ザ・フーのアンコール・シリーズ(ボックス買っちゃった)

 白状しますが。
 11月の来日からもう2ヶ月も経つというのに、いまだにザ・フーの感動から醒めていません。僕はあるアーチストのコンサートに行って感動しても、そんなに気持ちを引っ張ったりせず、わりとあっさり他のアーチストなども聴く生活に戻れるんですが(もちろん一部例外もあり)今回は違ったようです。4年前の横浜も観ているし、自分でもこんなになるとは思わなかったので意外ですが、本当にフーが抜けないです。少し前に「ギターを買いたい」と書きましたが、これも実はフーを観て、久しぶりにギターを弾き始めたのが影響しています。改めて自分がフーの大ファンであることを実感しました(苦笑)。
 で、ここからいつものような浪費日記になるんですが(笑)、そんな状態で、ポチッとしてしまいました。アンコール・シリーズ。
 今海外の大物アーチストで、ツアーの全公演を録音し、すべてをリリースする例があります。8年くらい前のパール・ジャムが実験的に始めたものが最初になるのかな、今ではけっこういろいろなアーチストがやっているようです。録音・録画のツールが手軽に導入できるようになったこと、CD化のコストが下がったこと、オンデマンド方式など、ネットも含めた販路が完成したことなどが理由だと思います。ザ・フーもすでに数年前からやっていて、基本的にネット通販のみですが、ほぼ全公演を聴くことが出来ます(全部買う経済力があればの話しですが)。リリース形態は公演ごとのCD2枚組、DVD、それにツアー全体をまとめたボックスセットになっています(通販サイトはこちらです。2004年のロック・オデッセイのものも、まだ買えるみたいです)。
 今回僕が購入したのは2007年のアメリカツアーのボックス。14公演の音源(2枚組)とそのDVDがセットになったものです。けっこうな金額なので今まで躊躇していたんですが、円高の時期でチャンスだったのと、2008年のアンコール・シリーズはグループの意向によりリリースされない(つまり日本公演を含んだツアーのアーカイブは出てこない)というニュースを耳にして、1年前のものでも十分と思い、やっちまいました(苦笑)。時期は2007年の2月〜3月あたりのもので、ワシントンDC、シカゴ、ニューヨーク、カリフォルニア州などのコンサートが収録されていました。
 内容ですが、文句なしです。14公演も入っているのでまだ全部聴いておらず、しかもDVDの方はリージョンコードがどうなっているのか、自宅のプレイヤーで観られないものもあるんですが(問題なく観られるものもあるので不思議)、内容は素晴らしかったです。こういう「ツアー全記録」的なものだと、出来の善し悪しがありそうでどうかな?と思っていたんですが、基本的にどの公演も充実していました。2004年日本公演のCDを聴いたことがある方は多いと思いますが、あれよりも音に迫力があり、演奏全体もタイトです。11月の日本公演の見事な演奏に迫る出来で、ピノやザックも含めた「チーム・ザ・フー」の近年の充実ぶりがリアルにわかります。
 ちょっと驚いたのは、最新作「Endless Wire」からたくさん演奏していたことで、あのミニオペラも聴けました(そのかわり「四重人格」からの曲などは割愛されていました)。実にかっこよかったです。日本でも聴きたかったなあ。毎年やっている欧米に比べて日本公演はメンバーも連日真剣勝負だったと言われていて、それはそのとおりでしたが、今回のアメリカ公演などを聴くと、彼らほどの大物がまるで「新譜のプロモーションツアー」をやっているような感じで、そこがまた彼らの「現役感覚」を感じさせてくれます。集大成的だった11月の公演もよかったですが、こういうコンサートも日本で観てみたいなあと思います。本当に、それくらい良かったんですよ、演奏が(観客の反応はそんなではないですが)。
 今まで聴いた限りでは「2月26日ロング・ビーチ」と「3月9日アトランティックシティ」がよかったです。特にロング・ビーチでは「My Generation」の演奏が、「アトランティックシティ」ではアンコールの「Tommy」メドレー(特に「Sparks」)が熱演でした。ロング・ビーチの「My〜」では、ピノとザックのリズムセクションもノリノリで、「Live At Leeds」に迫ります(僕の主観ですが、実感です)。もちろん我らがロジャーとピートも元気いっぱい。CDで聴くとピートのギターは少し迫力が減じたかなとも感じますが(少しリミックスしているかも)、そのぶん音色や音量の微妙なニュアンスがよくわかります。ロジャーは日によって調子に波がありますが、いいときは本当にすごいです。歌い出しを間違える「お約束」も随所にあり微笑ましいです(笑)。そしてラストは必ずあの「T And Theatre」。こうして聴き返し、観返すと、この曲の良さと、これをラストに歌った彼らの気持ちが胸に迫ってきます。
 上に書いたように、このアンコール・シリーズ、2008年バージョンは出る予定がないようですが、僕としてはあの日本公演をぜひともまた聴きたい・観たいと思っています。ピートとロジャーの気が変わって出してくれるのを願いながら、入手できた音源で感動を新たにしたいと思います。