけでおつきあいが始まりました。高校時代の友人は、1年生の夏休みに一緒に観に行った映画「Tommy」がきっかけでそれぞれフーのファンになり、長い没交渉の月日を経て昨日会場で再会しました。本当に、ザ・フーが導いてくれたと思っています。