「いちばん高いギターを弾かせろ」

 相変わらずギター購入を検討しつつ仕事に勤しむ毎日を過ごしています。ギター・マガジンやプレイヤー誌を読み、楽器店のサイトを巡る日が続いています。本当、いろんなギターがあって、知れば知るほど絞れません(笑)。安いモノは1万円台だし、高いと何百万だし。あんまり迷いすぎて、ギター買う前にアンプ買っちゃいましたよ。安いものでしたがVOXです。今のアンプって、エフェクターも内蔵しているし、いろいろなアンプをシミュレートするし、びっくりです(こんなことに驚いているんですから、いかに僕が今の楽器シーンに疎いかわかりますね)。
 ところで、そんな日々にカバンに入れて楽しんでいる本が1冊あります。枻出版の「いちばん高いギターを弾かせろ」(ヴィンセント秋山著)。
 これはタイトルどおり、「究極のギター」を探し求める著者が様々な楽器店に行き、お店の人に「この店で一番高いギターを弾かせてくれ」と頼み、それを弾くというものです。要約してしまうとこれだけなんですが、これがかなり面白い。すごいハプニングがあるわけではなく、「ちょっと間抜けなハードボイルド風」の語り口と、お店にある高いギターを弾く(「Smoke On The Water」のイントロフレーズ!)というスタイルの中に、楽器の来歴やお店の個性がわかり、楽しめます。取り上げられているお店も多様で、有名な大手楽器店から「お肉屋兼ギター屋さん」まで、出てくる楽器も、2万5千円のものから3,500万(!)までと実にバラエティ豊か。
 僕は最初、書店でタイトルだけ読んだとき「単なるヴィンテージギターの知識が出ているだけじゃないの?」と思ったんですが、実に個性的な本でした。ただ楽器店を巡ってギターを弾くだけでは単調になってしまいますが、この本では本場アメリカ、LAに行きフェンダーのギター(カスタム・ショップ製)を購入し、そのままフェンダーのコロナ工場を訪ねるという長文も収録されています。これがなかなか面白い。カスタムショップの最高責任者マイク・エルドレッド氏直々の案内によりマスタービルダーの工房に行き、様々な話しを聞き、ついでに(失礼)買ったばかりのギターを調整し直してもらうところは、今ギターに気持ちが向いている身としてはワクワクしながら読めます。特にこの文章の後半のエピソード、著者が持ち込んだギターのほんのちょっとした不具合(普通の使用ではまったく問題にならないところ)に対してマイク氏が取る態度は、ビルダーとしての誇りや腕の確かさとともに、確かなクラフトマンシップ、人を育てる力量などが感じられます。その部分も、著者独特の語り口ではありますが、読むと感動します。上に「ちょっと間抜けなハードボイルド」と書きましたが、実際にはその文章からは著者の一途さや、ギターに対する愛情が伝わってきます。実際に弾いたギターのカラー写真も多く、目も楽しいです。いや、今の僕には目の毒かな(苦笑)?
 この本、ニフティのサイトで連載中のウェブ企画「この店で一番高いギターを弾かせてくれ」を書籍化したもので(こちらです)、サイトでは本に収録されていないたくさんのお店とギターが登場します。試奏の模様(毎回ちゃんとJASRACに申請しているらしいです)も動画で観られます。なんといっても、著者のギターに対する愛情が感じられるところがいいですね。
 こういう本を読んでいると、まだ買っていない「僕のギター」が身近に感じられます。それにしてもこの本、帯の「ギターショップで試奏する勇気がなかったあなたへ捧ぐ!」というコピー、僕にぴったりです(笑)。僕下手だから言い出せないんですよね。でもこの本の著者の弾く「Smoke On The Water」聴いていたら、ちょっと勇気湧いてきました(すみません!でもちょっと本心です)。次に楽器店に行ったときはこう言ってみようかな「この店で一番高いギターを持ってこい」って(笑)。

いちばん高いギターを弾かせろ (エイ文庫 179)

いちばん高いギターを弾かせろ (エイ文庫 179)