クリス・スクワイア様へお見舞い

 前回の日記にジョン・アンダーソンの病状のことを書いたばかりだというのに、今度はクリス・スクワイアがダウンしたという情報が入ってきました。2月9日から22日までの合計10回のコンサートがキャンセルになっています。病名等の具体的なところはまだ不明なんですが、ツアー自体の中止ではないので、そんな大事ではないのでしょう。ひとまず安心というところですかね。
 クリスというと、あのイエスを「一度も離脱していないただ1人のメンバー」ということになります。例の「クリスの電話」というエピソードでもわかるとおり、グループの人事的な仕切りもやっていた人でもあり、人の出入りが激しいイエスが長く継続できているのは、この人の努力が大きいわけです。プレイヤーとしても非常にテクニカルであると同時にパワフルで、僕はイエスのコンサートを何回も観ていますが、この人のソロパート(アランと2人のリズムセクションソロも含めて)は実に見応え聴き応え十分でした。
 あのリッケンバッカーのベースが小さく見えるほどの巨漢ですが、テンポもキーも目まぐるしく変化していく、繊細さも豪快さも要求されるイエスの音楽に、実に見事にフィットしている様は、本当に素晴らしい。しかもデビュー依頼40年ずっとですからね。信じられない持続力です。イエス関連の日記ではいつも書いていますが、プログレはロック論壇のなかでは、キャリアや実力が正当に評価されていないジャンルです。でも例えばクリスのような活動は、どんなロックミュージシャンと比べても決してひけを取らない、いや、真っ先に評価されるべきものだと本気で思っています。
 今聴いているのはクリスが1975年に出した最初ソロアルバム「Fish Out Of Water」。この時期イエスのメンバーは揃ってソロを出していましたが、その中でもクリスのアルバムは、作曲・アレンジ・演奏のどれをとっても最高でした。豪華なメンツもみんな溌溂としたプレイで、いいアルバムです(ちょっとオーケストラアレンジがくどいのと、長尺の曲で冗漫な部分もありますが)。この人やフーのジョンなどは、ソウルミュージック的なファンキーさではない方向で、ロックにおけるベース演奏の領域を広げた偉人だと(本気で)思います。
 

Fish Out of Water

Fish Out of Water

クリス様、どうぞご自愛ください。ジョンも快方に向かっているようですので、この機会にゆっくり休んで、まだ元気な姿を見せてください。あなたのベースで奏でられる「On The Wings Of Freedom」や「Amazing Grace」がまた聴ける日を楽しみにしていますよ。